第1章:裏切りの代償

冷たく湿った空気が、肺の奥をじわりと侵食していく。
鉄錆とカビの入り混じった腐臭が鼻腔を突き刺す、光の届かない地下牢。
光魔術の源である魔力を完全に封じる重厚な手枷が、白く華奢な手首に深く食い込んでいる。
[A:セレスティア・ヴァンガード:怒り]「……私を、どうするつもりだ」[/A]
血が滲むほど唇を噛み締めながら、彼女は地を這うような声を絞り出した。
銀色の長い髪は泥と汗に塗れ、本来の輝きを失って重く首筋に張り付いている。
かつて白銀の甲冑を纏い、王都シエル・ルミナスの希望と謳われた聖騎士団長セレスティア・ヴァンガード。
今は粗末な麻のドレス一枚を纏わされ、冷たい石畳の上に無防備な姿を晒している。
透き通るような青い瞳だけが、抗う意志を燃やして眼前の敵を睨みつけていた。
[A:エルドリッチ・クロウ:冷静]「どうもしないさ。ただ、真実を見せるだけだね」[/A]
格子越しに用意された豪奢なベルベットの椅子。
そこに深く腰掛け、エルドリッチ・クロウは優雅にティーカップを傾ける。
漆黒の髪が蝋燭の微かな光を吸い込み、深淵を思わせる紫の瞳がセレスティアを値踏みするように見下ろした。
仕立ての良い黒の貴族服にはシワ一つない。
この不浄な地下牢において、彼だけが切り取られた異空間のように完璧な静謐を保ち続けている。
ダージリンの甘く芳醇な香りが、鉄と血の匂いを上書きしていく。
[A:セレスティア・ヴァンガード:怒り]「真実……? 貴様のような混沌の使い手が語る言葉など、何一つ信じない……!」[/A]
[A:エルドリッチ・クロウ:冷静]「なら、君自身の目で確かめるといい」[/A]
カチャリ、と磁器の触れ合う乾いた音が響く。
彼が細く長い指を軽く鳴らした瞬間、[Flash]閃光[/Flash]が牢の暗闇を切り裂いた。
石壁に揺らめくように映し出されたのは、まやかしの幻影ではない。
魔術によって空間に焼き付けられた、揺るぎない過去の断片。
[A:セレスティア・ヴァンガード:驚き]「……なっ」[/A]
そこに映っていたのは、セレスティアが誰よりも信頼していた男の姿。
薄暗い路地裏。
敵国の密偵から重々しい革袋を受け取る騎士の横顔が、冷酷な月光に照らされる。
彼がニヤリと歪んだ笑みを浮かべた瞬間、セレスティアの心臓が[Pulse]ドクンッ[/Pulse]と嫌な音を立てて跳ねた。
第2章:抗えない熱

[A:セレスティア・ヴァンガード:怒り][Shout]「嘘だッ! ルーカスが、私を裏切るはずがない!」[/Shout][/A]
激しく鎖を鳴らし、立ち上がろうとして膝から崩れ落ちる。
冷たい泥水が麻のドレスを濡らし、白く透き通るような肌を芯まで凍えさせた。
[A:エルドリッチ・クロウ:冷静]「君を裏切ったのは、君の最も身近な者だよ。彼は君の情報を売り、今の君がここにいる状況を作り出した張本人だ」[/A]
[Impact]冷徹な事実。[/Impact]
魔術による精神干渉ではない。
純粋な論理と、逃れようのない証拠。
エルドリッチの低く落ち着いた声が、静かな水面に落ちる毒の雫のように、セレスティアの脳髄へと染み込んでいく。
[A:エルドリッチ・クロウ:冷静]「孤児から実力だけで這い上がった君は、常に『完璧な聖騎士』であることを求められた。誰かに認められたい、愛されたいという渇望を、重い甲冑の下に隠してね」[/A]
[A:セレスティア・ヴァンガード:恐怖][Tremble]「黙れ……! 黙れ……ッ!」[/Tremble][/A]
[A:エルドリッチ・クロウ:冷静]「だが、君は常に一人だった。周囲は君を偶像として祭り上げ、誰も君の本当の姿など見てはいなかった。君が命を懸けて守ろうとした国も、仲間も、初めから君を消費するだけの装置に過ぎなかったんだ」[/A]
[Pulse]ドクン、ドクン、ドクン。[/Pulse]
胸の奥で高鳴る鼓動。
強烈な摩擦で不規則に暴れ回る心音。
「お前は一人だ」という呪いの言葉が、彼女の最も脆い部分を容赦なく抉り取っていく。
首筋を流れる汗が冷たく、視界の端が[Blur]白く滲んでいく[/Blur]。
膝の震えが止まらない。
呼吸が浅くなり、酸欠に陥った魚のように唇が微かに震え続けた。
