第一章: 雪原に散る白百合
沈みゆく太陽が、見渡す限りの雪原を血のように紅く染め上げる。
音のない世界。空からは星屑に似た魔力の雪が、静かに、ただ静かに降り注ぐ。
[FadeIn]吐く息は白く、やがて夜の闇へと溶けて消える。[/FadeIn]
「……綺麗な雪」
[A:エレナ・ルミナス:冷静]「私の最期を飾るには、少し贅沢でしょうか」[/A]
冷たい風に小刻みに震える、彼女の細い肩。
泥にまみれ、擦り切れた純白の聖女服。大きくはだけた胸元からは、薄い布越しに寒さに縮こまる柔らかな膨らみ。
月光を編み込んだような銀糸の長髪。アメジストを思わせる紫の瞳は、どこか虚ろに森の最奥を見据える。
白磁のように透き通る首筋から鎖骨にかけて、ひび割れた黒曜石のような「腐死の呪い」の痣が、毒々しく脈打つ。
国から不要の烙印を押され、たった一人で踏み入れたのは「絶望の死の森」。
触れるもの全てを灰に帰すという黒竜帝の縄張り。
ザクッ、ザクッ。
鼓膜をひどく冷たく打つ、雪を踏みしめる音。
膝から力が抜け、崩れ落ちる凍てつく雪の上。喉の奥で詰まる嗚咽。
誰の役にも立てない偽物。
どうせあと半年で肉体が腐り落ちるのなら。
[Think]せめて、誰かのために命を使い切りたい。[/Think]
不意に重力を増す周囲の空気。
鼻腔を突くのは、雨の匂いが混じった錆びた鉄の臭気。
[Tremble]背筋を悪寒が駆け上がる。[/Tremble]
雪煙の向こうから現れたのは、圧倒的な死の象徴。
漆黒の長髪が吹雪にうねり、暗闇の中で鋭く発光する黄金の獣瞳。分厚い筋肉を包む黒い軍服は無造作に着崩され、むき出しの右腕には、おぞましい黒竜の呪いの鱗がびっしりと這い上がる。
ヴィルヘルム・フォン・ドラクロワ。
[A:ヴィルヘルム・フォン・ドラクロワ:怒り]「俺に近づくな。……お前まで壊してしまう」[/A]
地を這うような低い声。喉仏が上下し、彼の眉間が一瞬だけ険しく跳ねる。
だが、逃げないエレナ。
震える指先で雪を掴み、立ち上がる。紫の瞳孔が開き、彼の放つ圧倒的な熱量に引き寄せられるように歩み寄る。
[A:エレナ・ルミナス:愛情]「私の命で、あなたが少しでも楽になるのなら……全てを召し上がって」[/A]
彼女の細い指が触れる、呪われた黒鱗。
ジュッ、と響く皮膚の焼ける音。
[Impact]その瞬間、二人の運命の歯車が狂い始める。[/Impact]
驚愕に見開かれる黄金の瞳。彼女の首筋に深々と押し当てられる鋭い牙。圧倒的な暴力の気配に、エレナは静かに瞳を閉じる。
◇◇◇
第二章: 死と熱の輪舞曲
ヴィルヘルムの居城。朽ち果てた石造りの広間に爆ぜる暖炉の炎。
二人の歪な共生。それは、触れ合うことでエレナの死の冷気と彼の暴走の熱を中和する、狂気の儀式。
[Sensual]
「……っ、あ……」
薄闇の中、混じり合う甘い魔力の匂いと汗の香り。
無骨な指先が這うのは、首筋から太ももの内側にある黒い痣。直接的な交わりではない。魔力回路を繋ぐため、皮膚の極めて薄い部分をなぞるだけの「寸止め」。
それだけで白く焼け焦げるエレナの脳髄。
[A:ヴィルヘルム・フォン・ドラクロワ:興奮]「耐えろ。お前の冷気がなければ、俺の熱は抑えきれん」[/A]
[Whisper]耳裏に落とされる、火傷しそうなほど熱い吐息。[/Whisper]
低い声が聴覚を直接犯し、弓なりに反る彼女の背中。
足の指がギュッと縮こまり、シーツを強く握りしめる指の関節。いつしか甘く痺れる快楽へと反転していく呪いの激痛。微弱な回復魔法の光を自身の花芯に当てて熱を逃がしていた孤独な夜とは違う。体の芯をどろどろに溶かす、他者の圧倒的な熱。
[Pulse][Heart][/Pulse]
心臓が早鐘を打ち、チカチカと明滅する視界。
「ヴィルヘルム様……もっと、もっと熱く……」
