第一章: 死線上の洗脳契約
肺腑を突き刺すのは、雨の匂いが混じった錆びた鉄の臭気。
重く泥濘に沈んでいく、返り血で黒ずんだ漆黒の軍服。色素の薄いボブヘアは泥水にべったりと張り付き、光の無い虚ろな三白眼がぼんやりと映し出していたのは、自らの砕け散った下半身。
篝火 結衣「あ……ぁ……」
ドクン、ドクン
喉の奥から漏れるのは、空気が擦れるような微かな音だけ。口の中に広がる、強烈な鉄の錆びた味とザラつく泥の感触。
怪異の巨大な顎に噛み砕かれた肉体。痛覚すら既に麻痺し、急激な体温の低下だけが死の輪郭を鮮明に撫で回す。
これで、やっと。私の罪も、許される……
虚ろな視界が明滅し始めた、その時。
泥を跳ね飛ばす、規則正しく硬質な足音。
漆黒のタイトな軍服。その上に羽織られた、豪奢な真紅のファーコート。重たい雨風の中で生き物のようにうねる、血のように赤い長髪。
御堂 赫夜「無様だな。これが防衛都市の犬の末路か」
虫の死骸を見下ろすような冷たさで結衣を射抜く、黄金の瞳。絶対的カリスマを誇る隊長、御堂赫夜。
彼女の濡れた軍靴が、無造作に結衣の腹部を踏み躙る。
篝火 結衣「あ、ぐ……ッ!?」
暴力的な質量によって強引に叩き起こされる、死にかけていた神経。
「あぎゃああああッ!!」
喉が裂けるほどの絶叫。背中が弓なりに跳ね上がり、両手の指が泥を掻き毟る。
御堂 赫夜「這いつくばれ。誰が死を許可した」
自らの白い指先を鋭い犬歯で噛み破る赫夜。滴る真紅の雫が、結衣の開いたままの傷口へと真っ直ぐに落ちた。
ピシャリ、と。
篝火 結衣「あ……え……?」
傷口から侵入した赫夜の血。それは結衣の血管を劇薬のように駆け巡る。
ガタガタガタガタッ!!制御不能な痙攣が支配する全身。
脳髄を焼き切るような激痛。それが次の瞬間、極彩色の閃光と共に、甘く痺れるような極限の悦楽へと反転する。
篝火 結衣「あ、あッ……!? ひ、ぃぃ……! な、に、これぇ……ッ!」
痛みが、死が、凄まじい快感となって結衣の神経を蹂躙する。砕けた骨の髄から熱い蜜が湧き出し、下腹部の最奥をドクドクと打ち据えた。白目を剥き、だらしなく開いた口から糸を引く涎。
御堂 赫夜「お前の命も死も、そしてその快楽も、全て私のものだ」
甘く歪む、黄金の瞳。
「私の血に溺れ、私のためだけに狂え。結衣」
篝火 結衣「あぁぁッ! たい、ちょう……! もっと……あぁッ!」
泥に塗れた少女の首筋に焼き付く、真紅の隷属紋章。
救済を求めていたはずの魂は、この瞬間、決して逃れられぬ赫き鎖に繋がれた。
◇◇◇
第二章: 赫き鎖と絶頂の箱庭
薄暗い作戦室に漂う、生乾きの血の匂いと赫夜が好むブラックコーヒーの苦い香り。
再生した結衣の肉体は、完全に別の生き物へと作り変えられていた。
御堂 赫夜「結衣。次の索敵ポイントは第肆区画だ。先行しろ」
篝火 結衣「はい、隊長。直ちに――」
パチン、と。
鳴らされた、赫夜の細い指。ただそれだけで。
篝火 結衣「んっ……ぁ……ッ」
結衣の膝から力が抜け、冷たい床に崩れ落ちる。制服のスカートの下、太ももの内側がガクガクと震え、自らの意思とは無関係に零れ落ちる甘い蜜。
御堂 赫夜「どうした。立て」
