[Sensual]
視界を黒漆塗りの皮が覆う。耳孔には硬質なシリコンがねじ込まれ、世界のすべての輪郭が奪われていた。
冷たい地下室の淀んだ空気が、むき出しの肌を撫でる。
琴音の細い背中は、重厚なビロードの寝椅子に沈み込む。純白のアンティークドレスは無数のレースと骨組みで構成され、あばらを容赦なく締め上げていた。腰まで伸びた濡羽色の髪は乱れ、暗赤色のシーツの上にぬめりと広がる。
無音。無明。
ただ、己の狂ったように跳ねる心拍だけが、内耳の奥で[Pulse]ドクン、ドクン[/Pulse]と反響している。
虚ろで光を宿さない黒瞳は、目隠しの下で宛てなく泳ぐ。
微かに、空間の湿度が変わった。
上質な葉巻の煙と、冷たい白檀の香り。
空気が重く沈み込む気配に、琴音の全身の産毛が一斉に逆立つ。
[Think]お父様……。[/Think]
声には出せない。唇は微かに開いたまま、酸素を求めて痙攣している。
不意に、極上のシルクを思わせる冷たい指先が、ドレスの襟元に触れた。
[Tremble]ヒッ……[/Tremble]と、喉の奥で引きつった音が鳴る。
仕立ての完璧なダークスーツが擦れる衣擦れすら、今の琴音には聞こえない。ただ、指先の温度だけが唯一の世界の真理として、未発達で柔らかな双丘の起伏をなぞり始めた。
[Heart]ドクン[/Heart]
布越しに押し潰される感触。指の腹が、ドレスの緻密な刺繍を越えて敏感な先端を捏ね上げる。
[A:白鐘 琴音:興奮]「あっ……ぁ……」[/A]
獣のような甘く濁った吐息が、勝手に唇からこぼれ落ちる。
指先は冷酷なほどゆっくりと腹部を下り、窮屈なコルセットの隙間から太ももの内側へと侵入していく。
布ずれの痛痒さと、じわじわと広がる熱。
視覚と聴覚という防波堤を失った神経は、触覚からの暴力的な情報量に耐えきれず、脳髄を白濁した泥へ変えていく。
抗うことなどできない。この冷たい指に弄ばれるためだけに、自分は呼吸を許されている。
[Pulse]ドクン、ドクン、ドクン[/Pulse]
[/Sensual]
[Impact]ガンッ!!![/Impact]
鼓膜を突き破るような、無作法で暴力的な振動。
決して開くはずのない地下室の重厚な扉が、外側から乱暴に叩き壊されようとしている。
びくりと琴音の体が跳ねる。寝椅子に縛り付けられた手首の革帯が食い込み、擦過傷から微かに鉄の匂いが滲んだ。

網膜を、暴力的な白光が焼き切る。
無理やり目隠しを引き剥がされ、視界に飛び込んできたのは、窓から射し込む真昼の太陽。
光を極端に排したこの屋敷で、決して許されない外界の暴力。
[A:白鐘 琴音:恐怖]「……っ、あ……」[/A]
眩しさに顔を歪める琴音の前に、一人の青年が息を切らして立っていた。
明るい茶髪、活動的なカジュアルジャケット。健康的な肌の色と、真っ直ぐで不躾な瞳。
蒼一郎とは対極にある、生々しい「陽」の存在。
[A:九条 朔夜:興奮]「こんなの異常だ!俺が君を外の世界へ連れ出してやる!」[/A]
耳栓を抜き取られた鼓膜に、見知らぬ他者の声が直接突き刺さる。
[Glitch]異常? 外の世界? 連れ出す?[/Glitch]
言葉の意味が理解できない。いや、理解することを脳が全力で拒絶している。
外界の風の匂い。土埃と、青臭い草の匂い。
琴音の肺が、内側から激しく軋みを上げた。
呼吸の仕方がわからない。喉が干からび、胃袋の底から酸っぱい嘔吐感がせり上がってくる。
[Tremble]お父様の、匂いが、消えてしまう。[/Tremble]
自分を人間として扱う、青年の同情に満ちた眼差し。それが強固な共依存の殻に微かな亀裂を入れた。外の光を浴びた肌が、まるで硫酸をかけられたように焼けるように痛い。
父の掟を破った。見知らぬ男をこの箱庭に入れてしまった。
心臓を鷲掴みにされるような罪悪感に、琴音は冷たい石の床に爪を立てて嘔吐く。
[A:白鐘 蒼一郎:冷静]「おや、迷い犬が私のかわいい小鳥に噛みつこうとしているのかな?」[/A]
[Flash]ピタリ、と。[/Flash]
空間の温度が絶対零度に凍りついた。
扉の影。逆光の中に立つ、長身のシルエット。
銀縁眼鏡の奥で、氷のように冷たく底知れない執着を秘めた鋭い眼光が、冷徹に二人を見下ろしている。

[Sensual]
鈍い打撃音と、肉が床に叩きつけられる音。
[A:九条 朔夜:恐怖]「ぐあっ……!」[/A]
