第一章: 歪んだ執着と反転する境界
[Suspense]
冷たい雨が、人気のない路地裏のアスファルトを黒く濡らしていた。
親友の冴木蓮と別れ、一人帰路についていた僕、結城湊は、ここ数日ずっと感じていた「まとわりつくような視線」に苛立っていた。
[Think]まただ。誰かに見られている……。気のせいじゃない、確実に僕の背中を舐め回すような、ねっとりとした気配がする。[/Think]
[Pulse]どくん、どくんと、嫌な予感に心臓が警鐘を鳴らす。[/Pulse]
意を決して振り返った僕の視界に映ったのは、街灯の下で雨傘も差さずに佇む、一人の少女だった。
[A:結城 湊:驚き]「雨宮……さん? なんでこんなところに……っ!?」[/A]
雨宮零。同じ大学に通う、物静かで華奢な少女。
しかし、濡れた前髪の隙間からこちらを見つめる彼女の双眸は、普段の大人しさからは想像もつかないほど、どす黒く歪んだ熱を帯びていた。
[A:雨宮 零:狂気][Whisper]「湊くん……ああ、やっと二人きりになれた。ずっと、ずっと見てたよ……あなたの髪も、声も、匂いも……全部、全部、私のものにしたかったの……」[/Whisper][/A]
[Tremble]背筋に氷のような悪寒が走る。彼女の異常な執着心が、雨の冷気を超えて肌を粟立たせた。[/Tremble]
じり、じりと距離を詰めてくる零。彼女の細い指先が、僕の胸元へと伸びてくる。
[A:結城 湊:恐怖]「な、何を言ってるんだ! やめろ、近づくな!」[/A]
咄嗟に彼女の肩を突き飛ばそうと手を伸ばした、その瞬間だった。
[Impact]バチィィッ!![/Impact]
お互いの肌が触れ合った途端、青白い火花のような静電気が弾け、周囲の空間がぐにゃりと歪んだ。
[Flash]視界が真っ白に染まり、脳髄を直接かき回されるような激痛と浮遊感が全身を襲う。上下左右の感覚が消失し、自分の輪郭が泥のように溶けていく。[/Flash]
[Think]なんだ、これ……っ、意識が、吸い込まれ……っ![/Think]
やがて、唐突に痛みが引き、冷たい雨の感覚が戻ってきた。
水たまりの上に倒れ込んでいた僕は、荒い息を吐きながらゆっくりと身を起こす。
[A:結城 湊:驚き]「はぁっ、はぁ……っ、いったい、今のは……」[/A]
自分の口から出たその声に、僕は凍りついた。
低く落ち着いた僕の声ではない。高く、鈴を転がすような、甘い少女の声。
震える視線を自分の手元に落とす。そこにあったのは、骨張った男の手ではなく、白く透き通るような、華奢で柔らかな女性の指先だった。
[Tremble]嘘だ。そんなはずはない。だって僕は……っ。[/Tremble]
「ふふっ……あはははっ! ああ、すごい……本当に、湊くんになっちゃった……」
頭上から降ってきたのは、『僕自身の声』だった。
恐る恐る見上げると、そこには、端正な顔立ちを紅潮させ、恍惚とした表情でこちらを見下ろす「結城湊」の姿があった。
[A:結城 湊:絶望][Shout]「お、お前……僕の身体で……っ!? いったい何をしたんだ!!」[/Shout][/A]
[A:雨宮 零:狂気][Whisper]「これで、湊くんは一生私から逃げられないね。私の身体(なか)で、ずっと私の愛を感じて生きていくの……」[/Whisper][/A]
僕の姿をした零が、ゆっくりとしゃがみ込み、水たまりに座り込む僕(零の身体)の頬を愛おしそうに撫てた。
その手から伝わる大きな男の骨格の感触と、自分のものとは思えない甘い紅茶の香りが、僕の精神を凌辱していく。
[Pulse]とくん、とくん、と……。[/Pulse]
華奢な胸の奥で鳴る、他人の心臓の鼓動。
抗えない狂気と、反転した境界線の先で、僕たちの歪な関係が幕を開けた。
[/Suspense]
第二章: 絡みつく執着と甘き絶望の鳥籠

[System]現在位置:雨宮 零の自室 / 外部からの施錠を確認[/System]
薄暗い部屋で目を覚ますと、手首には冷たい金属の感触があった。
[Think]ここは……どこだ? なぜ僕は縛られているんだ……?[/Think]
視界が徐々にクリアになり、目の前に見慣れた、しかし決定的に違和感のある姿が映る。
「僕」だ。僕自身の顔をした人間が、ベッドの傍らで狂おしいほどの熱線をこちらに向けていた。
[A:雨宮 零:狂気][Whisper]「あ……やっと起きたね、私の可愛い湊くん[Heart]」[/Whisper][/A]
甘ったるく、しかし男の低い声で紡がれる異常な愛の言葉。
僕は自分の状況を理解し、全身の血の気が引くのを感じた。
[A:結城 湊:絶望][Shout]「いやだ……っ! やめろ、僕の身体でそんな気色悪い声を出さないでくれ!」[/Shout][/A]
[Impact]ガチャン![/Impact]
