第一章: 陽だまりの檻と不可視の吐息
透き通るような銀髪に柔らかな金色の斑模様を落とす、初夏の木漏れ日。窓辺に置かれた揺り椅子。生成りの質素なリネンワンピースの裾が、微風にふわりと揺れる。淹れたてのハーブティーが入った陶器のカップを両手で包み込むエリス・ヴァンクール。
舌の上に広がるカモミールの淡い甘み。微かな土の渋み。平和そのものである辺境の森の緑を映し出す、湖面を思わせる翡翠色の瞳。勇者パーティから無能の烙印を押され、追放されてから数ヶ月。彼女の完璧な日常を満たすのは、小鳥の囀りと葉擦れの音だけ。
しかし。カップの縁に口をつけたまま、エリスの細い眉間が一瞬だけ跳ねる。
[Sensual]
異様に熱い、胸元を抜ける風。
誰もいないはずの丸太小屋。それなのに、空間にへばりついているのは、背筋をじっとりと舐め上げるような濃密な気配。エリスはカップを置き、震える指先でワンピースの襟ぐりをわずかに引き下げる。
白い鎖骨のくぼみ。そこから首筋にかけてのラインに咲き誇る、見覚えのない赤い花びらのような痕。昨夜はなかったはずの、吸い付かれたような紅斑。太ももの内側にも残る、指の形に沿った青紅い鬱血。
[Tremble]粟立つ背中。[/Tremble]
得体の知れない恐怖。だがそれ以上に、下腹部の奥底がじゅわりと熱を帯び、腰髄を駆け巡る甘い痺れ。
[A:エリス・ヴァンクール:照れ][Whisper]「今日もいいお天気ね。……ふふ、どうしてこんなに身体が熱いのかしら」[/Whisper][/A]
虚空に向けて落とす独り言。その瞬間、耳朶を掠めるように吹き付けられたのは、生温かく湿った吐息。
[Heart]
ビクッと肩が跳ね、靴の中で硬く縮こまる足の指。見えない舌が耳介をなぞるような錯覚。下着の奥で、意思とは無関係に滲む熱い雫。柔らかい布を重く濡らしていく。
見えない何かに、少しずつ、確実に『開発』されている事実。その狂気に気づかぬふりをしながら、両手で覆う赤く染まった頬。繰り返される浅い呼吸。
[/Sensual]
どこまでも静かな森。不気味なほど美しく響き渡る鳥たちの歌声。狂信的な愛の気配が、じわじわと彼女の退路を断ち切るように、小屋の影を濃くしていく。
◇◇◇
第二章: 冷たい手紙と焦燥の夜
夜の帳が下りる頃、古い木製のテーブルに置かれた一通の手紙。
幼馴染の魔法使い、ノア・イルミナスから定期的に届くそれ。端正な文字で綴られているのは、王都の情勢や他愛のない日常。だが、エリスがその羊皮紙に触れるときだけ、空間を満たすのは肌を刺す冷たいプレッシャー。部屋の温度が数度下がるような錯覚。
[Think]なぜ、ノアの手紙を読むと、こんなにも息が苦しくなるのだろう。[/Think]
不自然に揺らぎ、消えかける暖炉の火。指先が凍りつくような冷気を振り払い、足早にベッドへと潜り込むエリス。
深い微睡みの底。意識が泥のように沈みかけた直後。[Pulse]ドクン、[/Pulse]と異常な跳躍を見せる心臓。
[Sensual]
金縛り。
ベッドに縫い付けられたように動かない四肢。目を見開くエリスの視界の端、月明かりに照らされた空間に浮かび上がるのは、[FadeIn]顔部分にノイズが走った騎士の幻影[/FadeIn]。擦り切れた青いマントの残滓。
沈むシーツ。エリスの華奢な身体にのしかかる、圧倒的な質量の「不可視の重み」。
[A:レオン・アークライト:狂気][Whisper]「……俺の、エリス……」[/Whisper][/A]
直接脳髄を震わせる、重く低く響く声。[Heart]
悲鳴を上げようとする喉を塞ぐ、見えない唇。衣服の隙間から侵入してくる、冷たいようで火のように熱い、実体のない指先。
胸元の膨らみを揉みしだき、薄い布越しに敏感な突起を正確に弾き飛ばす。
[A:エリス・ヴァンクール:興奮]「んっ……ぁ、や……あっ!」[/A]
喉の奥から漏れる、甘く濁った嬌声。一切の躊躇なく下腹部へと滑り落ちる見えない指。濡れそぼった花弁を執拗に掻き分ける。直接的な交わりはない。ただ限界まで焦らし、敏感な部分だけをネチネチと、狂ったような執着で弄り回す粘着質な愛撫。
[Tremble]「あぁっ、あ、あぁぁ……っ!」[/Tremble]
弓なりに反り上がる背中。首筋に浮かぶ玉の汗。白目を剥きかけ、口角から垂れる一筋の涎。絶頂の淵まで連れて行かれては引き戻される拷問のような快楽。[/Sensual]
