シャンデリアの眩い光が、分厚いガラス越しに歪む。王都の夜会。ざわめきと、香水と酒の匂いが混ざり合い、空気を重く淀ませていた。
リアナは冷たい石壁に身を潜め、震える指で質素な紺碧のドレスの裾を握りしめる。色素の薄い銀髪が夜風に揺れ、アメジストの瞳は薄暗いバルコニーの奥を凝視していた。
[Think]私が我慢すれば、いつかきっと報われる。そう信じて、あの人の出世のために薬草をすり潰し、手が荒れるまで尽くしてきたのに。[/Think]
[Tremble]彼女の目に飛び込んできたのは、月明かりの下で生々しく蠢く二つの影だった。[/Tremble]
白銀の騎士の甲冑――過剰なまでに装飾されたそれは、間違いなく婚約者アルベルのもの。しかし、その腕に抱かれているのはリアナではない。
燃えるような赤い髪。豊満な肉体を惜しげもなく晒す真紅のドレス。公爵令嬢セリアだ。
[A:セリア:興奮]「ああっ……アルベル、激しいのね。もっと、奥まで……」[/A]
[A:アルベル:興奮]「セリア様……あなたの熟れた果実、たまらないほど甘い」[/A]
[Impact]ぐちゃり、と。[/Impact]
水溜まりを踏み躙るような卑猥な水音が、静寂のバルコニーに響き渡る。セリアの真紅のドレスがたくし上げられ、アルベルの指がその奥深くで乱暴に暴れているのが、影の形から鮮明に読み取れた。
[A:セリア:冷静]「ねえ、あの貧乏くさい小娘はどうするの? いつまでもあなたの隣にいるのは、目障りだわ」[/A]
[A:アルベル:冷静]「貧乏貴族の娘など、出世までのただの暇つぶしさ。君のためを思って言っているんだよ、セリア。僕が欲しいのは、君だけだ」[/A]
[Pulse]ドクン、ドクン、ドクン。[/Pulse]
胸の奥で、何かが決定的に砕け散った。
肺から酸素が奪われ、喉の奥から鉄の味が込み上げる。
[Shout]嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ![/Shout]
声を出すことすらできず、リアナは後ずさる。足がもつれ、冷たい石畳に膝を打ち付けた。鋭い痛みが走るが、それ以上に胸を切り裂く刃の冷たさが全身を支配している。
[Blur]視界が滲む。ポロポロと零れ落ちた涙が、紺碧のドレスにどす黒い染みを作っていく。[/Blur]
逃げなければ。ここから、一秒でも早く。
よろめきながら暗い廊下へと駆け出したリアナは、角を曲がった瞬間、分厚い闇の塊に激突した。
「……っ!」
微かな悲鳴を上げる前に、強靭な腕が彼女の細い腰を捕らえ、逃げ場のない壁際へと縫い留める。
[FadeIn]闇の中から浮かび上がったのは、氷のように冷たい青い瞳。[/FadeIn]
仕立ての完璧な、黒を基調とした夜会服。隙のない所作から放たれる圧倒的な威圧感。
王都の頂点に君臨する男、ルキウス公爵。
[A:ルキウス:冷静]「ひどい顔だ。だが……泣き顔が一番美しい。もっと私を愉しませろ」[/A]
[A:リアナ:恐怖]「は、離して……ください……っ」[/A]
[Sensual]
ルキウスの手袋越しの指が、リアナの涙で濡れた頬をなぞり、そのまま震える唇を塞いだ。
「んんっ……!」
抗う暇もなく、鉄と血の匂いが混じる冷たい香りがリアナの鼻腔を侵食する。
[A:ルキウス:興奮]「私に身を委ねれば、あの二人を地獄に落としてやろう」[/A]
低く、骨の髄まで響くような囁き。[Heart]耳の裏を掠める声に、リアナの背筋をゾクゾクと甘い痺れが駆け上がる。[/Heart]
「だ、め……です。私は……」
[A:ルキウス:狂気]「裏切られた女が、今さら何を惜しむ? お前の純潔は、今夜ここで私が汚し尽くしてやる」[/A]
ルキウスの手が紺碧のドレスの背中を無造作に掴む。
