第一章: 硝子の雨と見えざる指
酸性雨が叩きつける、都市の強化ガラス。
錆びた鉄の臭気。排気口からモノレール車内へと這い寄る不快な名残。
切り揃えられた銀色のショートヘアから、微細な雨滴が滑り落ちる。
仕立ての良い黒のタイトな制服。彼女の身体の曲線を、一糸の乱れもなく覆い尽くしていた。
窓ガラスに反射するレイナの瞳。すべてを凍らせた氷のような青色。
完璧なる統制局エリート監査官の姿。
無表情な市民たちが隙間なくすし詰めになる車内。彼女の鼓動は正確なメトロノームのように刻まれている。
突然、左耳のイヤーカフ型通信機に[Glitch]高周波ノイズ[/Glitch]が走った。
[Sensual]
[Whisper][A:カイル:冷静]「聞こえるか、裏切り者」[/A][/Whisper]
首筋の産毛が一斉に逆立つ。六年前に消去したはずの、ぶっきらぼうで低い声。
[Think]ありえない。中央システムは完璧なはず。[/Think]
レイナの喉仏が微かに上下する。
周囲には無数の監視ドローン。赤い光帯を明滅させ、市民の網膜をスキャンし続けている。
[Whisper][A:カイル:冷静]「今から、制服の一番上のボタンを外せ」[/A][/Whisper]
[A:レイナ:驚き]「……何を」[/A]
[Whisper][A:カイル:怒り]「逆らえば、お前が過去に犯した横領とデータ改ざんの証拠を統制局にぶちまける。三秒だ。三、二——」[/A][/Whisper]
[Pulse]ドクン[/Pulse]、と心臓が跳ね上がる。
[Tremble]震える指先[/Tremble]が、硬い金属ボタンに触れる。冷え切った指先とは裏腹に、カラカラに渇ききった喉の奥。
カチャリ。
小さな音とともに外気に晒された、白い喉元。
[Whisper][A:カイル:興奮]「いい子だ。次は二つ目だ。……肌を見せろ」[/A][/Whisper]
無機質な視線の海の中、姿なき声による完全な支配。背骨を這い上がるような異常な恐怖。
それなのに。
凍てついていた彼女の奥底——太ももの内側に、[Heart]微かな熱がじんわりと灯り始める。[/Heart]
[/Sensual]
[Impact]彼は、本気で自分を壊そうとしている。[/Impact]
◇◇◇
第二章: 静寂の執務室と甘い地獄
静寂が支配する統制局の執務室。
空気清浄機が吐き出す無臭の風が、レイナの銀髪を微かに揺らす。
数列向こうのデスク。プラチナブロンドを完璧に撫でつけた長官アーサーが立ち上がる。
冷たい光を放ちながらフロアを走査していく、左目の拡張義眼。
淹れたての人工コーヒーの香ばしい匂いが、彼の通り過ぎた軌跡に漂っていた。
[Sensual]
[Whisper][A:カイル:冷静]「右手を、机の下に入れろ」[/A][/Whisper]
耳元で囁く低い声。ほんの少しだけ、レイナの呼吸が浅くなる。
昨夜、自室のベッドで無理やり仕込まれた小型の振動機器。
それが今、黒の制服スカートの奥、薄い布の向こう側で冷たく息を潜めている。
[Whisper][A:カイル:狂気]「その指で、直接触れろ。声を上げれば、社会的な死だぞ」[/A][/Whisper]
[Think]できない。アーサー長官がすぐそこに——[/Think]
[Whisper][A:カイル:興奮]「やれ」[/A][/Whisper]
[Tremble]指先が、スカートの裾をめくり上げる。[/Tremble]
冷や汗が背筋を伝い落ちる。隣のデスクでは同僚がキーボードを叩く乾いた音。
レイナの中指が、自らの敏感な花芯に触れた。
[A:レイナ:照れ]「……っ」[/A]
[Whisper][A:カイル:愛情]「そうだ。俺の声を思い出しながら、そこを擦れ。もっと強く」[/A][/Whisper]