篝火 結衣「た、立て、ません……っ。隊長の、音が……奥、で……響いて……っ」
見下ろしてくる赫夜の冷酷な黄金の瞳。その視線が肌を這うだけで、結衣の首筋の紋章が焼け焦げるように熱を持ち、敏感な突起が下着の布地と擦れて火花を散らす。
御堂 赫夜「誰が感じていいと許可した。我慢しろ」
篝火 結衣「あ、あぅ……っ、隊長……お願い、します……私を、壊して……っ」
「駄目だ。そのまま索敵に向かえ。お前の絶頂すら、私が許可した時だけだ」
死と隣り合わせの戦場。そこは結衣にとって、究極の焦らしの箱庭。
怪異の爪が頬を掠める恐怖すら、赫夜の庇護下にあるという背徳的な悦びへと変換される。
結衣はねっとりと汗ばんだ自らの太ももを擦り合わせながら、暗闇の中で幾度も赫夜の名を呼び、じゅくじゅくと溢れる己の柔らかな花弁を慰める狂気に沈んでいく。
だが、その狂信の箱庭に走る、予期せぬ亀裂。
灰原 仁「……結衣。少し、いいかな」
背後から声をかけたのは、幼馴染の同僚・仁。標準的な防具付きの軍服。少し乱れた黒髪の奥で、彼の人懐っこい笑顔が奇妙な歪みを孕んでいた。
◇◇◇
第三章: 逃落の森と暴かれた真実
廃墟の奥に広がる、湿った腐葉土とカビの匂いが立ち込める森。
結衣の手首を強く握りしめ、早足で木々の間を縫っていく仁。
灰原 仁「ここなら、あの女の目も届かない。結衣、部隊から逃げるんだ。君はあいつに洗脳されてる!」
篝火 結衣「放して、仁……! 私は、隊長のもとに……」
ギリッ。
骨を軋ませるほどに跳ね上がる、仁の指の力。
篝火 結衣「痛っ……仁……?」
振り返った仁の顔。その瞳孔が、爬虫類のように縦に細く割れている。
灰原 仁「あーあ。もう少し、じっくり美味しく熟成させたかったのになァ……」
異様に上下する喉仏。親しげだった口調が、ねっとりとした粘着質なものへと変貌する。
篝火 結衣「な、に……あなた、人間じゃ……」
灰原 仁「僕がずっと、君を美味しく守ってあげるって言っただろ? 君の家族の肉、すっごく甘くて最高だったんだよねェ。君が絶望に染まった顔、あの時からずっと……僕のおかずなんだよォ」
真っ白に染まる視界。
家族を惨殺した怪異。その宿主が、ずっと隣で自分を庇護するフリをしていたという事実。
信じていた全ての前提が崩れ去り、逆流する胃液。
篝火 結衣「う、そ……いやぁぁぁぁッ!!」
灰原 仁「そう、その顔! あぁ、今ここで君の全部を平らげて――」
仁が鋭い鉤爪を振り上げた瞬間。
真紅の閃光によって両断される空間。
御堂 赫夜「私の玩具に、無断で触れるな。下等生物」
黄金の瞳を爛々と輝かせ、宙から舞い降りる赫夜。
彼女の軍靴が仁の頭部を捉え、生木を裂くような音と共に地面に叩き潰す。
グチャリ。飛び散る血と脳漿が、結衣の頬を汚した。
灰原 仁「が、ああッ!? き、さまぁ……ッ!」
仁の胸倉を掴み、その肉体を凄惨な手段で解体していく赫夜の手。
引き千切られる腕。飛び出す臓物。降り注ぐ血の雨の中、赫夜は結衣を見つめ、美しく微笑んだ。
御堂 赫夜「見ろ、結衣。お前を救えるのは、私だけだ」
足元に転がる、幼馴染だった肉の塊。
結衣の頭の中で、張り詰めていた最後の糸がプツリと切れる。
あは、あはははははははッ!!
