第一章: 終末の雨と舞い降りた純白

ドス黒い泥が、剥き出しの頬を容赦なく汚していく。
粘り気のある汚泥が皮膚に張り付き、体温を容赦なく奪い去った。
空を覆うのは、沸騰した鉛のような濁った暗雲。
そこから降り注ぐのは、皮膚を焼き、鉄を溶かす硫酸の雨だ。
黒錆を含んだ雨滴が、ボロボロの漆黒の外套に容赦なく穴を穿ち、じゅうじゅうと不快な音を立てて肉まで届く。
[Impact]「あ、ぐ……っ、は、あ……っ」[/Impact]
エリアンは泥の海に深く伏したまま、全身を貫く激痛に歯を食いしばる。
かつて万物を照らす清らかな光を宿した右腕は、今や見る影もない。
肘から先が炭のように真っ黒く壊死し、ドロドロとした重い血が泥水に混ざり合って滴り落ちていた。
生気を失った灰色の瞳に映るのは、不毛の大地を抉り続ける、容赦なき酸の牙ばかり。
[Think](光など、とっくに消え失せた。この世界には、ただ冷たい灰と、すべてを朽ちさせる嵐しか残っていない)[/Think]
かつて救世の「光の使徒」と崇め奉られた面影など、もうどこにも存在しなかった。
信じていた帝国に裏切られ、魔力回路をズタズタに引き裂かれて、この死地に棄てられてから数日。
錆びた鉄と肉が腐る臭気が、容赦なく鼻腔の奥へと突き刺さる。
焼け付くような喉の奥に広がるのは、ただ、おぞましく苦い血の味ばかりだった。
指先一つすら、もう動かす力は残っていない。
泥の底から冷気が這い上がり、骨の髄まで凍えさせていく。
重い泥を吸い込み、ただ無様な肉塊のように朽ち果てる時を待つ。
その凍てついた視界の端に、ふわりと、あり得ないはずの純白が舞い降りた。
[FadeIn]
泥にまみれた荒野を、一人の少女が真っ直ぐに歩いてくる。
吹きすさぶ酸の風に、擦り切れた純白のワンピースがはためいていた。
そよぐ髪は、透き通るような白銀。
少女――レインは、生まれつき声帯を持たない。
代わりに、その澄み切った蒼い瞳に深い慈しみを湛え、倒れ伏すエリアンをただ静かに見つめていた。
[/FadeIn]
レインが泥の中に、音もなくその膝を折る。
汚泥にまみれることも厭わず、その華奢な体が、エリアンの傷だらけの顔へと迫った。
[Sensual]
レインの小さく冷たい手が、エリアンの血に濡れた胸元に、そっと添えられる。
[Pulse]トクン、トクンと、静かだが力強い脈動[/Pulse]が、彼女の掌から伝わってきた。
その温もりは、壊死した右腕から全身に回る激痛を和らげるように、じんわりと心臓の奥まで染み込んでいく。
[A:エリアン:冷静]「……よせ。お前まで、泥に汚れる」[/A]
乾いた砂の塊のような低い声で、エリアンは少女を突き放そうとした。
しかし、レインは静かに首を振るだけだった。
蒼い瞳が、エリアンの瞳の奥底に微かに残る「光の残滓」を、痛切なまでの愛おしさで見つめ返す。
[A:レイン:愛情]「(……それでも、あなたの風は、とても温かい)」[/A]
レインの唇は微動だにしない。
しかし、[Whisper]静かな風のざわめき[/Whisper]となって、その慈愛に満ちた言葉がエリアンの脳裏に直接響き渡った。
彼女の指先から、途方もない温もりが、冷え切った血管へとなだれ込んでいく。
[/Sensual]
その瞬間、荒涼とした世界が、その貌を劇的に変えた。
肌を激しく焼いていた猛烈な酸性雨が、一瞬にして、温かく柔らかな「春の恵みの雨」へとその性質を変質させていく。
冷え切っていた大地から、むせ返るような緑と瑞々しい土の匂いが立ち込めた。
