降りしきる冷たい雨。巨大なガラスチューブを叩きつける水滴。
完全監視社会の血管、透明な満員モノレール。その中で息を潜める雨宮蛍。
窓に映る、体に寸分違わずフィットした仕立ての良いグレーのスーツ。夜会巻きにきつく結い上げられた黒髪の艶。一切の感情を読ませない冷たい三白眼。
完璧な歯車。正しい市民。
[Think]今日も、私の心拍数は正常。問題ありません[/Think]
[Pulse]ドクン[/Pulse]
重く跳ねる、一つの鼓動。
鼻腔を突くのは、他人の濡れた傘から漂う錆びた鉄と泥の匂い。
息の詰まるような人口密度。天井の監視カメラが、赤いレンズの瞬きを繰り返す。
背後に密着していた誰かの熱。不自然なほど生々しく蛍の背中を圧迫する。
[Sensual]
冷え切った指先が、スーツの裾から滑り込む。
[Impact]ビクリ、と蛍の肩が跳ねる。[/Impact]
悲鳴を上げる隙すら与えられない。
薄いブラウス越しに蛍の柔らかな双丘を下から掬い上げ、乱暴に揉みしだく氷のような指先。
[Blur]視界がグラリと揺らぐ。[/Blur]
逃げ場のない超満員の車内。三百人の乗客と、五台の監視カメラ。
声を出せば確定する、社会的な死。
[Tremble]膝が震え、太ももの内側に冷や汗が伝う。[/Tremble]
男の手は躊躇いなくスラックスのジッパーを下ろし、下着の布地を押し退け、濡れた最奥の入り口へと容赦なく侵入する。
「あっ……」
零れ落ちる、声にならない吐息。
指の腹が敏感な花芯をピンポイントで捉え、円を描くように執拗に弾く。
[Pulse]ドクン、ドクン、ドクン[/Pulse]
[Whisper]「……」[/Whisper]
卑猥な水音が、雨音のノイズにかき消される。
[A:雨宮 蛍:恐怖]「やめ……」[/A]
[Whisper]「声を出すな。カメラが見てるぞ」[/Whisper]
耳元に吹き込まれた熱い吐息。
そのぶっきらぼうで、ひどく懐かしい声の響き。
見開かれる蛍の冷たい三白眼。激しく上下する喉仏。
[Heart]
凍りついていた下腹部から脳髄へと一気に駆け上がる、熱い痺れ。背徳感という名の猛毒が、彼女の理性をドロドロに溶かす。
[/Sensual]
足の指が靴の中で丸まり、全身の毛穴が開くのを感じながら、震える目で窓ガラスの反射を見る蛍。
無造作に伸びた銀髪。鋭く熱を帯びた瞳。
死んだはずの初恋の相手、九条朔。彼が獲物を狙う獣のように、歪んだ笑みを浮かべていた。
第二章: 静寂の美術館と寸止めの熱
厳粛な大理石の床が続く、国立美術館の第三展示室。
美術品の影に潜むように、荒い息を吐く蛍。
乾燥した空気。古い油絵の具と埃の匂いが静寂を支配する。
[System]警備ドローン・巡回ルートアルファ・異常なし[/System]
青白い機械の光が通り過ぎるのを待ち、黒のロングコートから伸びた腕が蛍の細い腰を引き寄せる。
蛍の首筋に触れる、シルバーアクセサリーの冷たい感触。
[A:九条 朔:興奮]「息苦しくないか? 俺が壊してやるよ」[/A]
[A:雨宮 蛍:照れ]「離して……! 見つかれば、二人とも終わりです」[/A]
口から零れるのは拒絶の言葉。しかし、彼女の震える指は朔のコートを強く握りしめる。
[A:九条 朔:愛情]「いいや。お前はもう、俺の手の中だ」[/A]
[Sensual]
スーツの襟元を引き裂くように開く、朔の指。
[Pulse]ドクッ[/Pulse]
熱い唇が、蛍の耳たぶを甘く食む。
直接的な結合は避けたまま、彼の太い指先だけが蜜壺の浅い部分を行き来する。
[Tremble]「ああっ……んっ……」[/Tremble]
再び接近するドローンの微かな駆動音。
