第一章: 銀雨と贄の契約
銀色の雨粒が、苔生す崩れた石柱を鈍く叩く。
重く立ち込めるのは、錆びた鉄の臭気と古い土の匂い。
夜空を切り取ったかのような藍色の長い髪。水気を吸い、重く背中に張り付いている。
かつての栄華の残り香だけを漂わせる、すり切れて色褪せた麻のドレス。その裾を泥に塗らせるセリア。
雨の向こうの祭壇を射抜く、翠緑の瞳。
凍りつくような冷たい石畳。膝から這い上がる底冷え。
それでも、決して曲がることのない彼女の背筋。
[A:セリア:冷静]「古き盟約に従い。エルフェンの大地を、我が血肉をもって蘇らせます」[/A]
震える唇を噛み締め、祭壇に刻まれた茨の封印に触れる指先。
[Pulse]ドクン、ドクン。[/Pulse]
耳の奥で鳴り響く鼓動。
掌から無意識に溢れ出す高純度の魔力。石の表面で放たれる青白い光。
[Flash]刹那、空気が爆ぜた。[/Flash]
[A:ルオウ:冷静]「……何百年ぶりだな、人間の匂いは」[/A]
濃密な魔力の霧の中から揺れる、月明かりを溶かしたような銀色の長髪。
冷酷さと色気を孕んだ琥珀色の獣の瞳が、セリアを上から舐め回すように見下ろす。
ゆったりとした和風の神衣。胸元まで乱雑にはだけ、露わになった鍛え上げられた青白い肌。
[A:セリア:驚き]「あなたが、古の守り神……ルオウ様」[/A]
[A:ルオウ:興奮]「守り神、か。人間は勝手だな」[/A]
歪む、ルオウの唇の端。
音もなく距離を詰め、セリアの細い顎を掬い上げる冷たい指先。
爬虫類のように縦に細くなる琥珀色の瞳孔。
[A:ルオウ:冷静]「大地を蘇らせたいのだろう? ならば対価を支払え。極上の魔力を、俺に寄越せ」[/A]
[Sensual]
[A:セリア:恐怖]「魔力なら……私のすべてを差し出します。どうか、エルフェンを」[/A]
[A:ルオウ:興奮]「言葉通りに受け取ってやろう」[/A]
[Whisper]低い、耳の奥を痺れさせるような声。[/Whisper]
顎から細いうなじを滑り落ち、色褪せたドレスの背中を這う冷たい指先。
ゾクリと、弓なりに反るセリアの背中。
直接肌に触れているわけではない。薄い布越し。
だというのに、彼の指がなぞる軌跡から侵入してくる、火傷しそうなほどの熱。
[A:ルオウ:狂気]「お前のすべては、俺の永遠の渇きを癒すための愛らしい供物だ」[/A]
布の表面を滑る指。彼女の胸の起伏への接触。
[A:セリア:照れ]「あっ……そこは……!」[/A]
[A:ルオウ:冷静]「魔力は、精神の防壁を崩した時に最も濃く滲み出る。抗うな」[/A]
[Heart]ドレスの上から胸の先端の敏感な突起を摘み上げる、ルオウの長い指。
[Tremble]ビクッ、と跳ねるセリアの体。[/Tremble]
初めて触れられる男の熱。布が擦れる微かな音。
下腹部の奥底が、ズンと重く熱を帯びていく。
[A:セリア:恐怖]「やめ……こんな、の……」[/A]
[A:ルオウ:興奮]「口では拒みながら、ずいぶんと良い匂いを放ち始めたな。内股が震えているぞ」[/A]
ドレスの裾から滑り込み、内股の柔らかな肌を撫で上げる片手。
下着の布地を隔てたすぐそこ。熱を帯びた蜜壺の入り口を執拗に擦る、硬い指の腹。
直接的な交わりなどない。ただ外側から撫でられているだけ。
それなのに、背骨を駆け上がる、脳髄が溶け出すような極限の快感。
[A:セリア:絶望]「ひっ、あぁっ……! おかしく、なる……!」[/A]