[Think](これは、世界の意志が、彼女に応えているのか……?)[/Think]
エリアンの頬を、温かな雨の雫が優しく伝い、泥を洗い流していく。
レインの瞳に宿る、圧倒的な生命の美しさ。
絶望に凍てついていた心の底が、彼女のどこまでも純粋な温もりによって、狂おしいほどに揺さぶられていた。
[Flash]だが、その静寂は、無慈悲に引き裂かれる刹那の奇跡に過ぎなかった。[/Flash]
[Shout]ゴロロロロ……ッ![/Shout]
地平線の彼方から、すべてを圧殺するような、不気味で重苦しい黒い雷鳴が轟く。
大気から酸素を根こそぎ奪い去るような、禍々しい圧迫感。
かつてエリアンを信頼の絶頂から奈落へと突き落とした、あの男の冷酷極まりない気配が、どす黒い影となって地を這い寄ってきた。
第二章: 破られた安息と裏切り者

冷たい泥の匂いが、一瞬にして焦げ付いた鉄の臭気へと変貌する。
レインの細く華奢な指先が、エリアンの胸元から弾かれたように離れていく。
温もりの残るワンピースの純白が、急激に忍び寄る影に侵食されていった。
ずしり。ずしり。
重苦しく、泥を均等に踏み潰す規則的な靴音が近づいてくる。
[Shout]ゴロロロロ……ッ![/Shout]
頭上を覆う黒い雲が、まるで飢えた獣の咆哮のような雷鳴を響かせた。
大気から酸素が急速に失われ、肺がひび割れたように焼け付く。
現れたのは、血と泥に塗れたこの戦場には、あまりにも不釣り合いな男だった。
金糸の豪奢な刺繍が施された、眩いほどに美しい、純白の神官服。
帝国の大神官、ゲスナー。
男は細い目をさらに細く歪め、薄い唇の両端を吊り上げて、泥を這うエリアンを見下した。
[A:ゲスナー:冷静]「おや、まだ息をしていたのですか、エリアン。往生際の悪い男は、誰からも嫌われますよ」[/A]
エリアンの灰色の瞳が、かつての無二の親友であり、己のすべてを奪い去った裏切り者を捉える。
右腕の壊死した黒い皮膚が、心音の拍動に合わせてズキズキと不快な熱を帯びた。
怒りのあまり、口の端から、どす黒い血がだらりと垂れる。
[A:エリアン:絶望]「……ゲ、スナー……ッ!」[/A]
[Think](よくも、よくも私の前にその面をさらしたな、裏切り者が。すべてはお前の謀略だったのか)[/Think]
ゲスナーは芝居がかった仕草で肩をすくめると、胸元に下げた黄金のロザリオを愛おしげに弄んだ。
[A:ゲスナー:喜び]「そう睨まないでほしい。君の犠牲は、決して無駄になっていません。君から抽出した極上の『光の魔力回路』は、今や我が帝国の新兵器《光蝕の劫火(こうしょくのごうか)》として、他国を美しく焼き払っていますよ」[/A]
[Impact]平然と吐き捨てられた、あまりにも残酷な真実。[/Impact]
人々を救うために捧げたはずの神聖な力が、罪なき人々を殺戮するための最悪の道具へと作り変えられていた。
激しい嫌悪と怒りで、エリアンの喉の奥から乾いた鉄の味がせり上がる。
ゲスナーの冷酷な、獲物を値踏みするような視線が、エリアンの隣で小さく震えるレインへと移った。
透き通るような白銀の髪が、嫌な湿気を含んだ風に揺れている。
[A:ゲスナー:興奮]「次は、その娘です。世界の風を司る最後の依代(よりしろ)。その絶大な力を我が手に収めれば、私はついに、人を超えて神の領域へと至るのだ」[/A]
[A:ゲスナー:冷静]「さあ、おいでなさい、哀れな風の人形よ」[/A]
ゲスナーが尊大に手をかざし、禍々しい呪詛を口ずさむ。
