第一章: 硝子の靴を履いた愛玩人形
正午の渋谷。初夏の陽光がスクランブル交差点の人波を容赦なく焼き、アスファルトから立ち昇る陽炎が視界を揺らしていた。
その灼熱地獄から切り離されたかのような一角。オープンテラスのカフェに、彼女は鎮座している。
白石茉莉花。
光を吸い込んで自ら発光するかのような、ミルクティー色のウェーブヘア。肩口でふわりと揺れるその髪は、一筋の乱れもなく整えられ、清廉な乙女の像を結ぶ。身に纏うは、純白のコットンレースがあしらわれたノースリーブのワンピース。鎖骨のくぼみに溜まる汗さえ、朝露のように美しかった。
琥珀色に透き通る大きな瞳。目の前の青年を見つめ、細められる。
白石 茉莉花「来てくれてありがとうございます。えっと……タカシさん、ですよね? いつもコメントくださる」
青年の顔が朱に染まる。震える手で差し出された色紙に、茉莉花はサラサラとサインを走らせた。
だが、その完璧な「アイドル」の皮の下。彼女の肉体は、すでに悲鳴を上げている。
下腹部の奥底、誰にも触れられない聖域に埋め込まれた異物。
硬質なシリコンの塊が、恥骨の裏側へじりじりと熱を伝えていた。
(……んっ、……動いた……?)
テーブルの下、揃えられた白い膝が、微かに触れ合う。
内腿の筋肉が意思とは無関係に収縮し、蜜壺の入り口をきつく締め上げた。
通りの向かい側、雑居ビルの二階にある喫煙所。
紫煙をくゆらせながら、氷室京介はタブレット端末の画面を指先でなぞった。画面に映し出されるのは、カフェの防犯カメラ映像と、茉莉花の生体バイタルデータ。心拍数、百二十。体温、三十七度二分。
氷室 京介「笑え、茉莉花。口角が二ミリ下がっている」
インイヤーモニターから響く冷徹な指令。
茉莉花の背筋に、氷柱を突き刺されたような戦慄が走る。
京介の指が、画面上のスライダーを右へ弾いた。
瞬間。
♥《ヴヴヴヴヴッ!》[/Heart]
体内に潜む蟲が、猛烈な勢いで羽ばたき始めた。
茉莉花の視界が白く弾ける。
白石 茉莉花「……っ!」
「白石さん? どうかしましたか?」
ファンが怪訝そうに眉を寄せる。
茉莉花はテーブルの縁を握りしめた。爪の先が白くなるほど強く。
奥歯がカチリと鳴るのを、必死の笑顔で覆い隠す。
秘所の最奥で暴れ回る振動。神経の束を直接掻き乱し、脳髄を痺れさせていく暴力的な快楽。
熱い楔を打ち込まれているわけではない。ただの振動だ。なのに、どうしてこんなにも腰が砕けそうになるのか。
(見られてる……京介さんに、全部……この人にも、バレちゃう……!)
羞恥と昂りが混ざり合った粘着質な液体が、蕾から溢れ出し、太腿を伝って椅子を汚していく感覚。
白石 茉莉花「い、いえ……少し、眩しくて……ふふ」
氷室 京介「いい顔だ。瞳孔が開いているぞ。その男の手を握れ。強く、だ」
命令は絶対だ。
茉莉花は痙攣しそうになる指を伸ばし、ファンの手を両手で包み込んだ。
振動の余波が、指先を通じて相手に伝わってしまうのではないかという恐怖。
それが、ガソリンのように興奮の炎を煽る。
「は、はい! 一生応援します!」
ファンが去っていく背中を見送りながら、茉莉花はガクリと項垂れた。
額に玉のような汗が滲んでいる。
氷室 京介「休憩は終わりだ。次はレベルマックスで駅まで歩け。……つま先立ちでな」
スマホの画面が明滅する。
まだ、昼の十二時を回ったばかりだった。
第二章: 共犯の儀式
夕刻のラッシュアワー。
地下鉄のホームは、家路を急ぐサラリーマンたちの倦怠と汗の臭いで満ちていた。
茉莉花はその濁流の中、吊革に掴まり必死に耐えている。
ワンピースの下、彼女は下着を身につけていない。
氷室 京介「右斜め後ろ、グレーのスーツの男。お前を見ているぞ」
