第一章: 落魄と再会
「……嘘、でしょう」
錆びた蝶番が耳障りな悲鳴を上げ、湿り気を含んだ濃密な霧が薄暗い工房の床を這う。エレノア・フォン・シルフィードは、荒い呼気とともに崩れ落ちそうになる膝を必死で引き絞った。自慢だった波打つ黄金の長髪は乱れ、泥と冷汗にまみれて肌に張り付いている。
金糸の刺繍が施された豪奢な神官服は破れ、豊かな胸元が早鐘を打つ心臓の拍動に合わせて激しく波打っていた。喉の奥がカラカラに渇き、魔力回路が内側から炭化していくような灼熱痛が全身を苛む。
「誰か……助けて……」
微かな掠れ声に応えるように、乱雑に積み上げられた薬棚の奥から静かな足音が響いた。現れたのは、端正な顔立ちに氷のように冷ややかな眼光を宿した黒髪短髪の青年だ。
皺ひとつない漆黒のローブを纏った彼は、琥珀色の怪しい液体で満たされた小瓶を指先で弄び、無造作に作業卓へと置く。
レオン・ヴァルハイト「おや。どなたかと思えば、我が気高き聖女様ではありませんか」
エレノア・フォン・シルフィード「レオン……っ、貴方がなぜ、王都外郭の隠れ調薬師などと……っ!」
魔力枯渇の地獄から逃れるため、禁忌の腕利きがいると聞いて這うように辿り着いた先が、無能の烙印を押して追放した男の工房だなんて。
レオン・ヴァルハイト「立場が変われば、見える景色も変わるものですよ」
低く澄んだ美声が、冷え切った石壁に静かに染み渡る。彼の一挙手一投足に宿る無駄のない優雅さが、エレノアの神経を逆撫でした。
エレノア・フォン・シルフィード「私を愚弄する気ですの!? 治癒結界の維持で身体の芯が焼けつくように痛むのよ……! 薬を出しなさい、金ならいくらでも払いますわ!」
乾いた唇を引き結び、エレノアは懐から宝石の詰まった革袋を床に投げ捨てる。じゃらりと鈍い音が響くが、青年の視線は微動だにしない。
レオン・ヴァルハイト「金など不要です。ただ……これを一滴、喉へ落としてみせなさい」
長い指が小瓶を掴み、問答無用でエレノアの強張った顎を搦め捕る。逃れようともがく間もなく、冷たい硝子の口が無理やりに唇を押し開いた。
渇きに狂った咽喉が、本能のままに甘美な毒液を嚥下する。
エレノア・フォン・シルフィード「んっ……、は……ぁっ!?」
♥熱い痺れが胃袋から急速に駆け上がり、下腹部を脈打たせる。
ごくり、と卑しい音を立てて飲み干した瞬間、視界が鮮烈な朱に染まった。毛細血管の隅々にまで熱湯を流し込まれたような猛烈な疼きが、乾ききった魔力回路を強引に拡張していく。
レオン・ヴァルハイト「どうです。乾いた身体が、内側から潤っていく感覚は」
耳元に触れる吐息だけで、エレノアの肌に粟立つような快感が走った。碧眼にじっとりと潤んだ熱が灯り、支えを失った膝がぐしゃりと音を立てて冷たい石畳へ崩れ落ちる。
「あ、熱い……っ、身体の芯が、溶けて……っ」
滴る涎が顎を伝い、誇り高き聖女の胸元を汚していく。
第二章: 逆転の兆し

天窓から差し込む冷たい月光が、密閉された調合室の熱気と混ざり合う。甘く重い麝香の香りが充満し、二人の吐息が絡み合って濃密な霧を作っていた。
エレノアの豊かな胸を包む神官服の布地は、溢れ出る汗で透け、薄紅色の素肌を無防備に晒している。
エレノア・フォン・シルフィード「あ……っ、身体が……勝手に疼いて……っ」
レオン・ヴァルハイト「傲慢に私を追放したあの日の誇りはどこへ消えたのです、エレノア」
レオンの冷たい指先が、汗ばんだうなじから肩甲骨、そして震える背骨の溝をなぞるように這い降りた。
エレノア・フォン・シルフィード「やっ……、触れないで……っ! んぁっ、耳は……だめぇっ!」
♥背筋を電流が駆け抜けるたび、白く柔らかな太腿が擦れ合う。
じゅくり、と下着を湿らせる淫らな摩擦音が、静寂の室内に容赦なく反響した。爪を立てて床を引っ掻くが、指先に力が入らない。
レオン・ヴァルハイト「拒絶する口先とは裏腹に、蜜を溢れさせているではありませんか」
容赦なく蠢く指が、秘められた花芯の先端を薄い布越しに弾く。
エレノア・フォン・シルフィード「屈辱よ……っ、こんな、貴方なんかに……っ、あぁっ!」
声にならない嬌声が漏れ、エレノアは小さく腰を跳ねさせた。快楽の波が押し寄せるたび、かつての絶対的な立場が音を立てて崩壊していく。
