第一章: 奈落の幕開け
酸性雨の匂いが充満する空間。乱反射する眩いネオンの光。
宙で弧を描く、銀色の美しいロングヘア。
漆黒のサイバースーツがしなやかなボディラインを包み込む。氷のように冷たい青い瞳。飛び交う無数のドローンカメラを的確に射抜く、その視線。
所々が破れ、扇情的に覗く白い素肌。見る者の視線を釘付けにして離さない。
[A:神宮寺 アリス:冷静]「こんな子供騙しの罠、私には効かないわ……っ!」[/A]
足元の床が崩落。空中で身を翻すアリス。着地と同時、背後で火柱が爆ぜた。
髪が焦げるような鋭い刺激臭。
それでも、乱れない彼女の呼吸。無敗の女王。
突如、空間全体を赤黒いノイズが呑み込んだ。
[System]警告:メインサーバーへの不正アクセスを検知。管理者権限が上書きされました。[/System]
一瞬だけ跳ねるアリスの眉間。
巨大なホログラムモニター。映し出されたのは、無造作に乱れた黒髪。
画面越しに彼女をねっとりと見下ろす、隈の酷い三白眼。
仕立ての良い漆黒のスーツを着崩したその男の姿。アリスの心臓が激しい警鐘を鳴らす。
[A:黒須 レイ:狂気]「数億の視線の前で、お前が誰のものか証明してやろう」[/A]
低く、冷酷な声。
氷を押し当てられたような悪寒が、アリスの背筋を駆け抜ける。
同時に、足元のグリッドから吹き出す透明な特殊粘液。
生き物のように蠢くそれは、彼女の足首に絡みつく。サイバースーツの隙間から滑り込んでくる不快な感触。
[Sensual]
柔らかな太ももの内側を這い上がる、冷たいゼリー状の物質。
しかし、肌に直接触れた瞬間。まるで彼の手のひらのような、火を噴くような熱を帯びた感触への変貌。
[Tremble]膝から力が抜け、乾いた唇から漏れる声にならない吐息。[/Tremble]
[/Sensual]
異常な速度で跳ね上がっていく、視界の端の視聴者数カウンター。
逃げ場のない仮想空間。彼女の理性をすり潰す狂気のショーの幕開け。
◇◇◇
第二章: 数億の視線と甘い毒
充満していく不可視のガス。
脳髄を直接痺れさせるような、甘ったるい合成香料の匂い。
粘液に動きを封じられたアリスの周囲。乱舞する細いレーザー光線。
光線が漆黒のスーツを掠めるたび、音を立てて溶け落ちる布地。
[Sensual]
あらわになる白い素肌。そこに走る微弱な電流。
[A:神宮寺 アリス:興奮]「あっ……んっ……! なに、これ……!」[/A]
痛みではない。神経を直接撫で回すような執拗な甘さを持つ電流の刺激。
耳の裏、首筋。彼女の最も過敏な部分を、見えない舌が舐め上げるように這う電流。
視界の隅。滝のように流れる視聴者のコメント。
溶けたスーツから覗く柔肉を凝視する、数億の目。
[Pulse]ドクン、ドクン。心音ばかりが耳の奥で反響する。[Heart][/Pulse]
[/Sensual]
彼女の自尊心を削り落としていく、公開羞恥という名の不可視の刃。
それなのに、焼け付くような熱を持ち始める奥深くの濡れた洞窟。
太ももを伝い落ちる、透明な蜜の雫。
[A:神宮寺 アリス:興奮]「こんなもの……効かないわ……っ!」[/A]
強がる言葉。その裏腹に、甘く震える声。語尾に混じる微かな喘ぎ。
[A:黒須 レイ:狂気]「良い鳴き声だ。お前のその顔を、世界中が待ち望んでいる」[/A]
脳内に直接響くレイの声。
彼の声帯の震え。それがアリスの鼓膜を震わせ、脊髄へと快楽の波を送り込む。
[Impact]限界まで開く彼女の瞳孔。白く濁っていく焦点。[/Impact]
完全に理性が吹き飛ぶ寸前。凄まじい轟音と共に空間の壁が弾け飛んだ。
◇◇◇
第三章: 暴かれる裏の顔
粉塵の中から飛び出してきたのは、機能的なオレンジ色のサイバージャケット。
明るい金髪のショートヘア。意志の強い緑色の瞳を輝かせる青年。
[A:リオン:怒り]「先輩は俺が絶対に守ります! だから……諦めないで!」[/A]
ホログラフィック・キーボードを乱打するリオンの指先。アリスを縛るプログラムの解除を試みる。
[A:神宮寺 アリス:驚き]「リオン……逃げて……! こいつは、規格外よ……!」[/A]
息も絶え絶えに警告するアリス。
しかし、空間に響き渡るレイの冷酷な嘲笑。
[A:黒須 レイ:冷静]「羽虫が。現実というものを教えてやろう」[/A]
次の瞬間。空中に浮かぶ無数のモニター群が、一斉に切り替わる別の映像。
薄暗い部屋。カメラの前に据えられた椅子。
そこに自らを拘束し、虚ろな目で自らの敏感な突起を激しく弄るアリスの姿。
[Sensual]
画面の中の彼女。レイが過去に仕掛けた罠の音声をリピート再生しながら、とめどなく溢れる蜜を指に絡める。あられもない声で果てる姿。
[Whisper]「レイ……もっと……私を壊して……」[/Whisper]
[/Sensual]