[A:セレスティア・ヴァンガード:悲しみ][Tremble]「やめて……やめてくれ……っ」[/Tremble][/A]
ついに、彼女の唇から哀願の言葉が零れ落ちる。
誇り高き聖騎士が、初めて自らの意志で他者に屈服を示した瞬間。
エルドリッチの紫の瞳の奥で、微かに満足げな光が揺らめいた。
第3章:融解する理性

[Sensual]
カシャン、と重々しい金属音。
セレスティアの手首を縛っていた戒めが床に滑り落ちる。
[FadeIn]いつの間にか牢の扉は開かれ、エルドリッチが彼女の目の前に立っていた。[/FadeIn]
用意されたのは、拷問器具ではない。
清潔なシーツが敷かれた豪奢なベッド。
そして、温かく湯気を立てる極上のポタージュと焼きたてのパン。
罰ではなく、過剰なまでの優しさ。
それがどれほど恐ろしい罠であるか、頭では理解しているのに、飢餓と絶望に蝕まれた肉体が動こうとしない。
[A:エルドリッチ・クロウ:愛情][Whisper]「無理をしなくていい。君の苦しみは、私が全て背負ってあげよう」[/Whisper][/A]
彼の仕立ての良い黒い袖が擦れる音がする。
ふわりと、心を狂わせるような芳醇な紅茶の香りと、彼特有の冷たくも甘い体臭が鼻腔をくすぐった。
エルドリッチは膝をつく。
震えるセレスティアの銀糸のような髪を、ゆっくりと掬い上げる。
そのまま彼女の敏感な耳の後ろ、そしてうなじへと顔を近づけた。
[A:セレスティア・ヴァンガード:照れ][Tremble]「あっ……、んっ……」[/Tremble][/A]
[Heart]ドクンッ、ドクンッ。[/Heart]
熱い吐息が直接肌を撫でる。
それだけで、彼女の背筋を強烈な甘い痺れが駆け上がり、脳の芯がどろりと溶け出すような感覚に襲われた。
今まで誰にも触れられたことのない柔らかな肌。
そこに触れる彼の指先は恐ろしいほどに冷たい。
なのに、触れられた場所から焼け焦げるような熱が全身へと広がっていく。
[A:エルドリッチ・クロウ:愛情][Whisper]「君はもう戦わなくていい。全てを委ねればいいんだよ、私の可愛い小鳥」[/Whisper][/A]
[A:セレスティア・ヴァンガード:興奮][Whisper]「だめ、だ……私は、騎士、であ……あっ、ぁあッ……!」[/Whisper][/A]
麻のドレスの上から、そっと背中を撫で下ろされる。
ただそれだけの行為で、下腹部の奥底がじくりと熱を帯び、[Pulse]甘い疼き[/Pulse]が波紋のように広がっていく。
抵抗しなければならない。彼を拒絶しなければならない。
それなのに、疲弊しきった精神は、この圧倒的な存在感と絶対的な肯定感に激しく惹きつけられていた。
自らの意志に反し、すり寄るように彼の胸に額を押し付けてしまう。
そんな自分に対する強烈な羞恥心が、さらなる快楽の起爆剤となって彼女の理性を焼き尽くしていく。
シーツの滑らかな摩擦が肌に触れるたび、安らぎと背徳感が混ざり合う。
息の根を止めるような甘美な毒となって、微熱を帯びた血流と共に全身を駆け巡った。
[A:セレスティア・ヴァンガード:興奮][Whisper]「はあッ、はあッ……あ、いや……やめ……っ」[/Whisper][/A]
熱に浮かされたように荒い呼吸を繰り返す彼女の口元を、エルドリッチの指が優しく塞ぐ。
完全に精神の均衡が崩れ、彼の腕の中で全てを投げ出そうとした、まさにその時。
[/Sensual]
ギィィ……と、重厚な牢の扉が不自然な音を立てて開く。
[A:ルーカス・ファリア:驚き]「団長! 無事ッスか!?」[/A]
そこに立っていたのは、敵に情報を売ったはずの副官、ルーカス・ファリアだった。
第4章:反転する世界

[A:ルーカス・ファリア:驚き]「エルドリッチの奴が席を外した隙を突いて助けに来たッスよ。さあ、早く俺の手を取って!」[/A]
茶色の短髪を汗で張り付かせ、人懐っこい緑の瞳を焦燥に歪ませたルーカス。
着崩した騎士団の制服を翻して駆け寄ってくる。
かつてなら、どれほど心強い光景だっただろう。
だが、今のセレスティアの目に映るその姿は、あまりにも醜悪だった。
ひどく薄汚く、滑稽にさえ見える。
[Think]なぜ、この男はこんなにも泥臭く、不浄なのだろう。[/Think]