イヤホン越しの京介の声。唯一の命綱であり、同時に首を絞める鎖。
(やだ……そんな目で見ないで……わかっちゃう……)
男の視線が、ワンピースの薄い生地を通して、無防備な双丘の輪郭を舐め回すように這う。
電車が揺れるたび、太腿同士が擦れ合い、愛液がヌルリと音を立てるような錯覚に陥る。
実際には、蜜はすでに膝裏まで達し、ハイソックスのゴムに吸われているかもしれない。
♥《ンンッ……!》[/Heart]
体内のおもちゃが、不規則なリズムで跳ねた。
京介が「ランダムモード」に切り替えたのだ。
氷室 京介「声を出すな。誰かに気づかれたら、この場でその服を脱がせる」
茉莉花は唇を噛み締め、涙目で虚空を睨んだ。
恐怖。なのに、深淵からの疼きは止まらない。
満員電車という密室、無数の他人との接触、そして遠隔地から自分を操る京介の存在。
自分が「人間」ではなく、彼のリモコン一つで快楽を貪る「肉人形」に過ぎないという事実。それが、脳を溶かすほどの安心感を与えていた。
帰宅後、息つく暇もなく京介からの指示が飛ぶ。
「ライブ配信を始めろ」
茉莉花は自室のリングライトを点灯させ、スマホをセットした。
画面上の彼女は、清楚なパジャマ姿の天使だ。
だが、机の下では、両足を開き、京介の送ってくる信号に翻弄されている。
白石 茉莉花「みなさーん、こんばんはぁ。茉莉花ですっ♡ 今日はどんな一日でしたか?」
コメント欄が滝のように流れる。
『茉莉花ちゃん今日も天使!』
『肌めっちゃ綺麗』
『なんか今日、顔赤くない? 風邪?』
氷室 京介「赤くない?』のコメントを拾え。そして、もっと腰を振れ」
茉莉花は画面の向こうの京介と、何千人もの視聴者の視線を同時に浴びながら、浅い呼吸を繰り返す。
見えない楔が、敏感な突起を執拗に擦り上げる。
白石 茉莉花「ふふ……ちょっと、お部屋が暑くて……。みなさんの熱気のせいかなぁ……?」
甘ったるい声。
だが、その実態は、限界寸前の喘ぎを必死に糖衣で包んだものだ。
机の下で、彼女の手は秘所に伸びていた。
パジャマのズボンの上から、濡れた割れ目を押しつぶすように弄る。
氷室 京介「キーワードだ。『私の秘密の場所、ドキドキしてるの』と言え」
これは公開処刑だ。
そして、二人だけの秘密の儀式。
白石 茉莉花「あのね、みんな……私の……秘密の場所、すっごく……ドキドキしてるの……っ♥」
イッちゃダメ……まだ、ダメぇ!
脳内で叫びながら、茉莉花の瞳は焦点が合わず、とろりと濁った。
その時だった。
配信画面のコメント欄に、異質な文字列が流れたのは。
『User: Ren_K > 京介ってやつのオモチャ、感度良すぎじゃね?』
茉莉花の笑顔が凍りついた。
第三章: 第三の目
翌日、茉莉花は大学の図書館にいた。
静謐な空気。古書の匂い。
ページをめくる音だけが響く空間で、彼女は震える手でスマホを握りしめていた。
昨夜のアカウント『Ren_K』からのDM。
『あんたの中に入ってるやつのIDとパス、特定したわ』
氷室 京介「無視しろ。ただの愉快犯だ。セキュリティは万全だ」
京介の声には珍しく焦燥が混じっていた。
だが、次の瞬間。
警告:外部からの強制アクセスを検知。制御権限が移行されました。
京介のタブレットがブラックアウトする。
図書館の静けさの中、茉莉花の体内が、予期せぬリズムで脈打った。
♥《ズンッ! ズズズッ……!》[/Heart]
これまでの京介の、計算された洗練された攻めとは違う。
荒々しく、暴力的で、まるで子供が新しい玩具を壊そうとするかのような、不規則な振動。
白石 茉莉花「ひっ……!」
声が漏れる。
隣の席の学生が、怪訝な顔でこちらを見た。
(違う、これは京介さんじゃない……誰? 誰が私を触ってるの!?)