[A:ルオウ:興奮]「もっと啼け。お前の魔力を一滴残らず啜ってやる」[/A]
[Flash]真っ白に弾ける視界。[/Flash]
雷に撃たれたように全身が痙攣する。
生まれて初めての強烈な絶頂の波に呑み込まれるセリア。
膝の力が抜け、冷たい泥の上に崩れ落ちる。
開いた口から糸を引く、大量の涎。
[/Sensual]
美しい雨音の中、響くのは乱れた呼吸だけ。
領地再興の対価。それは高潔な祈りなどではない。
終わりの見えない、粘ついた快楽の泥沼への入り口。
自分が何に足を踏み入れたのか。
ルオウの琥珀色の瞳に見つめられ、一気に引いていくセリアの血の気。
◇◇◇
第二章: 狂蜜の調教
劇的な変化を遂げていた、古都エルフェンの風景。
枯れ果てていた大地から芽吹く瑞々しい若草。ひび割れた石畳の隙間から顔を出す色鮮やかな花。
陽光を反射する朝露。風に乗る、むせ返るような緑の匂い。
だが、その奇跡の裏側で完全に破壊されていたセリアの日常。
[Sensual]
夜。ランプの火が揺れる薄暗い寝室。
[A:ルオウ:興奮]「どうした。まだ足りないのか?」[/A]
[A:セリア:照れ]「ちが……違います……私は、ただ……」[/A]
ベッドのシーツを握りしめ、激しく首を振るセリア。
汗で肌に張り付く藍色の髪。熱に浮かされて虚ろな翠緑の瞳。
覆い被さるように彼女を押さえつけ、耳の裏の柔らかな肉を甘く噛むルオウ。
[Tremble]「ひっ、あぁ……!」[/Tremble]
[A:ルオウ:狂気]「素直になれ。俺の吐息がなければ、もう夜も越えられない体になったのだろう?」[/A]
[Whisper]「……お願い、です……もう……」[/Whisper]
蜜に濡れた花弁をそっと開くルオウの指。
敏感な昂りを爪先で弾き、円を描くように撫で回す。
セリアの喉から漏れる、獣のような甘い鳴き声。
しかし、絶頂の波が押し寄せる寸前。ピタリと止まるルオウの動き。
[A:セリア:絶望]「あ……なんで……止めるの……」[/A]
[A:ルオウ:冷静]「まだだ。お前が心底から俺を求め、誇りも何もかも捨てて縋り付くまで、果てさせるわけにはいかないな」[/A]
[Pulse]ドクン、ドクン、ドクン。[/Pulse]
焦燥感と熱。
行き場を失った快感が、セリアの理性を泥のように溶かしていく。
過剰なまでの責任感。領主としての矜持。
そんなものは、この男の冷たい指先一つで塵芥となる。
[A:セリア:狂気]「ルオウ様……触って……もっと、奥まで……」[/A]
[A:ルオウ:興奮]「良い声だ。俺だけの愛らしい供物」[/A]
[/Sensual]
自分が自分ではなくなっていく。
誇り高き没落令嬢はもういない。
夜が来るたび、神獣の与える理不尽な快楽の波に呑まれ、涎を垂らして乞うだけの雌。
壁の鏡に映る、赤く火照り、涙と汗に塗れた自身の顔。
その顔に浮かぶ「恍惚」を認識した瞬間、セリアの心臓を鷲掴みにするぞっとするような恐怖。
私は、もう戻れない。
◇◇◇
第三章: 暴かれた厄災
扉を蹴破る轟音。
[Shout]「セリア! 迎えに来てやったぞ!」[/Shout]
王都の軍勢を引き連れ、領主の館に踏み込んできた男。
豪奢すぎる金糸の刺繍が施された軍服。手入れの行き届いた金髪。苛立ちを隠せない碧の三白眼。
セリアの元婚約者、ガレイン。
[A:セリア:驚き]「ガレイン様……なぜ、ここに」[/A]