[Magic]《黒鎖の檻(こくさのおり)》[/Magic]
粘つく泥の中から、意思を持つ蛇のような黒い霧の鎖が噴き出し、レインの細い足首と両腕を強引に締め上げた。
[A:レイン:恐怖]「(……ッ、あ……っ、嫌……っ)」[/A]
声にならない悲鳴が、激しい風の泣き声となって、エリアンの脳裏を直接掻きむしる。
その瞬間、エリアンの内側で、理性を繋ぎ止めていた鎖が完全に千切れた。
[Shout]「おおおおおおおッ!!」[/Shout]
魔力を失い、骨が浮き出た両足に強引に力を込める。
立ち上がり、黒く枯れ果てた右腕で、泥に半分埋まっていた錆びた剣を掴み取った。
刃こぼれだらけの、ただの鉄塊と化した得物を両手で握り締め、ゲスナーの喉元めがけて泥を蹴って飛びかかる。
[A:エリアン:狂気]「その汚い手で、彼女に触れるなああああッ!」[/A]
渾身の一撃。しかし、それはゲスナーが瞬時に展開した、半透明の黄金の障壁に冷たく阻まれる。
キィィィンと耳を突き刺す不快な金属音が響き、逃げ場のない衝撃がエリアンの両腕の骨を直撃した。
[Impact]ごふっ、と、重い生理現象。[/Impact]
エリアンの口から大量の鮮血が噴き出す。
障壁の凄まじい反動で弾き飛ばされ、再び冷たい泥の海へと無様に激突した。
視界が[Blur]赤黒い斑点となって激しく明滅し[/Blur]、全身の感覚が急速に遠のいていく。
[A:ゲスナー:冷静]「無駄な足掻きを。君はもう、使い古されたただの搾りかすなのですよ」[/A]
ゲスナーが薄笑いを浮かべ、新たな魔方陣を地面に展開する。
青白く、不気味に明滅する「抽出の陣」が、囚われたレインの足元で禍々しく回転を始めた。
[Sensual]
レインは、これ以上自分のためにエリアンが傷つくのを見ていられなかった。
蒼い瞳に、こらえきれない大粒の涙を湛えながら、彼女は泥まみれのエリアンを、最期の覚悟を決めた瞳で見つめる。
[/Sensual]
[A:レイン:愛情]「(……もう、大丈夫。私は平気だから。だから、あなただけは生きて)」[/A]
言葉なき祈りを激しい風に乗せ、レインは自ら、呪われた陣の光の中へと歩を進めた。
ゲスナーの展開した、魂を削り取る魔方陣の真っ只中へと、その小さな素足を迷わず踏み入れる。
[Pulse]ドクン、と大地の底が激しく脈動した。[/Pulse]
レインの華奢な体から、青白い「風の命脈」が、根こそぎ引き剥がされようとした、まさにその瞬間――。
[Flash]ゴオオオオオオッ![/Flash]
突如として、大地の底から裂けるような激震が走った。
略奪に対する、世界そのものの怒りのように、灼熱の猛烈な熱風が吹き荒れる。
第三章: 決死の儀式と命の共鳴

[Flash]ゴガガガガガッ![/Flash]
大地の底が真っ二つに裂け、地底から灼熱の泥水が噴き出す。
レインから強引に引き剥がされかけた青白い「風の命脈」が狂い、暴走した魔力が巨大な竜巻となって荒野を蹂躙した。
肌を焦がすほどの熱風が吹き荒れ、ゲスナーの背後に控えていた帝国の重装歩兵たちが、悲鳴を上げて虚空へ吹き飛んでいく。
[A:ゲスナー:驚き][Shout]「な、何事だ!? 抽出の儀式が、なぜ逆流しているのだ!?」[/Shout][/A]
純白の神官服の裾を泥まみれにしながら、ゲスナーは信じられないものを見るように目を見開いた。
暴威を振るう烈風の中心で、純白のワンピースを激しくはためかせるレインが、血を吐きながらも、ただじっとエリアンを見つめている。
その蒼い瞳が、生命の灯火を燃やすような、強烈な光を放った。