見つかれば社会から完全に抹殺される。その絶望的な恐怖が、逆に神経を限界まで鋭敏にする。
うなじから胸元へと這う朔の熱い息遣い。
[Whisper]「ここ、濡れすぎだろ……もっと声出せよ」[/Whisper]
[A:雨宮 蛍:絶望]「だめ……お願い、朔……奥まで……」[/A]
寸止めの快楽。
与えられるべきものが与えられない焦燥感。それが蛍の頭を狂わせる。
弓なりに反る背中。口の端からツツーと糸を引く透明な唾液。
彼の太ももに押し付けられた自身の熱が、下腹部で弾けそうに脈打つ。
[/Sensual]
[A:九条 朔:狂気]「まだだ。お前のその綺麗に整った仮面、全部剥がしてやる」[/A]
[Flash]ピピッ[/Flash]
突然、蛍の手首にある生体端末が鳴らす無機質な警告音。
『心拍数異常を検知。これより監視映像の解析を開始します』
一気に引いていく血の気。
端末の画面に表示された発信者。それは蛍の直属の上司、白鳥玲。
第三章: 歪んだ白と公開の絶頂
中央管理都市、最大の豪奢を極めた創立記念パーティの会場。
何百人ものエリート社員たちの虚飾の笑顔を照らし出す、シャンデリアの眩い光。
[A:白鳥 玲:狂気]「美しいですね。さあ、そのまま続けてください」[/A]
冷徹な丸眼鏡の奥で、嗜虐的な笑みを深める色素の薄いブロンドの女、白鳥玲。
一滴の汚れもない純白のタイトスーツ。
彼女の指先に握られた、小さな黒いリモコン。
[Sensual]
ガクガクと小刻みに震える蛍の脚。
グレーのスーツの下、濡れそぼった蜜壺の最奥。そこには玲によって仕込まれた遠隔操作の玩具が、容赦なく振動を続ける。
[Tremble]「うっ……くぅっ……」[/Tremble]
演壇に立つ蛍。マイクの前に立つ彼女に突き刺さる、数百の冷酷な視線。
[Pulse]ドクン、ドクン、ドクン[/Pulse]
[A:白鳥 玲:興奮]「雨宮監査官? 今年度の報告をどうぞ。皆様がお待ちですよ」[/A]
リモコンのダイヤルを最大まで回す玲の指。
[Impact]ブォンッ![/Impact]
骨伝導で下腹部に響き渡る強烈なモーター音。
[A:雨宮 蛍:絶望]「本年度の……あっ……! 監査結果は……ふぁっ……!」[/A]
パンプスの底で丸まる足の指。引きつるふくらはぎの筋肉。
何百人もの目が見つめる中、自分が今、強烈な快楽に身をよじっているという異常な事実。
公衆の面前での恥辱が、隠し持っていた異常な欲望を暴走させる。
朔への裏切りの罪悪感。そして、目の前が真っ白になるほどの快楽。
[Shout]あぁぁっ![/Shout]
白目を剥き、膝から崩れ落ちそうになるのを必死に堪える。
蜜壺からあふれ出した白濁の愛液が、太ももを伝って一筋、床へと滴り落ちる。
[/Sensual]
[A:白鳥 玲:冷静]「素晴らしいスピーチでした。……ねえ、雨宮さん。あのネズミの居場所、教えてくれますよね?」[/A]
耳の裏を撫でる、玲の冷たい囁き。
涙で視界がぼやける中、自らの魂が音を立てて砕け散るのを感じる蛍。
第四章: 崩壊へのハッキング
酸性雨が降り注ぐ、廃棄区画の裏路地。
汚水とネオンの焦げる匂いが充満する中、泥のぬかるみに膝をつく蛍。
汚れたグレーのスーツ。解けた完璧だった夜会巻き。顔に張り付く濡れた黒髪。
[A:雨宮 蛍:悲しみ]「私の心拍数は……もう、正常に戻らない……」[/A]
崩れ落ちた彼女の前に舞い降りる、黒い影。
[A:九条 朔:怒り]「蛍!」[/A]
冷え切った蛍の体を強く抱きしめる朔の腕。
[A:雨宮 蛍:絶望]「来ないで! 私は……あなたを売るよう脅されている。私と一緒にいたら、あなたも死ぬ!」[/A]
自分の唇を血が滲むほど噛み締めながら、悲痛な叫びを上げる蛍。