[Impact]ビリッ![/Impact]
耳障りな裂帛の音と共に、白磁のような背中が冷たい空気に晒された。
「ひっ……!」
剥き出しになった肩甲骨からうなじにかけて、ルキウスの熱い唇が這い、鋭い歯が肌を甘噛みする。
[Tremble]アルベルに一度も触れられたことのない肌が、見知らぬ男の蹂躙によって不気味な熱を持ち始めていた。[/Tremble]
ルキウスの大きな手が、ひび割れたドレスの胸元から震える肌へと滑り込む。冷たい指先が、柔らかな膨らみの先端、未だ誰も知らなかった小さな蕾を的確に捉え、無慈悲に転がした。
「あっ、ああっ……やめっ……」
[A:ルキウス:冷静]「やめろと言いながら、ずいぶんと素直に反応するじゃないか。ここも、もう濡れそぼっている」[/A]
もう片方の手が太ももの内側を撫で上げ、下着の布越しに熱を帯びた粘膜の入り口を押し潰す。
[Pulse]ドクンッ![/Pulse]
[Flash]視界の端が明滅し、火花が散る。[/Flash]
経験したことのない強烈な電流が、秘奥から脊髄を駆け上がった。
リアナの喉から、自分でも聞いたことのない甘い吐息と、とめどない蜜が溢れ出す。
[A:リアナ:絶望]「あああっ! だ、め……おかしくっ、なってしまいます……!」[/A]
[Whisper]「おかしくなれ。お前のすべてを、私の色に染め上げてやる」[/Whisper]
快感に思考をドロドロに溶かされ、リアナの腕は、抗うどころか自らルキウスの広い背中に縋り付いていた。
理性が完全に崩壊し、後戻りできない夜の契約が結ばれた瞬間だった。
[/Sensual]

豪奢な天蓋ベッドに、乱れた絹のシーツが波打っている。
ルキウスの屋敷の奥深く。外の光すら届かない密室で、リアナは毎夜、彼からの執拗で徹底的な調教を受け続けていた。
[Sensual]
「ああっ……ルキウス様……もっと、もっと……っ!」
色素の薄い銀髪は汗に濡れて首筋に張り付き、アメジストの瞳は快楽の泥濘に沈み切って焦点が合っていない。
[A:ルキウス:狂気]「誰のモノだ、リアナ。お前のその卑しい蜜壺は、誰のために泣いている?」[/A]
[A:リアナ:興奮]「ルキウス様の……! ルキウス様だけのものです……っ! ああっ、奥、奥まで……満たしてくださいっ!」[/A]
ルキウスの容赦のない熱の楔が、リアナの濡れそぼった柔らかな花弁をこじ開け、最も深い最奥を、狂おしいほど激しく突き上げた。
[Flash]視界が真っ白に弾け、脳髄が焼き切れる。[/Flash]
「ああっ、ああああっ!! ひぃっ、こわ、れるぅ……っ!」
リアナの身体が弓なりに反り返り、絶頂の波が幾重にも押し寄せる。ルキウスは獣のようにリアナの白磁の首筋に牙を立て、自らの所有印(マーキング)を深く、赤黒く刻み込んだ。
[Pulse]ドクン、ドクンと、互いの熱が混ざり合う。[/Pulse]
[A:ルキウス:愛情]「いい子だ。お前はもう、私がいなければ息もできない身体に作り変えられた。……さあ、いよいよあの愚か者たちに、真の地獄を見せる時間だ」[/A]
[/Sensual]

数週間後。王城で開催された、建国記念の豪奢な夜会。
それは、アルベルとセリアの正式な婚約が大々的に発表される、晴れ舞台のはずだった。
[A:アルベル:喜び]「セリア、今日の君は誰よりも美しい。これでようやく、あの貧乏くさく陰気なリアナを完全に排除できる」[/A]
[A:セリア:興奮]「ええ、アルベル。私たちは王都で一番の権力と富を手に入れるのよ」[/A]
グラスを掲げ、招待客たちの羨望の眼差しを浴びて勝ち誇る二人の前で、突如として会場の空気が一変した。
[Impact]重厚な大扉が、鼓膜を震わせる轟音と共に開け放たれる。[/Impact]