[A:エレナ・ルミナス:照れ]「体が、溶けてしまいそう……っ」[/A]
太ももの内側を滑り、濡れた蜜壺の入り口を掠める彼の指。
ビクッ、と大きく跳ねるエレナの体。口の端から細く垂れる涎。合わない瞳の焦点。死の淵で初めて味わう「生」の悦び。痛みが快感に塗り替えられ、自身の存在が彼を満たす強烈な陶酔。
[/Sensual]
狂おしいほどに彼を求める渇望。
それは、死に向かう肉体に咲いた、不治の病のような執着。
彼なしでは、もう一秒たりとも呼吸すらできない。
◇◇◇
第三章: 優しい断絶
冷たい床を四角く切り取る窓の外の月光。
ヴィルヘルムの獣瞳から消え去る暴走の濁り。正気を取り戻した彼の視界に映るのは、頬がこけ、いっそう透明感を増したエレナの姿。
[A:ヴィルヘルム・フォン・ドラクロワ:悲しみ]「……もういい。俺から離れろ」[/A]
冷酷なまでの拒絶。
引きつる彼の唇の端。強く握り込まれる拳。己の欲求を満たすほどに急速にすり減っていくエレナの命。
[A:エレナ・ルミナス:驚き]「どうして……? 私、まだやれます。あなたのお役に……」[/A]
[A:ヴィルヘルム・フォン・ドラクロワ:悲しみ]「これ以上俺に抱かれれば、お前は死ぬ」[/A]
突き飛ばされるように絶たれる魔力回路の接続。
その瞬間。
[Glitch]ガアアァァッ……![/Glitch]
激痛。
牙を剥き、エレナの体内を蹂躙する腐死の呪い。床に倒れ込み、のたうち回る。口の中に広がる、鉄を舐めたような血の味。
[A:エレナ・ルミナス:絶望]「いや……っ、お願い、離さないで……!」[/A]
指の爪が剥がれるほど床を掻きむしり、すがるように掴む彼の軍服の裾。
理性を失った懇願。痛みを麻痺させる強烈な快楽。そして何より、彼からの愛を失う恐怖。
[A:エレナ・ルミナス:狂気]「死んでもいい……っ、どうせ死ぬなら、私を満たして! あなたの熱で、私を壊してよぉぉっ!!」[/A]
[Shout]虚しく石壁にこだまする剥き出しの叫び。[/Shout]
背を向けたまま振り返らないヴィルヘルム。微かに震える肩。床に落ちる、噛みしめた唇から滴る血痕。
[Impact]直後。[/Impact]
鼓膜を劈く爆音。大きく揺れる城。
[A:アーサー・ペンドラゴン:喜び]「見つけたよ、僕の哀れな偽物」[/A]
森の結界が砕け散る不快な音と共に、傲慢に響き渡る聞き覚えのある声。
絶望の底に、最悪の訪問者が足を踏み入れた。
◇◇◇
第四章: 蹂躙と暴走
城の中庭。
白銀の鎧を纏った勇者、アーサー・ペンドラゴン。金髪碧眼の整った顔立ちの奥に、どす黒い狂気を宿して彼が立つ。周囲には無数の兵士たち。
[A:アーサー・ペンドラゴン:冷静]「偽物は偽物らしく、泥の中で這いつくばって僕に傅けばいいんだよ」[/A]
容赦なくエレナの細い指を踏み躙るアーサーの革靴。
[A:エレナ・ルミナス:恐怖]「ああっ……!」[/A]
悲鳴を聞き、恍惚とした表情で唇を歪めるアーサー。
魔力雪の舞う空気に混じる、肉が焼けるような嫌な臭気。アーサーの手に握りしめられる光属性の魔力を帯びた鎖。
[A:アーサー・ペンドラゴン:狂気]「さあ、皆の前でその汚らわしい体を晒したまえ。この化け物にどうやって抱かれたのか、たっぷりと聞かせてもらおうか」[/A]
彼がエレナのボロボロの衣服を引き裂こうとした、その刹那。
[Tremble]ゴゴゴゴゴ……ッ!![/Tremble]
大気の震動。
城のバルコニーから飛び降りたヴィルヘルムの全身から噴出する、火山のような漆黒の魔力。
全身へと這い上がる右腕の鱗。完全に爬虫類のそれへと変貌する黄金の瞳。自身の命を代償に解き放つ、竜の呪いの封印。
[A:ヴィルヘルム・フォン・ドラクロワ:狂気]「その女に……触れるなァァァッ!!」[/A]
[Flash]圧倒的な暴力の嵐。[/Flash]