[Sensual]
視界が境界を失って融け去り、周囲の耳障りな騒音が、一瞬にして消え去る。
エリアンの意識は、静寂に満ちた、真っ白な心象世界へと引きずり込まれていた。
目の前には、白銀の髪を美しくなびかせ、涙に濡れた瞳で自分を見つめるレインが立っている。
[A:レイン:愛情][Whisper]「(エリアン……私の風は、あなたを失いたくない。あなたと共にありたい)」[/Whisper][/A]
声の出ないはずの彼女の、震える愛おしい声が、脳内に直接、波紋のように染み渡っていく。
レインは一歩、また一歩とエリアンに近づき、その小さな体で彼の冷え切った胸にしがみついた。
温かい体温が、エリアンの凍てついた胸板を通して伝わる。
[A:レイン:愛情][Whisper]「(私の力だけでは、世界を切り裂く帝国の濁流を止められない。あなたの命の灯火を、私の風の翼に注ぎ込んで)」[/Whisper][/A]
それは、美しくも、絶対的な死の要求。
魔力を完全に失ったエリアンの「命そのもの」を薪として燃やし尽くし、風の意志と同化させる、過酷な儀式の宣告だった。
[/Sensual]
エリアンは重い瞼を持ち上げ、泥にまみれた唇を、自嘲気味に、だが深く歪めた。
漆黒の外套の下、壊死して黒ずんだ右腕はすでに感覚を失い、死臭を放っている。
しかし、彼の心臓は、かつて世界を救った時よりも激しく、熱を帯びて拍動していた。
[A:エリアン:狂気]「奪われるだけの、惨めな人生だと思っていた」[/A]
乾いた、しかし鋼のように固い低い声が、吹き荒れる嵐の音に混ざる。
[A:エリアン:愛情]「だが、最後に俺の意志で、この命を、お前のためだけに捧げられるなら――これほど幸福な最期はない」[/A]
エリアンは残された最後の力を振り絞り、泥を這って、壊死した右腕を伸ばした。
ボロボロに崩れかけた黒ずんだ指先が、魔方陣の中心に佇むレインの、白く細い手首をしっかりと掴み取る。
[Pulse]ドクン![/Pulse]
二人の肌が触れ合った瞬間、世界が反転した。
エリアンの体内に眠っていた、帝国の抽出から免れた「光の消え残り」が、レインの「風」と同調し、狂気的な共鳴を始める。
[Flash]キィィィィィン![/Flash]
壊死していた右腕の黒い皮膚が内側から弾け飛び、かつて世界を優しく照らした純白の閃光が、狂おしい奔流となって大気へと噴き出した。
[Shout]「おおおおおおおおおおッ!!」[/Shout]
戦場全体を、天を突くほどの純白の暴風が包み込む。
喪失したはずの絶対的異能が、少女の風という最高純度の触媒を得て、世界を再定義する圧倒的な超越力として、今、ここに新生したのだ。
[Impact]荒れ狂い、吹き荒れる光の刃。[/Impact]
嵐に巻き込まれた帝国の魔導兵器群が、ガラス細工のように容易く、音を立てて粉々に砕け散っていく。
戦場に立ち上っていた醜い黒煙が、一瞬にして純白の光に浄化され、塵一つ残さず霧散した。
[A:ゲスナー:恐怖][Tremble]「ば、馬鹿な……! あり得ん、このような奇跡が、あってたまるかあああッ!」[/Tremble][/A]
狂乱するゲスナーの顔から、醜い冷笑が、跡形もなく完全に消し去られた。
第四章: 新生した光芒の暴風
嵐が、咆哮する。
天を突く純白の暴風が、世界を覆っていた鉛色の暗雲を粉々に引き裂いた。
戦場を埋め尽くしていた帝国の凶悪な鉄獣たちが、紙細工のように軽々と宙へ舞い、光の粒子へと砕け散っていく。