プライドを保とうと血が滲むほど唇を噛み締める彼女の鼓膜を、工房の外から響く粗暴な金属音が破った。
「おい! エレノア! こんな吹き溜まりで何をコソコソやってやがる!」
第三章: 暴かれた欺瞞

工房の重い扉が、蹴破られて粉々に吹き飛んだ。
土足で踏み込んできたのは、豪奢な装飾鎧に身を包んだ大柄な赤髪の剣士、クライヴ・アルスターだった。血走った瞳をぎらつかせ、抜いた大剣を肩に担いでいる。
クライヴ・アルスター「てめぇ……レオンか!? 生きてやがったのか小細工野郎が!」
エレノア・フォン・シルフィード「クライヴ……! 助けて……私、魔力が突然枯渇して……っ」
泥水を啜るように這いつくばるエレノアを見下ろし、クライヴの分厚い唇が下卑た笑いに歪んだ。唾を吐き捨てるように、彼は冷酷な真実を告げる。
クライヴ・アルスター「力ある者が全てを手に入れる、それが摂理だ。お前の魔力を吸い上げる呪具を聖具袋に仕込んだのは俺だよ。役立たずの聖女は使い捨てだぜ!」
エレノア・フォン・シルフィード「そんな……私が築いた名声も、地位も……最初から貴方が奪うために……!?」
信じていた仲間すら、私を最初から餌としか見ていなかった。
信じていた仲間の裏切り。背信の冷たい刃が、エレノアの誇りを根底から引き裂く。茫然自失となる彼女を他所に、クライヴは下卑た濁声を張り上げた。
クライヴ・アルスター「死にぞこないの薬師ごと、ここで叩き斬って終わりだ!」
大剣が唸りを上げて振り上げられた瞬間、薄暗闇の中でレオンの瞳が青白く輝いた。
《サイレント・ペイン》
詠唱も動作もない。ただ視線を向けただけの不可視の衝撃が、空間を歪めて炸裂した。
クライヴ・アルスター「ぐ、あああっ!? 頭が……神経が引き裂かれるッ!」
巨躯が床に叩きつけられる。
脳髄を直接すり鉢で擂り潰されたかのように、赤髪の剣士は白目を剥き、七孔から血を滲ませながら無様に痙攣した。失禁の臭気がたちまち充満する。
レオン・ヴァルハイト「私の庭で騒ぐな。消えろ」
感情の籠もらぬ一言。這うようにして、汚物を撒き散らしながら工房から逃げ去るクライヴの足音が夜の闇へ消えていく。残されたエレノアは、ただ一人、世界の全てを失って冷たい床の上で震えていた。
第四章: 新たな契約
静まり返った調合室の奥、柔らかな毛皮の敷かれた寝台の上。
エレノアは震える膝を擦り、己の意思でレオンの足元へ這い寄ると、すがりつくように漆黒のローブの裾を両手で握りしめた。瞳からは大粒の涙が零れ落ち、泥と汗で汚れた頬を濡らす。
エレノア・フォン・シルフィード「レオン……お願い……。私を、見捨てないで……っ」
♥熱く湿った吐息が、彼の黒い革靴へと吹きかかる。[/Heart]
レオン・ヴァルハイト「私にひざまずくことを誇りに思え……そう言っていたのは誰でしたか」
細く強靭な指先が、エレノアの華奢な顎を強引に持ち上げた。
潤んだ碧眼の奥には、かつての傲慢な光など微塵も残っていない。そこにあるのは、底知れぬ飢渇と、目の前の男に縋りつく狂おしい熱情だけだった。
エレノア・フォン・シルフィード「私は……貴方のものよ……。身体も魔力も……全部……っ、捧げるから……あぁっ!」
乱暴に裂かれた神官服の隙間から、白く熟れた果実のような肌が剥き出しになる。太腿の内側を、熱い愛液がぬらぬらと伝い落ちていた。
レオンは冷たい微笑を浮かべると、彼女の細いうなじを引き寄せ、剥き出しの首筋へ深く熱い牙を立てるように楔を打ち込んだ。
♥「んくっ……、あ、ぁ……っ! あぁっ……!」[/Heart]
全身の神経が歓喜に狂い、火花を散らす。
激しい痙攣とともにエレノアの背が弓なりに反り、爪がレオンの背中に食い込んだ。失われたはずの魔力が、彼の熱い注ぎ込みによって濁流となって満ちていく。
レオン・ヴァルハイト「良い返事です。契約は成立しました」
耳元で囁かれた宣告が、彼女の魂に甘美な隷属の焼き印を刻みつける。
かつて全てを奪い去った男の腕の中で、元聖女は喉を鳴らし、抗うことのできない悦楽の深淵へと沈んでいく。
奪われた運命を覆す鎖は、今、二度と解けぬほど強固に結ばれた。冷酷な調薬師の腕に抱かれながら、彼女は自らを縛る主人の名を熱い呼気とともに呼び続けていた。