翌日の真昼。陽光の下で薬草に水をやりながらも、不意に吹いた生温かい風が肌を撫でた瞬間。フラッシュバックする昨夜の記憶。
手にした水差しを取り落とし、その場にへたり込むエリス。ガクガクと痙攣し、立っていられない両脚。真昼の光の中で、彼女は自らの濡れた最奥を太ももで擦り合わせる。終わりのない快感の余波に震えながら。
この甘く歪な地獄から、もう引き返せない所まで来ている。
◇◇◇
第三章: 崩壊する幻想と残酷なる真実
[Impact]「エリス!」[/Impact]
静寂を切り裂く鋭い声。
小屋の前の草むらを掻き分け現れたのは、黒を基調とした魔導士のローブを纏う青年。癖のある黒髪。知的な三白眼の紫色の瞳。目元には濃い隈が刻まれ、全身から立ち上る疲労と焦燥感。
ノア・イルミナス。幼馴染であり、天才と謳われる魔法使い。
[A:エリス・ヴァンクール:驚き]「ノア……? どうして、ここに」[/A]
翡翠の瞳を丸くするエリス。荒い息を吐きながら歩み寄るノア。彼女の手首を強く掴み取る。鼻腔を突く、羊皮紙と古いインクの匂い。
[A:ノア・イルミナス:怒り]「君を迎えに来た。……こんな悍ましい場所に、これ以上君を置いておけない」[/A]
[A:エリス・ヴァンクール:恐怖]「悍ましいって……ここは、私のような役立たずが静かに暮らすための」[/A]
[A:ノア・イルミナス:絶望]「違う!!」[/A]
[Shout]木々の葉を激しく揺らす、ノアの絶叫。[/Shout]
[A:ノア・イルミナス:冷静]「君は追放なんてされていない。ここは現実の森じゃない。……レオンが創り上げた、『永遠の箱庭』だ」[/A]
引いていくエリスの血の気。微かに震える指先。浅くなる呼吸。
無慈悲な刃となって、エリスの脆弱な精神を切り刻むノアの言葉。魔王討伐の折、致命的な呪いを一身に受けた光の勇者レオン。彼は命と引き換えに、エリスだけを世界の脅威から完全に隔離するための結界を構築した事実。
追放劇。それは彼女を戦場から遠ざけるための、あまりにも不器用で狂気的な嘘。
[A:ノア・イルミナス:悲しみ]「レオンはもう死んだんだ。肉体を失い、君への執着だけでこの空間を維持する泥のような思念体に成り果てた。夜な夜な君を慰めているのは、その残骸だ!」[/A]
[Flash]真っ白に明滅する視界。[/Flash]
あの熱い視線。首筋の痕。耳元で囁く声。シーツを濡らした果てしない快楽。すべては、世界を捨てて自分だけを狂おしいほどに愛し抜く、レオンの魂の仕業。
[A:エリス・ヴァンクール:狂気][Tremble]「あ……あぁ……レオン、レオンが……」[/Tremble][/A]
恐怖ではない。胸の奥底から込み上げるのは、致死量の愛を与えられていたという圧倒的な充足感。腹の底を焼き尽くすような甘い熱。自らの唇を強く噛み締めながら、歪んだ笑みを浮かべるエリス。
だが、ノアは杖を天へと掲げる。先端に収束する膨大な魔力。ギリギリと軋む音を立てる空間。
[A:ノア・イルミナス:怒り]「僕が君を呪いから解放する! こんな歪な世界は、僕が壊してやる!!」[/A]
天蓋を撃つ、杖の先端から放たれた閃光。その瞬間、箱庭の空が不吉な赤黒い色へと反転し、ガラスのようにひび割れる大気。
◇◇◇
第四章: 暴走する檻と公開される蜜
[Glitch]ガガ……ギィィィン……ッ!![/Glitch]
[Magic]《空間破砕・絶》[/Magic]の詠唱が完了する直前。バグを起こしたように歪む世界。
ゼリーのように粘度を増す大気。ノアを吹き飛ばす、強烈な魔力の嵐。石の地面を転がり、血を吐くノア。見開かれる紫色の瞳。
[A:レオン・アークライト:狂気][Shout]「……誰ニモ、触レサセナイ。君ノ全テハ、俺ガ護ル……!!」[/Shout][/A]
[Sensual]
空気を引き裂くような、ノイズ混じりのレオンの咆哮。
嫉妬と独占欲に完全に狂い、暴走する思念体。淡い金色の魔力が無数の太い蔓となって具現化し、エリスの四肢に絡みつく。
[A:エリス・ヴァンクール:恐怖]「いやっ! レオン、待って、やめ……きゃあぁっ!」[/A]
ビリッ、と無惨な音を立てて引き裂かれる生成りのワンピース。
赤黒い空の下、空中に磔にされる白磁のような裸身。見開かれたノアの眼前でエリスを襲う、容赦のない愛撫の嵐。
胸の先端を強く吸い上げる魔力の蔓。無防備に晒された柔らかな花芯へと容赦なく侵入する、不可視の太い指。