見えない手が、内側から内壁を抉るように暴れ回る。
茉莉花は机に突っ伏し、必死に太腿を擦り合わせた。
恐怖で縮み上がるはずの蕾が、未知の侵入者に対して、いやらしく涎を垂らして歓迎している。
京介以外の誰かに支配される。
その背徳感が、茉莉花の理性の堤防を決壊させた。
スマホに新たなメッセージが表示される。
『Ren_K: ほら、声出しちゃダメだろ? もっとイイ顔してよ、茉莉花ちゃん』
どこかで見ている。
この図書館のどこかに、彼がいる。
あるいは、ハッキングされたスマホのカメラを通じて、全世界に見られているのかもしれない。
茉莉花の背中が弓なりに反った。
濡れた下着が肌に張り付き、冷たいエアコンの風が汗ばんだ首筋を撫でる。
「見られているかもしれない」という曖昧な恐怖が、これまでのどんなプレイよりも鮮烈なスパイスとなって、脳髄を焼き尽くしていく。
白石 茉莉花「あ……うぅ……っ……♥」
机の下で、彼女は自分のスカートを捲り上げた。
誰に見られてもいい。
いや、誰かに見てほしい。
この異常な事態を、私の壊れた姿を。
その時、書架の影から、大きめのパーカーを着た猫背の少年が姿を現した。
死んだ魚のような目が、ギラリと光を宿して茉莉花を射抜く。
神楽坂 レン「……へえ。実物はもっとエグいな」
第四章: 崩壊と選択
深夜二時、廃公園。
錆びついたブランコが風に吹かれて軋んだ音を立てる。
街灯の頼りない明かりの下、三つの影が対峙していた。
京介は、苦虫を噛み潰したような顔で立っている。その横には、勝ち誇ったような笑みを浮かべるレン。
そして、その二人の前で、茉莉花は泥に汚れた膝を地面についていた。
トレンチコートの下は、全裸だ。
神楽坂 レン「さて、プロデューサーさん。あんたの大事な商品、俺がバラしちゃってもいいんだけど?」
レンはスマホを弄びながら、京介を挑発する。
画面には、茉莉花の恥ずべきデータが満載されたフォルダが表示されていた。
氷室 京介「……条件はなんだ」
神楽坂 レン「単純だよ。俺の前で、彼女の本性を見せてくれよ。あんたの命令でさ」
京介の冷徹な瞳が、足元の茉莉花を見下ろす。
そこに慈悲の色はない。あるのは、所有物としての価値を測る計算だけだ。
氷室 京介「茉莉花。コートを開け」
白石 茉莉花「京介、さん……?」
氷室 京介「聞こえないのか。脱いで、彼に懇願しろ。『私を見てください』と」
茉莉花の心臓が早鐘を打つ。
一番信頼していた主人からの、裏切りにも似た命令。
だが、拒絶の言葉は喉で詰まり、代わりに熱い吐息となって漏れた。
見捨てられる恐怖。
そして、それを上回るほどの、新たな「観客」を得た興奮。
震える指が、コートのボタンに掛かる。
一つ、また一つ。
夜風が、火照りきった胸の膨らみを、平らな腹部を、そして未だに微振動を続ける秘部を撫でていく。
白石 茉莉花「ぁ……あぁ……」
コートが地面に落ちた。
月光の下、白磁のような裸体が晒される。
レンが息を呑む気配がした。スマホのレンズが、貪るように彼女を捉える。
白石 茉莉花「みて……ください……私を……好きなように、して……っ♥」
涙が頬を伝う。それは悲しみの涙ではない。
自分が「被害者」ではなく、この異常な露出狂の舞台を誰よりも望んでいる「怪物」であることを自覚した、歓喜と絶望の涙だった。
見てぇぇぇ!! 私の中身を、全部ぅぅぅ!!
茉莉花は自らの手で胸を鷲掴みにし、獣のように吠えた。
理性の糸が完全に焼き切れ、白目を剥きながら、二人の男の前で激しく痙攣し、絶頂へと堕ちていく。
その姿を見つめる京介の瞳に、初めて「執着」という名の暗い炎が宿った。
第五章: 堕ちた先の楽園
数ヶ月後。
都内某所のスタジオ。
フラッシュの嵐の中、白石茉莉花はカメラに向かって微笑んでいた。
白石 茉莉花「みなさんに、秘密のプレゼントです……♡」
その笑顔は、以前よりも遥かに妖艶で、見る者の魂を吸い取るような魔力を帯びていた。
スタジオの隅、モニター席には二人の男がいる。
氷室 京介「角度が甘い。レン、ドローンの位置を修正しろ」
神楽坂 レン「へいへい。うるせーな、わかってるよ」
レンは新たな技術スタッフとしてチームに加わっていた。
京介の完璧な演出と、レンの変態的なカメラワーク。
二つの才能が、茉莉花という素材を極限まで調理していた。
きらびやかなアイドルの衣装の下で、茉莉花の身体には、さらに進化した玩具が装着されている。
二人の男が持つそれぞれのデバイスから、同時に信号が送られる。
支配と監視。二重の檻。
「はい、カット! 最高だ!」
スタッフの声と共に照明が落ちる。
闇の中で、茉莉花は膝を震わせながら、モニター席の二人を見つめた。
(もっと……もっと私を壊して。二人の視線で、私をドロドロに溶かして……)
彼女はもう、硝子の靴を履いたシンデレラではない。
自ら靴を割り、その破片で足を傷つけながら踊り続ける、幸福な愛玩人形だった。
白石 茉莉花「ふふ……次の命令は、なんですか?」
とろけるような笑顔。
レンズの向こう側の世界さえも嘲笑うかのように、美しく歪んでいた。