血塗られた森に響き渡るのは、崩壊した笑い声だけ。
◇◇◇
第四章: 剥製の人形と甘美なる戦場
強烈な消毒薬と、甘ったるい薬品の匂いが混ざり合う空間。研究都市から出向してきた軍医、柊シノの研究室。
柊 シノ「さぁ、脳髄が溶けるほどのデータを見せてくださいねぇ」
純白の白衣の下、胸の谷間を露わにした黒のレザースーツ。片眼鏡の奥の瞳が、手術台に拘束された結衣を舐め回す。
ビクビクと脈打つ秘所の最奥まで、ゼリー状の特殊な調整液を執拗に擦り込むシノの冷たい指先。
篝火 結衣「あぁッ! ひ、ぃぃ……! た、隊長……隊長ぉ……ッ!」
柊 シノ「なんと素晴らしい。精神が完全に崩壊したことで、隊長の魔力への受容体が限界突破していますねぇ。もう、隊長の靴音を聞くだけで絶頂する、美しいお人形の完成です」
シノが手元のスイッチを入れると、無慈悲な電流と劇薬が結衣の火照りきった花芯を強制的に蹂躙する。
篝火 結衣「い、ぎぃぃぃぃッ!! あはぁ……! もっと、もっと壊してぇぇッ!」
白目を剥き、首筋の紋章を赤黒く発光させながら、結衣はとめどなく白濁の泡を吹いて痙攣した。
数日後の戦場。
異様な紫色に染まる空。風に乗る、焦げた肉の匂い。
御堂 赫夜「踊れ、私の人形」
瓦礫を踏み鳴らす、赫夜の重いブーツ。
カツン、カツン。
その音が響くたび、結衣の背中がビクンと跳ね、秘裂からどろりとした熱い雫が溢れ出す。
直接的な肉体接触は一切ない。ただ、魂の奥底まで支配されているという究極の自己喪失感が、未知の悦楽となって彼女を突き動かす。
篝火 結衣「あはっ……隊長、見て……私、きれいに殺せますか……?」
怪異の首を刎ね、返り血を全身に浴びるたび、結衣は赫夜の重い愛を感じて恍惚の溜息を漏らした。
戦場はもはや、彼女にとって巨大な愛の寝台。
御堂 赫夜「あぁ、美しいぞ。私の可愛い狂犬」
だが、二人の甘美な箱庭を無残に叩き割る、空の亀裂から這い出してきた超大型怪異の圧倒的な質量。
◇◇◇
第五章: 赫き永遠の箱庭
異常なまでに澄み渡る空。崩壊する都市を照らし出すのは、絵画のように美しい陽光。
光の乱反射が、致命傷を負い膝をつく赫夜の真紅の髪をキラキラと彩る。
御堂 赫夜「チッ……ここまでか。予定外の事態だ……」
超大型怪異の圧倒的な魔力砲撃の前に、部隊は壊滅状態。赫夜の黄金の瞳にも、微かな死の影が過る。
その時。
赫夜の盾となるように立ち塞がったのは、血だらけの結衣。
篝火 結衣「隊長。私の全てを、使ってください」
御堂 赫夜「結衣、お前……肉体を触媒にする気か。そんなことをすれば、魂ごと消滅するぞ」
篝火 結衣「いいえ。私は、隊長の中で永遠になるんです」
自らの胸に手を当て、赫夜から与えられた魔力の奔流を逆流させる結衣。
《魂の同化》
純白の光に呑み込まれる視界。
指先から砂のように崩壊していく肉体。
言語を絶する激痛。しかし、それすらも超越した究極のオーガズムが、精神世界で二人を繋ぐ。
触れることはない。ただ、交じり合うのは視線と吐息だけ。
結衣の魂の最奥を貫き、満たしていく赫夜の黄金の瞳。
御堂 赫夜「お前の絶頂すら、私が許可した時だけだと言ったはずだ」
篝火 結衣「はい……あぁ、隊長……私、あなたの、なかで……溶け、るぅぅッ!! 壊れる、白く、なっちゃうぅ……!」
肉体という枷を失った魂が、限界を超えて幾度も弾け飛ぶ。
白濁した光の波の中で、結衣は至上の幸福に包まれながら、自らの存在を赫夜へと捧げ尽くした。
♥ドクン。[/Heart]
現実世界。
限界突破した赫夜の魔力によって、塵一つ残さず消滅していた超大型怪異。
焦土と化した戦場に、ただ一人佇む赫夜。
その足元には、結衣の軍服だけが虚しく落ちていた。
御堂 赫夜「……馬鹿な犬だ」
自らの胸に手を当てる赫夜。
そこには、彼女自身の心音とは別に、小さく、しかし狂おしいほどに甘く脈打つ、もう一つの鼓動。
御堂 赫夜「お前はここで、永遠に私に飼われるのだ。……私の、可愛い結衣」
「……はい、隊長……」
赫夜の脳裏にだけ響く、甘く震える声。
美しい廃墟の空の下、決して解けることのない歪な永遠の愛が、静かに完成した。