[Think]それに比べて……。[/Think]
視線を巡らせば、そこにはエルドリッチが作り出した絶対的な静謐と、甘美な香りが満ちる空間がある。
恐怖と苦痛に満ちていたはずのこの地下牢。
いつしか彼女にとって「真の安息の地」へとすり替わっていた。
言葉巧みな支配と、徹底した精神の解体。
エルドリッチの仕掛けた罠は、セレスティアの「常識」という名の根幹を完全に書き換えていたのだ。
[A:ルーカス・ファリア:驚き]「団長……? どうしたんスか、早く!」[/A]
差し出された無骨な手を、セレスティアは冷たい青い瞳で見据える。
パンッと鋭い音を立てて払いのけた。
[A:セレスティア・ヴァンガード:冷静]「触れるな。不浄な者が」[/A]
[A:ルーカス・ファリア:驚き]「は……? 団長、何言って……」[/A]
[A:セレスティア・ヴァンガード:怒り]「貴様が情報を売り渡した映像は、とうに見ている。私の部下を装いながら、常に己の保身と金のために動いていた薄汚い裏切り者が」[/A]
図星を突かれたルーカスの表情が、一瞬にして[Glitch]醜く歪んだ[/Glitch]。
人の良い青年の仮面が剥がれ落ちる。
嫉妬と悪意に満ちた本性が露わになる。
[A:ルーカス・ファリア:怒り][Shout]「チッ……! バレてんなら仕方ねェ! あんたみたいに才能だけで上り詰めた綺麗事だらけの女、ずっと気に食わなかったんだよ!」[/Shout][/A]
腰の長剣を抜き放ち、セレスティアへと凶刃を振り下ろそうとした、その瞬間。
[Impact]圧倒的な重圧が、空間そのものを押し潰した。[/Impact]
[A:エルドリッチ・クロウ:冷静]「私の小鳥に、随分と野蛮な真似をしてくれるじゃないか」[/A]
[Magic]《深淵の戒め》[/Magic]
エルドリッチの冷ややかな一瞥。
たったそれだけで、ルーカスの体は目に見えない巨大な力に叩きつけられる。
冷たい石畳の上に無惨に跪かされた。
骨の軋む嫌な音が地下牢に響き渡る。
[A:ルーカス・ファリア:恐怖][Tremble]「がっ、ああっ……! な、なんだこれ……体が、動か、ねェ……ッ!」[/Tremble][/A]
第5章:狂気の絶頂

[A:エルドリッチ・クロウ:冷静]「さあ、私の愛しい剣よ。君の手で、この醜い過去を断ち切りなさい」[/A]
エルドリッチは優雅な足取りでセレスティアの背後に立つ。
彼女の華奢な肩にそっと手を置く。
その瞬間、[Pulse]セレスティアの全身を強烈な歓喜が貫いた。[/Pulse]
彼の声、彼の体温、彼から与えられる命令。
それら全てが、今の彼女にとって存在意義そのものとなっていた。
[A:セレスティア・ヴァンガード:喜び]「はい……。我が主の、御心のままに」[/A]
[Sensual]
傍らに落ちていたルーカスの短剣を拾い上げる。
かつて光の加護を信じた聖騎士の瞳には、もはや一片の迷いもない。
あるのは、絶対的な主に対する狂信的な愛と、それに付き従う至上の悦びだけ。
[A:ルーカス・ファリア:恐怖][Shout]「だ、団長ッ! 嘘だろ、正気に戻ってくれッ! ぎゃあああああっ!!」[/Shout][/A]
肉を裂き、骨を断つ鈍い音が響く。
ぬかるんだ悲鳴を置き去りにして、幾度も刃を振り下ろす。
返り血が彼女の透き通るような頬を汚し、銀色の髪に赤い斑点を作った。
鉄錆の匂いが充満する中、セレスティアは刃を捨てる。
崩れ落ちるようにエルドリッチの足元へと縋り付いた。
過去の自分を構成していた全てを殺し尽くし、真っ新な器となった彼女は、恍惚とした表情で彼を見上げる。
[A:エルドリッチ・クロウ:愛情]「よくやったね。本当に、君は美しいよ」[/A]
ご褒美を与えるように、エルドリッチの冷たい指先が血に濡れた彼女の頬を撫でる。
そのまま彼女の顎を持ち上げ、白く無防備な首筋に深く、熱い口づけを落とした。
[A:セレスティア・ヴァンガード:興奮][Whisper]「あ、ああっ……! ひぁっ、あっ……!」[/Whisper][/A]
[Heart]ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ![/Heart]
牙を立てられるような痛みを伴う愛撫。