拘束された腕を必死に動かそうとするが、華奢な雨宮零の肉体では、ベッドの支柱に繋がれた手錠を外すことなど到底不可能だった。
僕の姿をした零は、ゆっくりとベッドに這い上がり、逃げ場のない僕(零の身体)にのしかかってきた。
見慣れた大きな手が、僕の細い首筋をゆっくりと流れる。自分の手のはずなのに、今はひどく恐ろしく、そして抗えない絶対的な力強さを持っていた。
[A:雨宮 零:愛情]「湊くんの匂い……私の身体から、湊くんが怯えてる、いい匂いがする……。ねえ、自分自身に組み敷かれて、愛される気分はどう?」[/A]
[Sensual]
その指先が、首筋から鎖骨、そして薄いブラウスのボタンへと滑り降りていく。
「ひっ……!」
男であった時には決して感じることのなかった、女性特有の過敏な肌の感覚。
自分の大きな手が、零の柔らかな肌に直接触れた瞬間、脳髄を痺れさせるような甘い電流が背筋を突き抜けた。
[Think]狂ってる……こんなの、おかしい……っ。でも、身体が……っ。[/Think]
[A:結城 湊:興奮][Whisper]「あ……ぁっ、やめ……触る、な……っ!」[/Whisper][/A]
拒絶の言葉とは裏腹に、他ならぬ「僕自身」の顔と手によって与えられる暴力的な快感に、零の身体は濡れそぼり、正直に反応してしまう。
熱い吐息が耳元に吹き込まれ、視界が快楽でちかちかと点滅し始めた。
[A:雨宮 零:狂気][Whisper]「ふふっ……湊くん、本当はすごく感じてるんでしょう? 大規模、これから自分の身体で、私の奥深くまでめちゃくちゃに満たしてあげるからね[Heart]」[/Whisper][/A]
[/Sensual]
僕の瞳孔が恐怖と抗いようのない快楽に揺れる。
もがけばもがくほどに絡みつく、逃げ場のないこの密室で、境界線が溶け合う背徳の儀式が、今まさに始まろうとしていた。
第三章: 愛の残り香に溺れる共犯者

[Sensual]
濡れたガラスを滑り落ちる雨垂れが、薄暗い寝室に規則的な影を落としている。
遮光カーテンの隙間から這い入る、わずかな夕暮れの朱色が、乱れたベッドシーツを血のように染め上げていた。
[Pulse]どくん、どくんと、僕の胸の中で誰かの心臓が激しく暴れている。[/Pulse]
いや、これは僕の精神が収まった、雨宮零の華奢な肉体が刻む鼓動だ。
目の前にのしかかるのは、僕自身の端正な顔立ちをした雨宮零の魂。
[A:雨宮 零:愛情][Whisper]「ねえ、湊くん……私の身体、すごく熱くなっちゃってるよ……」[/Whisper][/A]
僕本来の声が、鼓膜をこれ以上ないほど甘く、淫らに揺さぶる。
僕の手首を掴む指先は、僕の本来の身体のものなのに、そこに込められた力は恐ろしいほどの独占欲を孕んでいた。
過敏な嗅覚が、僕の肉体から放たれる紅茶の香りと、今まとっている零の甘い蜜のような残り香を嗅ぎ分ける。
[Tremble]はぁ、はぁ、と僕の口から、かつて出したこともない高熱を帯びた吐息がこぼれ出た。[/Tremble]
[A:結城 湊:興奮]「くっ、あ……自分の匂いなのに、あたまが、熱い……」[/A]
自分の指先がシーツを引きちぎらんばかりに握り締められる。
僕の姿をした零が、その優美な指先を、僕の太ももの内側から柔らかな花弁へと滑り込ませた。
[Impact]「ひゃぅっ……あ、は……っ、ん、んぅ……!」[/Impact]
肌と肌が擦れ合う音が、夕闇の静寂に生々しい摩擦音となって溶けていく。
[Think]これは僕が僕に触れられているのか、それとも零にすべてを奪われているのか。[/Think]
[A:雨宮 零:狂気][Whisper]「もっと、深く……湊くんの中に、私のすべてを注ぎ込ませて……」[/Whisper][/A]
僕の身体をした零が、その熱い楔を、僕(零の身体)の最奥へと突き立てていく。
[Flash]視界が一瞬、閃光のように弾け、火花の渦が脳裏を駆け巡る。[/Flash]
深く貫かれるたびに、自らの肉体を支配されている屈辱と、底なしの快感が境界線を焼き尽くす。
お互いの汗と体液が混ざり合い、どちらが追う者で、どちらが追われる者だったのかさえも消失していく。
[A:結城 湊:興奮][Shout]「零……っ! ああ、それ、以上は、僕が、壊れる……っ!」[/Shout][/A]
[A:雨宮 零:愛情][Whisper]「いいよ、壊れて、私と一緒に……ずっと、このままでいようね……」[/Whisper][/A]
深奥で熱い生命の奔流が弾け、背筋に強烈な痙攣が走り抜ける。
僕たちは、二度と戻れない奈落の底で、重なり合う体温と匂いに溺れながら、歓喜の絶頂へと堕ちていった。
シーツの海に沈み込みながら、二人は満足げな微笑みを浮かべ、二度と解けない抱擁を交わす。
[/Sensual]