[Pulse]ドク、ドク、ドク。[/Pulse]
[Heart]指先から伝わる粘ついた熱が、脳髄を痺れさせる。[/Heart]
クチュリ。微かな水音が机の下で鳴る。
カイルへの果てしない罪悪感と、抗えない快感。
氷のような青い瞳の奥で、強固な理性の殻がひび割れ、ドロドロに溶け出していく。
太ももがガクガクと痙攣し、口角がだらしなく引きつる。
[/Sensual]
[A:アーサー:冷静]「レイナ監視官。顔色が優れないようですね」[/A]
真横から降ってきた無機質な声。
[Impact]アーサーの義眼が、レイナを真っ直ぐに射抜いていた。[/Impact]
◇◇◇
第三章: 暴かれるログと星の記憶
[A:レイナ:冷静]「問題ありません。少し、気圧の変化による眩暈が起きただけです」[/A]
氷の仮面を貼り付け、モニターから目を逸らさずに答えるレイナ。
[A:アーサー:冷静]「……そうですか。最近、第一階層のネットワークにノイズが混じっている。システムは絶対です。異常な通信ログは徹底的に洗い出しなさい」[/A]
翻る純白のスーツ。
アーサーの足音が遠ざかるのを見送り、レイナは奥歯を強く噛み締める。
口の中に広がる、微かな血の鉄の味。
[Sensual]
深夜の自室。
防音されたシャワールームの冷たいタイルに背中を預け、レイナは熱い湯を浴び続けている。
[Whisper][A:カイル:冷静]「アーサーが動き出した。俺の潜伏先が割れるのも時間の問題だ」[/A][/Whisper]
イヤーカフから響く声は、どこか穏やかだった。
[A:レイナ:絶望]「なぜ、こんなことを。私への復讐なら、私だけを殺せばいい」[/A]
[Whisper][A:カイル:悲しみ]「お前の仮面を引き剥がすためだ。システムに魂を売ったお前を、俺が壊して、もう一度人間に戻す」[/A][/Whisper]
彼の真の目的は、単なる復讐ではない。
[Flash]中央システムを破壊し、市民を抑圧から解放すること。[/Flash]
かつて彼女が見捨てた男。ボロボロのレザージャケットの奥に、深く歪んだ愛と自己犠牲を隠し持っていた。
[Think]カイル。私の、カイル。[/Think]
熱いシャワーの湯と混ざり合い、視界が[Blur]ぼやけて[/Blur]いく。
自らの手で首筋から胸へと這わせる彼女。彼の手の感触を思い出しながら。
物理的に分断されたまま、見えない電波の海で互いの魂を求め合い、激しくすれ違っていく二人。
[/Sensual]
[Impact]突然、部屋の照明が赤く明滅を始めた。[/Impact]
[System]警告。統制局強制捜査部隊が地下廃棄区画へ展開中。[/System]
アーサーの包囲網。カイルの喉元に迫っている。
◇◇◇
第四章: 硝子の箱と最後の指令
中央幹部会議室。
壁も床もすべてが強化ガラスで覆われた、透明な鳥籠。
円卓を囲む冷徹な幹部たちの上空には、無数の監視カメラが蜘蛛の目玉のように光を放つ。
レイナは手元の端末を操作し、偽の暗号キーを統制局の追跡システムに流し込んだ。
自らを囮にして稼ぐ、カイルのハッキング完了までの時間。
[Sensual]
[Whisper][A:カイル:狂気]「馬鹿野郎、誰がそんな真似をしろと言った!」[/A][/Whisper]
イヤーカフが[Tremble]激しく振動[/Tremble]する。
[A:レイナ:愛情]「システムは絶対です。でも、私の魂はもう、あなただけのもの」[/A]
小さな声で呟く彼女の唇の端が、初めて柔らかく綻ぶ。
[Pulse]沈黙。[/Pulse]
そして、耳の奥で深く息を吸い込む音がした。
[Whisper][A:カイル:興奮]「……わかった。なら、お前のすべてを、システムではなく俺に捧げろ」[/A][/Whisper]