[A:九条 朔:愛情]「上等だ。こんな偽物の世界、はじめからぶっ壊すつもりだった」[/A]
蛍の頬を打つ、朔の濡れた銀髪から滴る雨水。
彼の目は、破滅的な熱を帯びている。
[Think]ああ、この熱。私がずっと欲しかったのは、この火傷するような熱だけ[/Think]
複雑な配線が剥き出しになった黒いデバイス。朔が懐からそれを取り出す。
[A:九条 朔:冷静]「メインフレームに直結させる。社会のルールごと、お前を奪い返す」[/A]
[Sensual]
雨に打たれながら、朔の唇が蛍のそれに重なる。
泥と雨水、血の鉄の味が混じり合う、痛切なキス。
互いの存在だけを確かめ合うように深く絡み合う舌。分かち合う互いの体温。
[Whisper]「全部失っても、お前だけは手放さない」[/Whisper]
[/Sensual]
[Flash]バチィッ![/Flash]
一時的に落ちる都市の電源。一斉に沈黙する数万の監視カメラ。
それは、彼らがすべてを終わらせるための、最後の戦いの合図。
第五章: 雨のち、透徹の檻で
中央管理都市の心臓部。地上三百メートルに浮かぶ巨大なガラス張りの展望台。
[Glitch]SYSTEM ERROR_OVERRIDE_INITIATED[/Glitch]
眼下に広がる街の全ての巨大モニター。そこにはノイズと共に彼らの姿が映し出されている。
成功する朔のハッキング。
背後の分厚い扉の向こうに響く、武装した警備部隊が突入の準備を進める重たい足音。
眼下の広場には何万という群衆が集まり、天空の檻を見上げている。
[A:九条 朔:興奮]「見ろ、蛍。このクソみたいな街の全員が、俺たちを見上げてる」[/A]
[A:雨宮 蛍:愛情]「ええ……とても、綺麗……」[/A]
ガラスに押し付けられた蛍の肌。それは信じられないほどの熱を放つ。
[Sensual]
冷たいガラスの感触。背後から押し当てられる朔の燃えるような肉体。
何万という人々の視線を浴びているという極限の状況が、蛍の理性を完全に吹き飛ばす。
蛍の腰を強く掴む朔の手。彼女の濡れた洞窟へと、熱く硬い欲望の昂りを一気に沈め込む。
[Impact]「あっ……あぁぁぁっ!!」[/Impact]
脳の芯が痺れるような強烈な衝撃。
最奥を容赦なく貫かれるたび、火花のような快楽が全身を駆け巡る。
[Pulse]ドクン! ドクン……ドクンッ![/Pulse]
[A:九条 朔:狂気]「蛍、蛍……! 誰にも渡さない、お前は俺の……!」[/A]
[Whisper]「もっと……壊して……私を、めちゃくちゃにして……!」[/Whisper]
形を変える、ガラスに押し付けられた柔肉。交わりの卑猥な水音が展望台に響き渡る。
下から突き上げる猛烈な楔の律動に、痙攣を止められない蛍の体。
喉の奥から漏れる獣のような嬌声。ガラスを汚す涎。
もはや羞恥心など微塵もない。あるのは、すべてを焼き尽くす絶対的な自由と、圧倒的な快楽だけ。
[Tremble]「くるっ……! 朔、だめ、壊れる、真っ白になるぅぅっ!!」[/Tremble]
限界を超えた絶頂。それが二人の体を同時に打つ。
最奥に熱い生命の白き熱が爆発するように注ぎ込まれ、蛍の視界が真っ白に弾ける。
[/Sensual]
[Shout]ドカァァァン!![/Shout]
爆薬で吹き飛ばされる背後の扉。二人の体に群がる、無数のレーザーサイトの赤い光。
だが、蛍の唇に浮かぶのは、初めて見せる本物の笑み。
ガラスの向こうで割れる雨雲。光の奔流と息を呑むほど美しい雨上がりの星空。
社会的な死という代償。
それでも彼女は、彼と永遠に一つの檻の中で、真実の生を手に入れた。
満天の星明かりの下、血と蜜に塗れたまま静かに口づけを交わす二人。