[A:ガレイン:怒り]「僕を誰だと思っている! この次期王の命令が聞けないのか! こんな辺境の地が、急に豊かな土地になったと聞いてな。僕の領地にしてやる」[/A]
部屋の奥で静かに佇むルオウを捉える、ガレインの視線。
交差する琥珀色の瞳と碧眼。
[A:ガレイン:興奮]「なんだその怪物は。ええい、呪術部隊! 構えろ!」[/A]
[A:ルオウ:冷静]「人間の分際で、俺に指図するか」[/A]
ルオウが一歩踏み出そうとした瞬間。紫黒の光を放つ足元の石畳。
[Glitch]ギギギギ……ッ![/Glitch]
幾重にも張り巡らされた魔力封じの結界。ガレインが事前に仕掛けていた古代の呪術陣。
完全に動きを止められ、顔をしかめるルオウ。
[A:ガレイン:喜び]「ハッ! 神獣だろうがなんだろうが、僕の力の前には無力だ! それにセリア、お前は騙されている!」[/A]
[A:セリア:驚き]「騙されている……?」[/A]
懐から古い羊皮紙を引き抜き、鼻で笑うガレイン。
[A:ガレイン:冷静]「王宮の書庫で調べた。かつてこのエルフェンを崩壊させた謎の厄災。それはな、他でもないその怪物自身が引き起こしたものだ!」[/A]
[Impact]「なんだって……?」[/Impact]
止まるセリアの呼吸。ルオウへと向く視線。
[A:ルオウ:狂気]「……ククッ。ハハハハ!」[/A]
結界の中で、肩を揺らして笑い出すルオウ。
偏執的な光を帯びてセリアを射抜く琥珀色の瞳。
[A:ルオウ:愛情]「そうだ。俺が枯らした。お前たち人間が、俺から離れていくのが我慢ならなくてな。すべてを奪い、俺がいなければ生きられないようにしてやった。そして今、お前も同じだ、セリア」[/A]
[Blur]歪む視界。[/Blur]
領地を救うため。民を救うため。
そのために、己の身を削って快楽の泥沼に沈んだ。
しかし、その前提がすべて嘘。
古都を滅ぼした元凶こそが、毎夜自分に甘い言葉を囁き、快楽を与え続けていたこの男。
歪んだ愛と執着。永遠にこの地に縛り付けるための、巨大な罠。
膝から力が抜け、冷たい床に崩れ落ちるセリア。
喉の奥で詰まった嗚咽が、声にならずに漏れ出す。
◇◇◇
第四章: 泥中の祈り
[Shout]「死ねぇぇぇ!!」[/Shout]
ガレインの手に握られた禍々しい呪刃。動けないルオウの胸を深々と貫く。
[Flash]ドスッ![/Flash]
[A:ルオウ:驚き]「ガハッ……!」[/A]
飛び散る大量の鮮血。床に沈むルオウの巨体。
急速に光が失われていく琥珀色の瞳。
その瞬間、一変する窓の外の景色。
黒く変色する瑞々しい緑。枯れ落ちる花。再び乾いたひび割れを取り戻す大地。
命の源を絶たれた古都の崩壊。
[A:ガレイン:喜び]「ハハハ! 見たか! 僕の力だ! 僕こそが王にふさわしい!」[/A]
狂ったように笑うガレイン。
動けないルオウを見下ろした後、床に這いつくばるセリアの髪を乱暴に掴み上げる。
[A:ガレイン:興奮]「さあ、次はお前の番だ。僕をコケにした罰を受けてもらうぞ。この泥棒猫め、僕の目の前で泣き叫べ!」[/A]
[Sensual]
乱暴に引き裂かれるドレス。セリアの柔肌を撫でる冷たい空気。
ガレインの卑猥な視線。獣のような息遣い。
しかし、セリアの心は驚くほど静かだった。
理不尽な喪失。信じていた者の裏切り。
それでも。
血の海に沈むルオウの姿を見た瞬間。
セリアの胸の奥で燃え上がる、決して消えない黒い炎。