[A:ゲスナー:狂気][Tremble]「あり得ん! 異能を失ったただの廃人と、出来損ないの人形が、なぜこれほどの力を放つ!」[/Tremble][/A]
純白の神官服を無様に泥で汚し、ゲスナーは金髪を振り乱して叫んだ。
その細い目には赤い血が走り、かつての尊大な余裕は完全に瓦解している。
ゲスナーは、かつてエリアンから強奪し、己のものとした濁った光の魔法を、狂ったように撃ち放ち始めた。
[Flash][Magic]《光蝕の劫火(こうしょくのごうか)》[/Magic][/Flash]
しかし、その黒ずんだ忌まわしい閃光は、レインの呼び起こした純白の暴風に触れた瞬間、何の手応えもなく、跡形もなく掻き消される。
自然の意志そのものと化した嵐が、狂叫するゲスナーの身体を容赦なく包み込んでいく。
[A:ゲスナー:恐怖][Shout]「う、ああ、あああッ! 私の、私の神聖なる力が、分解されていく……嫌だ、死にたくない、神よおおおッ!」[/Shout][/A]
彼がこれまで大地から、そしてエリアンから強奪し、汚染し尽くしてきた黒い魔力ごと、細胞の極限まで引き裂かれ、浄化されていく。
ゲスナーの醜い絶叫は、大気の圧倒的な唸り声に一瞬でかき消され、その肉体は細かな塵となって、虚空へと消え去った。
[Impact]絶対的な静寂が、戦場を優しく支配する。[/Impact]
肌を焼いていた硫酸の雨は、いつの間にか完全に止んでいた。
千切れた雲の隙間から、数十年間も閉ざされていた本物の、温かく澄んだ太陽の光が地上へと真っ直ぐに差し込む。
[Sensual]
エリアンの身体から、急速に力が抜けていく。
漆黒のボロボロの外套が泥に沈み、役割を終えた壊死した右腕から先が、さらさらと白い輝く砂になって崩れていく。
視界が[Blur]眩い白にぼやけ[/Blur]、己という存在の境界線が、世界に融けていくのが分かった。
だが、その感覚は不思議と、心地よい。
[A:エリアン:冷静]「……終わった、な。ようやく、すべてが」[/A]
乾いた、しかし重荷をすべて下ろしたような、静かな、穏やかな声。
その身体を、レインの透き通るような白銀の髪が優しく包み込む。
擦り切れた純白のワンピースが風になびき、彼女の操る温かな、花の香りのする風が、エリアンを抱きしめた。
レインの蒼い瞳から、大粒の涙がこぼれ落ち、エリアンの灰色の頬を、優しく濡らしていく。
[A:レイン:愛情][Whisper]「(……私の風の中に、あなたがいます。私の魂の中に、あなたの光があります。ずっと、ずっと一緒です)」[/Whisper][/A]
声帯のない彼女の、命をかけた魂のささやきが、エリアンの胸の奥に、永遠の絆として直接響き渡った。
急速に冷え切っていく身体が、かつてないほどの圧倒的な温もりで満たされていく。
[/Sensual]
エリアンが静かに瞼を閉じる直前、泥に塗れていた荒野は劇的に一変していた。
彼らの足元から、風に揺れる、無数の白い花畑が世界を埋め尽くしていく。
彼の消えかけた光は、少女の風と同化し、その目に見えない翼となって、これから先も世界を照らし続けるのだ。
レインは頬の涙を指先でそっと拭い、確かな、力強い足取りで立ち上がった。
その澄み切った蒼い瞳には、もう迷いも、孤独の影も存在しない。
エリアンの遺した優しく温かな風をその身に深く纏い、少女は光に満ちた、新しい世界の夜明けへと歩み出した。
その背中に、世界の意志である温かな太陽の光が、祝福の拍手のように、いつまでも、いつまでも降り注いでいた。