それが、セレスティアの肉体を極限まで研ぎ澄まされた快楽の坩堝へと叩き落とす。
下腹部の最奥が激しく脈打ち、熱を帯びた粘膜からとめどなく甘い蜜が溢れ出す。
粗末な麻のドレスの下で、誰にも触れられたことのない花芯が硬く結ばれた。
擦れるたびに、脳の髄まで痺れるような火花が駆け抜ける。
[A:エルドリッチ・クロウ:愛情][Whisper]「君はもう、私なしでは息をすることすらできない。そうだろう?」[/Whisper][/A]
[A:セレスティア・ヴァンガード:興奮][Whisper]「はいっ、はあっ……! あなたの、あなたのものです……! 私の全てを、ぐちゃぐちゃに、満たして……っ!」[/Whisper][/A]
指先が柔らかな花弁をなぞり、濡れそぼった蜜壺の入り口を弄る。
[Pulse]くちゅ、ちゅ、[/Pulse]
[Pulse]じゅちゅっ、ぴちゃっ……[/Pulse]
生々しい水音が、血の匂い漂う静かな地下牢に反響し続ける。
視線と指先。
そして絶対的な支配の快感が、彼女の理性をドロドロに溶かしていく。
背筋が弓なりに反り、足の指先までがピンと張り詰めた。
息の詰まるような熱量と湿度が空間を満たす。
視界が激しく明滅し、酸素を求めて喉がヒューヒューと鳴る。
極限の快楽に全身が痙攣を始め、彼女は狂気に満ちた絶頂の波に呑み込まれた。
ガクガクと体を震わせながら、よだれを垂らし、獣のように泣き叫ぶ。
[A:セレスティア・ヴァンガード:興奮][Shout]「あああっ! 私は……あなただけのものだ……ッ!!」[/Shout][/A]
[/Sensual]
聖騎士の誇りは完全に崩壊し、暗黒の底で産声を上げた。
彼女の心身には、エルドリッチへの狂気的な愛と服従だけが、消えることのない刻印として深く刻み込まれた。
第6章:深淵の救済
それから、数ヶ月の時が流れた。
空は重苦しい鉛色の雲に覆われ、かつて光の象徴とされた王都シエル・ルミナスは、今や紅蓮の炎に包まれている。
焦げた肉の匂い。
崩れ落ちる石積みの轟音。
絶え間なく響き渡る断末魔。
その地獄絵図を見下ろす小高い丘の上に、二つの影があった。
[A:セレスティア・ヴァンガード:冷静]「主よ。第一防衛線の制圧、完了いたしました」[/A]
漆黒のフルプレートアーマーを纏い、背中には夜の闇を切り取ったかのような黒いマントを翻す女騎士。
透き通るような青い瞳には、かつての迷いや苦悩は一切ない。
あるのは、絶対的な秩序としてのエルドリッチへの忠誠と、彼が望む破滅を遂行する純粋な喜びのみ。
彼女の銀色の髪は熱風に舞い、炎の照り返しを受けて禍々しくも圧倒的な美しさを放っていた。
[A:エルドリッチ・クロウ:愛情]「素晴らしい働きだね、セレスティア。君の剣閃は、かつて光を纏っていた頃よりも遥かに美しく、鋭い」[/A]
エルドリッチが優雅な微笑を浮かべ、彼女の頭を優しく撫でる。
その温もりに触れた瞬間、冷徹な漆黒の騎士の表情が崩れ、主を慕う恍惚とした表情へと変わった。
[A:セレスティア・ヴァンガード:喜び][Whisper]「もったいないお言葉です……。すべては、私に真の救済を与えてくださった、あなた様のために」[/Whisper][/A]
彼女にとって、故郷を焼き払うこの行為は決して堕落ではない。
偽りに満ちた世界を浄化し、愛する主に捧げる至上の供物。
エルドリッチからの言葉一つ、視線一つで、彼女の胸の奥底では甘い快楽が弾け、心が極限まで満たされていく。
燃え上がる王都の熱風が、二人の頬を撫でる。
エルドリッチは彼女の腰を引き寄せ、燃え盛る炎を背景に、その唇を深く塞いだ。
「んっ……ぁ……」
世界そのものの倫理観が狂い、崩壊していく音を子守唄にしながら。
二人の破滅的な愛は、どこまでも深く、甘美な暗黒の檻の中で永遠に絡み合い続ける。
足元で国が灰に帰す焦げ臭さすら、彼女にとっては主の与えた至高の香水でしかない。
もう戻れない。
戻るつもりなど、毛頭ない。
深淵に身を投げた聖騎士は、主の腕の中で永遠の安寧に酔いしれ、艶やかに微笑んだ。
[System]――World Logic Overwritten. The Dark Knight has awakened.――[/System]