ヴィルヘルムの爪が一振りされるだけで、塵と化す数十の兵士。だが、光属性の集中砲火を浴び、彼の巨躯からも噴き出す大量の血。
血に染まり、倒れゆくヴィルヘルム。
その姿を見た瞬間、エレナの中で何かが弾けた。
恐怖も、呪いへの絶望も、全てが消え去る。
[Think]彼を、死なせない。[/Think]
自ら進み、引き裂かれかけた衣服を完全に脱ぎ捨てるエレナ。
雪原の寒さなど感じない。真っ直ぐに飛び込む、暴走する黒竜帝の熱の渦中へ。
◇◇◇
第五章: 魂の結合、そして静謐
吹き荒れる魔力の暴風の只中。
周囲の兵士たちが近づくことすらできない絶対の特異点。
[Sensual]
血と泥に塗れたヴィルヘルムの胸に密着する、エレナの白い肌。
彼の黄金の瞳が焦点を取り戻し、目の前の無垢な裸体に驚愕の色を浮かべる。
[A:ヴィルヘルム・フォン・ドラクロワ:驚き]「やめろ……俺の呪いが、お前を……っ」[/A]
[A:エレナ・ルミナス:愛情]「いいえ。これで、永遠に一つです」[/A]
[Whisper]「すべて、私の中に吐き出して……」[/Whisper]
エレナの手が彼を導き、限界を超えた熱い楔を、自身の最も深い最奥へと受け入れる。
[Shout]「あ、あぁぁぁッ……!!」[/Shout]
[Flash]雷撃のような快感が、脳髄を貫く。[/Flash]
これまでの寸止めとは次元の違う、完全なる魂と魔力の結合。
怒張した熱い楔が最も深い秘奥まで貫かれるたび、激しく衝突し溶け合う呪いの冷気と暴走の熱。「あ、あ、だめ、壊れる、真っ白になる!」白目を剥きかけるほどの絶頂。限界まで反り返る背中。敏感な花芯が乱暴に擦られるたび、止めどなく溢れる声にならない喘ぎ。とめどなく流れ出る愛液が、交わりの音をひどく卑猥に響かせる。
ヴィルヘルムの太い腕がきつく抱きしめるエレナの体。
[A:ヴィルヘルム・フォン・ドラクロワ:興奮]「エレナ……ッ、ああっ!」[/A]
彼が自身の内側に白き熱を注ぎ、爆発するその瞬間。
[Magic]《魂縛の開花》[/Magic]
[/Sensual]
放射状に放たれる、目眩がするほどの極彩色の光。
死の森の枯れた大地から一斉に咲き乱れる無数の魔力の花々。アーサーの軍勢を呑み込み、絶叫と共に森の彼方へと吹き飛ばす圧倒的な光の奔流。
呪いも、痛みも、全てが純白の光の中へと溶けていく。
光に包まれるエレナの体。やがて透明になり、星屑のように大気へと消滅していく。
◇◇◇
数年の歳月が流れる。
森の奥深く、陽だまりの匂いがする小さな丸太小屋。
呪いから解放された代償として、かつての圧倒的な魔力と、両目の視力を完全に失ったヴィルヘルム。静かにジョウロを持ち、庭に咲く色とりどりの花々に水をやる。
背後で土を踏む、車椅子の車輪の微かな音。
[A:ヴィルヘルム・フォン・ドラクロワ:冷静]「……起きたのか」[/A]
穏やかな彼の声。
[A:エレナ・ルミナス:喜び]「ええ。とても、いいお天気ですから」[/A]
魔力を失い、呪いも消え去り、ただの人間となったエレナ。車椅子を進め、彼の広い背中にそっと自身の頬を寄せる。
もう、死の冷気も暴走の熱もない。
あるのは、互いの確かな体温だけ。
水やりを止め、自身の腰に回された彼女の細い手を、大きな手で優しく包み込むヴィルヘルム。
陽光の下、永遠に続くように重なり合う二人の静かな呼吸の音。目に見えない光の中で、完全に結ばれる二つの魂。
痛みと喪失の果てに見つけた、誰にも侵されない静謐な愛の形。
[FadeIn]風が吹き抜け、白い花びらが宙を舞う。[/FadeIn]
どこまでも高く青く澄み切る空。
二人を優しく照らす柔らかな陽だまり。
もう二度と、この手を離すことはない。
静かなリズムを刻む鼓動。
永遠に。
この温もりだけを抱きしめて。
穏やかに続く、二人の時間。