[FadeIn]ざわめきが波のように引き、水を打ったような圧倒的な静寂が広がる。[/FadeIn]
そこに現れたのは、王都の影の絶対的支配者たる冷酷公爵、ルキウス。
そして、彼の屈強な腕に寄り添うように身体を預ける、一人の絶世の美女であった。
最高級の黒真珠とダイヤモンドが散りばめられた、漆黒のドレス。艶やかに結い上げられた銀髪。誰もが息を呑むほど自信と色香に満ちた、アメジストの瞳。
[A:アルベル:驚き]「り、リアナ……!? なぜ、お前がルキウス閣下の隣に……!」[/A]
アルベルの顔から一瞬で血の気が引く。地味で大人しく、いつも自分の後ろを歩いていたはずの元婚約者が、まるで別人のように妖艶な毒花へと変貌していたからだ。
[A:セリア:激怒]「な、によあの泥棒猫! 閣下をたぶらかすなんて、身の程知らずにもほどがあるわ!」[/A]
ヒステリックに叫ぶセリアを歯牙にもかけず、リアナはルキウスの腕の中で、極上の笑みを浮かべた。
[A:リアナ:冷静]「ごきげんよう、アルベル様。それに、セリア様。お二人の『熟れた果実』のような甘いご関係、皆様にもぜひお裾分けにいらして?」[/A]
[A:アルベル:恐怖]「なっ……お前、何を……!」[/A]
ルキウスが冷酷な目で指をパチンと鳴らす。
[Impact]バサバサバサッ!![/Impact]
天井の吹き抜けから、無数の書類が雪崩のように会場中へばら撒かれた。
それは、アルベルがセリアの実家と結託し、国家予算を横領していた決定的な証拠書類。そして、二人が夜会で密会していた卑猥な行為の数々を詳細に記した調査報告書だった。
[Shout]「なんだこれは!」「アルベル卿、公金横領だと!?」「公爵令嬢ともあろう者が、バルコニーで発情した獣のように……!」[/Shout]
貴族たちの冷たい嘲笑と軽蔑の眼差しが、二人を無数に串刺しにする。
[A:アルベル:絶望]「ち、違う! これは罠だ! ルキウス閣下、どうか誤解を……っ!」[/A]
アルベルが這いつくばり、ルキウスの磨き上げられた靴に縋り付こうとする。しかし、ルキウスは汚物を見るような目でそれを蹴り飛ばした。
[Tremble]ゴスッという鈍い音と共に、アルベルが床を無様に転がる。[/Tremble]
[A:ルキウス:狂気]「私の愛しき『妻』を、貧乏くさい小娘と愚弄した罪は万死に値する。貴様らは家名を剥奪され、北の果ての鉱山で一生泥水をすすることになるだろう。……連れて行け」[/A]
[A:セリア:絶望]「いやあああっ! 嫌よ、私は公爵令嬢なのよ!! 離してぇっ! アルベル、なんとかしなさいよぉっ!!」[/A]
近衛兵に両腕を掴まれ、髪を振り乱して泣き叫びながら引きずられていく二人。
その滑稽で無惨な姿を見下ろしながら、リアナの胸の奥で、黒くどろどろとした極上の悦悦感が弾けた。
[Think]ああ、なんて気持ちがいいの。これが、復讐。これが、本当の私。[/Think]
騒ぎが収束し、静寂を取り戻したバルコニー。
かつてリアナが絶望の涙を流したその場所で、ルキウスがリアナの細い腰を強く抱き寄せる。
[A:ルキウス:愛情]「満足したか、私の可愛いリアナ。これで過去のしがらみはすべて消え去ったな」[/A]
[A:リアナ:興奮]「はい、ルキウス様……。私にはもう、貴方の与えてくださる快楽しか要りません」[/A]
[Sensual]
ルキウスの大きな手がリアナの顎をすくい上げ、紅を引いた唇を貪るように塞ぐ。
月明かりの下、二人の影がねっとりと甘く絡み合う。
「んっ……ああっ……ルキウス、様……ここで、は……っ」
「誰かに見られても構わないだろう。お前はもう、私のものだと世界中に知らしめたのだから」
かつての清純で哀れな令嬢は完全に死に絶え、冷酷公爵の腕の中でだけ咲き誇る、最も淫らで美しい華がそこに在った。
[/Sensual]