[A:エリス・ヴァンクール:興奮][Tremble]「あぁっ! だめ、ノアが見てる、見ないでぇ……! ひぃっ、あ、あ、ああっ!!」[/Tremble][/A]
羞恥心で全身を真っ赤に染めながらも、快感に抗えないエリスの身体。自分を守るために全てを捨てたレオンの、魂の悲鳴。深すぎる愛が、交わりを通じて直接脳髄に流れ込んでくる。
ズチュッ、グチュッ。静寂の森に響き渡る、肉が打ち据えられるような卑猥な水音。
当てつけのように執拗に抉られる、奥の蜜壷の最深部。理性を粉々に打ち砕く、熱い白き楔の幻影。
[A:ノア・イルミナス:絶望][Shout]「やめろぉぉぉ!! エリスから離れろ、このバケモノがぁぁ!!」[/Shout][/A]
ノアの悲痛な絶叫をBGMに、限界まで開くエリスの瞳孔。激しく振られる首。口からツツーッと糸を引く透明な涎。滴り落ちる濃密な愛の雫。
社会的タブーも、幼馴染の前という羞恥も。すべてを呑み込む、圧倒的な快楽の濁流。
[A:エリス・ヴァンクール:狂気]「あぁっ、レオンっ! もっと、もっと私を……めちゃくちゃにしてぇぇっ!!」[/A]
[Flash]スパァァァンッ!![/Flash]
魂の髄まで焼き尽くされるような、致死量の絶頂。「あ、あ、だめ、壊れる、真っ白になる!」
空中で激しく痙攣するエリスの身体。雨のように大地へと降り注ぐ、大量の甘い体液。
[/Sensual]
エリスの絶叫と共に、箱庭の空に走る巨大な亀裂。ガラスが砕け散るような轟音。偽りの世界が奏で始める崩壊の序曲。
◇◇◇
第五章: 美しき夕立と静かなる狂気への沈下
パラパラと剥がれ落ちる結界の空。
亀裂の向こう側に覗くのは、魔王の瘴気に汚染された現実世界の凄惨な風景。赤茶けた荒野と化した大地。
[A:ノア・イルミナス:悲しみ]「エリス……さあ、手を取って。一緒にここから逃げるんだ。僕が、君を正しく幸せにするから」[/A]
地に這いながら、血まみれの手を差し出すノア。その顔に張り付いているのは、宿敵を打倒できなかった敗北感と、エリスへの泥濘のような執着。
ゆっくりと地面に下ろされる、空中に浮かんでいたエリスの身体。引き裂かれた衣服の破片を胸に抱き、フラフラとノアの前に歩み寄る彼女。
そして。その震える手を、冷たく振り払う。
[A:ノア・イルミナス:驚き]「……え?」[/A]
[A:エリス・ヴァンクール:愛情]「ごめんなさい、ノア。……私は、ここを離れない」[/A]
翡翠色の瞳にあるのは、もう一片の迷いもない確信。
レオンがどれほど歪んだ化物に成り果てていようと。この世界が虚構の檻であろうと。彼が命を賭して与えてくれた、不器用で狂気的な愛以上のものを、エリスはもう知ることができない。正気を手放してでも、この愛に溺れたい。
[A:エリス・ヴァンクール:狂気]「私はここで、彼と永遠に微睡むわ。……だからノア、あなたは現実を生きて」[/A]
[System]《対象:ノア・イルミナス/空間追放シーケンス起動》[/System]
作動する箱庭の防衛システム。歪む空間。現実世界へと強制的に吸い込まれていくノアの身体。
「待て! エリス、エリスゥゥゥッ!!」
閉ざされていく亀裂の向こうへ消え去る、絶望の叫び。
[Sensual]
完全に閉鎖された箱庭。
再び美しい緑に覆われた森に降り始める、サラサラと優しい夕立。甘く立ち込める雨の匂いと濡れた土の香り。
誰もいなくなった空間で、エリスの背後からそっと抱きつく、ノイズの走る騎士の幻影。
[A:レオン・アークライト:愛情][Whisper]「……エリス……愛してる……俺だけの、エリス……」[/Whisper][/A]
[Heart]実体のない透明な腕。彼女の裸身を優しく、だが絶対に逃がさない力強さで抱きすくめる。
目を閉じ、レオンの冷たい魔力の頬に自らの頬をすり寄せるエリス。銀色のまつ毛を伝い落ちる、一滴の温かい涙。
[A:エリス・ヴァンクール:喜び]「ええ、レオン。私も愛しているわ。……ずっと、ずっと一緒にいましょうね」[/A]
雨音に混じって、再び森に溶けていく微かな水音と甘い吐息。交じり合う、熱い体温と冷たい魔力。
[/Sensual]
世界がどれほど残酷でも、完璧だったこの小さな箱庭。究極の自己犠牲と相互依存の果て。透明な毒に濡れながら、終わることのない快楽と静寂の底へと、ただ幸せそうに微笑んで沈んでいく、まどろむ聖女。