[Impact]無敗の女王の、あまりにも淫らで狂気に満ちた裏の顔。[/Impact]
ピタリと止まる、リオンのタイピングの手。
限界まで見開かれた緑色の瞳。激しく上下する喉仏。
[A:リオン:絶望]「……せ、んぱい……? 嘘、ですよね……?」[/A]
音を立てて砕け散る、信じていた幻想。
床から噴出した紫色の触媒ガス。呆然と立ち尽くすリオンを包み込む。
咳き込む彼の瞳から消え去る理性の光。宿る、白濁した獣の光。
[Glitch]「アリス……俺の、アリスゥゥゥッ!!」[/Glitch]
喉の奥から絞り出されたのは、人間の言葉ではない。欲望に狂った獣の咆哮。
オレンジ色のジャケットを引き裂きながら、涎を撒き散らしてアリスへと跳びかかっていくリオン。
◇◇◇
第四章: 狂愛のメインフレーム
アリスの白い肌に迫る、獣と化したリオンの爪。
その瞬間、彼女の氷のような青い瞳に戻る冷徹な光。
[Blur]視界を滲ませる涙を瞬きで振り払い、[Magic]《スタン・インパルス》[/Magic]を起動する。[/Blur]
的確にリオンの顎を打ち抜く、高く跳ね上げた長い脚。
[A:神宮寺 アリス:悲しみ]「ごめんなさい、リオン」[/A]
崩れ落ちる青年の体を冷たく見下ろす。血の鉄の味が広がる唇を強く噛み締めるアリス。
[A:神宮寺 アリス:狂気]「私は、あの人の狂気でしか満たされないの」[/A]
ひび割れたサイバースーツを引き摺る。最深部のメインフレームへと足を踏み入れる彼女。
重厚な金属の扉の向こう。
そこにあったのは、分厚い防弾ガラスに囲まれたコントロールルーム。
無数のケーブルが這うコンソールの前。レイが立っている。
硝子越しに交差する視線。
彼の三白眼の奥底にあるのは、黒く淀んだ執着の炎。誰にも渡したくないという狂熱。
[A:黒須 レイ:愛情]「よく来たな、俺の可愛い人形」[/A]
コンソールのキーを優しく撫でる、レイの指先。
その僅かな物理的動作。システムを介し、アリスのサイバースーツへと直結する。
[Sensual]
首筋のプラグから、脊髄へ。
雷撃のような快楽のパルス。直接神経細胞を焼き焦がす。
[Tremble]「ああっ……! ぁ、ああっ……!!」[/Tremble]
大きく弓なりに反るアリスの身体。ガラスの壁にすがりつく。
[/Sensual]
直接触れることはできない。
二人の肉体的な交わりを阻む、分厚いガラス。
しかし、レイの吐息のデータが音声として変換される。アリスの脳内を直接蹂躙する。
[A:黒須 レイ:興奮]「全人類の前で、俺の愛に溺れて死ね」[/A]
赤く明滅するコンソールの光。起動する最終シークエンス。
逃げ場のない、永遠の寸止め地獄の始まり。
◇◇◇
第五章: 光の粒と愛の残骸
ガラス越しの支配。
レイの細く白い指がスライダーを押し上げる。そのたび、アリスの身体を支配するパルスが激しさを増していく。
[Sensual]
[A:神宮寺 アリス:興奮]「レイ……! もっと、強く……! 私を、めちゃくちゃにして……っ!」[/A]
破れたスーツの隙間から覗く白い肌。異常な熱を帯び、桜色に染まっている。
視線を交ませたまま、自らのベルトに手をかけるレイ。
冷たい手で自らの昂りを握り締める。アリスの絶頂に合わせて激しくしごき始める。
[Whisper]「……見ろ。お前が欲しがっている俺の熱だ」[/Whisper]
物理的な結合はない。
だが、視覚と聴覚、そして神経への直接介入。二人の魂をドロドロに溶かし合わせる。
最奥の甘い花芯を、見えないレイの指が激しく弾く。
縮こまる足の指。喉の奥から零れ落ちる、泡立った涎。
[Shout]「あ、あ、だめ、壊れる、真っ白になる!」[/Shout]
数億の視線が突き刺さるという絶対的な公開羞恥。
そして、愛する男による徹底的な蹂躙。
[/Sensual]
[A:神宮寺 アリス:狂気]「あぁぁぁっ! レイ、レイ、レイィィィッ!!」[/A]
[Shout]ついに決壊した、精神の限界点。[/Shout]
白目を剥き、全身を激しく痙攣させるアリス。精神的な絶頂の巨大な渦へと呑み込まれる。
同時に苦悶に歪むレイの顔。熱い吐息と共に、自らの手のひらの中で白き熱を爆発させる。
[Pulse]システムの許容量を遥かに超えて逆流する、二人の極限の感情データ。[Heart][/Pulse]
[System]致命的なエラー。仮想空間の維持が不可能です。[/System]
音を立ててひび割れていく、ネオンに彩られたネオ・トウキョウの箱庭。
[Flash]圧倒的に美しい、純白の光の粒子。[/Flash]
ガラスも、コンソールも。全てが光の雪となって崩壊していく。
ノイズ混じりの静寂。世界中のモニターを黒く塗りつぶした、配信のブラックアウト。
ただ一つ残されたのは、狂おしくも純粋な、二人だけの愛の残骸。