[Whisper][A:カイル:狂気]「会議中だろうが関係ない。今すぐ、その指を最奥まで沈めろ」[/A][/Whisper]
幹部たちが予算削減の議論を交わす中。
レイナは黒いスカートの布地越しに、自らの愛のボタンへと指を押し当てる。
[Whisper][A:カイル:愛情]「もっとだ。カメラの死角で、俺のためだけに濡れろ」[/A][/Whisper]
[Heart]ドクン、ドクン。[/Heart]
指先が薄い下着を掻き分け、熱を帯びた濡れた蜜壺へと侵入する。
ヌプ、という卑猥な水音。彼女自身の耳にだけやけに大きく響く。
[Think]見られる。誰かに、見られてしまう。[/Think]
極度の羞恥と恐怖。それすらもが強烈なスパイスとなり、レイナの背中が弓なりに反り返る。
足の指がヒールの中でギュッと縮こまる。
[/Sensual]
[A:アーサー:冷静]「レイナ監査官。先ほどのデータ推移について説明を」[/A]
アーサーの声が会議室に響く。
[Tremble][A:レイナ:驚き]「っ……は、はい……」[/A][/Tremble]
立ち上がった彼女の太もも。
[Impact]一筋の透明な蜜が伝い落ちた。[/Impact]
◇◇◇
第五章: 星空と、君の聲による処刑
[Sensual]
[A:レイナ:冷静]「該当区画における、市民の……っ、行動指数は、安定を維持して……」[/A]
[Whisper][A:カイル:興奮]「そのまま説明を続けろ。指は動かしたままだ。……そうだ、そのリズムだ」[/A][/Whisper]
説明を続ける彼女の額には、玉のような汗が浮かぶ。
机の陰に隠れた左手。カイルの吐息と声だけを道標にして、自らの柔肉を激しくかき回している。
クチュ、グチュ。
粘膜が擦れる音。理性の防波堤を粉々に砕いていく。
[Shout]限界だ。もう、頭がおかしくなる——![/Shout]
[Whisper][A:カイル:愛情]「レイナ。俺はお前を、愛してる」[/A][/Whisper]
その言葉が耳の奥を貫いた瞬間。
[Pulse]視界が真っ白に弾けた。[/Pulse]
[A:レイナ:絶望]「ああっ、ああっ、だめ、壊れる、真っ白になる……!」[/A]
声なき絶叫。
膝の力が抜け、彼女はガラス張りの床に崩れ落ちる。
白目を剥き、唇からはだらしなく涎がこぼれ落ちた。
全身の筋肉が激しく痙攣し、大量の白き熱が太ももを濡らして床へと滴り落ちる。
ビクッ、ビクンッ、と止まらない震え。
隠し持っていた抑圧が完全に崩壊し、熱い涙が氷の瞳からとめどなく溢れ出す。
完璧なエリート監査官の、完全なる社会的な死の瞬間。
[/Sensual]
[Flash]直後、都市全土を揺るがす轟音が鳴り響いた。[/Flash]
[System]致命的なエラーが発生。中央統制システム、強制シャットダウンへ移行します。[/System]
アーサーの義眼から光が消え、無数のドローンが次々と墜落していく。
都市を覆っていた分厚い灰色の雲。
[Glitch]巨大なプログラムの崩壊[/Glitch]とともにひび割れる。
停電により完全な暗闇に包まれた会議室。
[FadeIn]割れた雲の隙間から、圧倒的に美しい星明かりが降り注いだ。[/FadeIn]
ガラスの床に横たわるレイナの火照った頬を、冷たく澄んだ夜気が撫でる。
[Whisper][A:カイル:愛情]「……夜空だ。綺麗だろ」[/A][/Whisper]
通信機から響く掠れた声に、レイナは静かに微笑む。
すべてを失った。もう元には戻れない。
だが、胸の奥を満たすのは、狂おしいほどの自由と清冽な愛の余韻。
降るような星空を見上げながら、彼女はそっと目を閉じる。