朔夜は頑丈なオーク材の椅子に縛り付けられ、両目を無理やり見開かされる器具を装着されていた。彼の口からは血が滴り、明るい茶髪は汗と泥で無惨に汚れている。
[A:白鐘 蒼一郎:狂気]「琴音。お前は私がいなければ息をすることさえできない。それでいい」[/A]
[Whisper]ビリィッ!!![/Whisper]
鼓膜を劈く破擦音。
蒼一郎の手が容赦なく純白のアンティークドレスの胸元を掴み、左右に引き裂いた。
ボタンが弾け飛び、透き通るような病的な白い肌と、未発達ながらも柔らかな双丘が、冷たい地下室の空気に晒される。
[A:白鐘 琴音:恐怖]「あ……っ、お父様……いや、見ないで……!」[/A]
朔夜の眼前。
救い主を自称した青年の視線が、己の辱められる肉体に突き刺さる。
見知らぬ他者の目が這い回る感触に、琴音の虚ろな黒瞳の端に朱色が滲む。
蒼一郎の冷たい指が、ドレスの残骸を掻き分け、太ももの内側を這い上がってきた。
[A:九条 朔夜:怒り]「やめろぉぉぉっ!!狂ってる!あんたどうかしてるぞ!!」[/A]
青年の絶叫が響く中、蒼一郎は微塵も表情を変えない。
ただ、極上のワインを品定めするような冷徹な指先が、琴音の最も秘められた柔らかな花弁へと滑り込んだ。
[A:白鐘 琴音:興奮][Tremble]「ひぐっ……ぁ……あぁっ!」[/Tremble][/A]
指の腹が、濡れそぼった熱い洞窟の入り口をゆっくりと押し広げる。
そして、隠された敏感な突起を、爪の先で弾いた。
[Flash]バチィッ!![/Flash]
琴音の背中が、弓なりに跳ね上がる。
脳髄を直接かき混ぜられるような、言語を超越した快感のうねり。
他者に見られているという圧倒的な羞恥と、父から下される罰という劇薬。
[A:白鐘 蒼一郎:狂気][Whisper]「外の世界を望んだ罰だね」[/Whisper][/A]
耳元で囁かれる重低音。
[A:白鐘 琴音:興奮]「ちが、違いますっ……私は、お父様の……ああっ!!」[/A]
否定の言葉は、熱を持った指の動きによって容易く甘い嬌声へと塗り替えられる。
指先が深く、重く、柔らかな蜜壺の最奥を抉り抜く。
引き抜かれるたびに、透明な蜜が銀の糸を引いて床に滴り落ちた。
[Heart]ドクン、ドクン、ドクン。[/Heart]
倫理の防波堤が決壊する音が聞こえる。
朔夜の前で快楽に溺れる肉体。制御不能な痙攣が止まらず、口角からはだらしない涎が垂れ流れた。
[Blur]視界が激しく明滅する。[/Blur]
青年の顔が歪む。正義感が打ち砕かれ、信じていたものが目の前で汚泥に沈んでいく光景。
朔夜の瞳から光が完全に消え失せ、濁った涙が頬を伝い落ちた。
その瞬間。
琴音の脊髄を、破滅的な歓喜が駆け抜けた。
[A:白鐘 琴音:狂気]「あ……あはっ、お父様ぁっ……!も、もっとぉ……!」[/A]
狂い咲くように腰を振り、自らその指を奥へと迎え入れる。
二度と戻れない。
ただ、この冷たい指先で脳髄を焼き尽くされることだけが、唯一の真理。
[/Sensual]
◇◇◇
静寂。
完全に心が折れ、抜け殻のようになった朔夜は、すでに屋敷から排除されている。
冷たいコンクリートの地下室には、強い鉄の匂いと、噎せ返るような男女の熱の残り香だけが沈殿していた。
蒼一郎の三つ揃いのダークスーツには、微かに赤黒い飛沫が飛んでいる。
彼はゆっくりと歩み寄り、血の滲むような力強さで琴音の華奢な体を抱き寄せた。
[Sensual]
[A:白鐘 琴音:興奮]「……っ、あ……」[/A]
父の匂い。白檀と葉巻、そして微かな鉄の錆びた匂い。
琴音は震える手を伸ばし、床に落ちていた黒漆塗りの目隠しを拾い上げた。
自分の意志などいらない。外の光も、他者の声も、もう永遠に必要ない。
自らの手で、その皮を再び両目に被せる。
視界が完全に閉ざされ、世界が父の吐息の温度だけに塗り潰された。
[A:白鐘 蒼一郎:愛情]「いい子だ。お前は一生、私の腕の中でしか生きられない」[/A]
冷たい唇が、琴音の耳の裏に落ちる。
泥水のように濁った共依存の底。鳥籠の鍵は、もう二度と見つからない。
暗闇の中、琴音の唇が微かな震えを伴って、歪に弧を描いた。
[A:白鐘 琴音:愛情]「お父様……私を一生、壊し続けてください」[/A]
狂信に染まった純白の肉塊は、己の神の胸に顔を埋める。
冷たい石畳の底で、二つの影は永久に溶け合い、形を失っていった。
[/Sensual]