憎い。恐ろしい。
でも、その狂気的な熱なしでは、私はもう生きていくことができない。
[/Sensual]
[A:セリア:狂気]「……離しなさい」[/A]
[A:ガレイン:驚き]「あ?」[/A]
[A:セリア:怒り]「その人に触れるな。その人は、私のものよ!」[/A]
セリアの全身から吹き荒れる、かつてないほどの莫大な魔力の暴風。
悲鳴を上げて吹き飛ばされるガレイン。
血まみれのルオウの体にすがりつく彼女。
自身の唇を、彼の冷たい唇に重ねる。
[Pulse]ドクン、ドクン、ドクン![/Pulse]
[A:セリア:狂気]《魂魄割譲の儀》![/A]
[Magic]我が魂の半分を、我が血肉を、貴方の渇きを癒す永遠の蜜として捧げます![/Magic]
自己犠牲の古魔術。
詠唱と共に、セリアの身体に走る幾筋もの亀裂。
彼女の体から漏れ出す金色の光が、ルオウの傷口へと流れ込んでいく。
[A:ルオウ:驚き]「よせ……セリア……お前が、消え……」[/A]
[A:セリア:愛情]「もう、一人にはしません。一緒に堕ちましょう、ルオウ様」[/A]
身体が崩壊していく激痛。
だが、不思議と恐怖はない。
ただ、世界を壊してでも彼を満たしたいという、狂おしいまでの希求だけがそこにあった。
◇◇◇
第五章: 黄金の神域
[Flash]天を貫く、圧倒的な閃光。[/Flash]
古都エルフェンの中心。
莫大な魔力と魂を喰らったルオウ。
天を突くほどに巨大で光り輝く神樹として、復活を遂げる。
空を覆い尽くす銀色の枝葉。夜明け前のような深い青空に舞い散る、黄金の胞子の雪。
[A:ガレイン:絶望]「ひっ……あ、あああ……嫌だ、死にたくねぇぇぇ!! 僕は、王に……!!」[/A]
軍勢を飲み込む、神の怒りを具現化したかのような極光。
悲鳴を上げる間もなく、音もなく砂となって風に消えるガレインと兵士たち。
悲しいほどに美しく、静寂に包まれた世界。
巨大な神樹の根元。柔らかな苔のベッドの上。
もはや人間の形を保っていないセリアの肉体。
半透明に透き通り、黄金の光を帯びた彼女。
ルオウの胸の奥、脈打つ核の中へとゆっくりと沈んでいく。
[Sensual]
[A:ルオウ:愛情]「馬鹿な女だ。世界も、お前自身も捨てて、俺の永遠の贄となることを選ぶとは」[/A]
[A:セリア:興奮]「ええ……。もう、誰も私たちを邪魔できません。貴方の熱で、私をドロドロに溶かして……」[/A]
セリアの透明な身体を抱きすくめる、ルオウの巨大な腕。
核の中で直接絡み合う二人の魂。
肉体を介さない、純粋な魔力と精神の交歓。
[Whisper]「愛している。お前のすべては、永遠に俺のものだ」[/Whisper]
セリアの魂の最奥を貫く、ルオウの熱い波動。
[Tremble]ああっ、あああぁぁ……ッ! ひぃっ、こわ、壊れる、真っ白に、なるっ![/Tremble]
歓喜に震える細胞の一つ一つ。白く溶け出していく自我。
寸止めなどない、終わることのない狂乱の絶頂。
[/Sensual]
誰も足を踏み入れることの許されない神域。
黄金の胞子が降り積もる中、永遠のまどろみへと落ちていく二人。
エルフェンの大地は、もう二度と緑に覆われることはないだろう。
しかし、彼女にとってそんなことはどうでもいい。
狂気を孕んだ檻の中で、与えられる甘美な快楽に溺れ続けること。
それこそが、彼女がすべてを犠牲にして手に入れた、決して逃れられない歪んだ救済の形。