第1章: 置き土産と路地裏の王
帝都の空を覆うのは、腐った羊水ごとき灰色の淀み。
石畳を叩く雨音だけが、路地裏の静寂を支配している。酒場の軒先、そこに佇む男――クロト。
特徴的な三白眼の下に浮かぶのは、夜なべの研究が刻んだ濃い隈。湿気で額に張り付く黒髪。かつて白かったローブの汚れこそが、「Sランクパーティ」の栄光から転落した現状の証明。
「……聞こえたかい、クロト。君はもう不要なんだよ」
ミスリルの鎧よりも硬質で、そして残酷な響き。勇者アルスの宣告。
背後に控えるのは、豪奢なプラチナブロンドの聖女セレスティアと、燃える赤髪を短く刈り込んだ女騎士レオン。雨をも弾く聖女の純白、威圧的に軋む騎士の重厚。対するクロトのみすぼらしさ。
「僕の支援魔法(バフ)は地味だからね。……君たちには物足りなかったか」
淡々とした吐露。怒号も、涙もない。ただ白衣のポケットの中、指先だけが踊る。
「地味? 役立たずの間違いだろ。行こう、二人とも」
アルスが踵を返す。その刹那。
すれ違いざま、クロトの手が動く。セレスティアの白磁の首筋へ。レオンの甲冑の隙間、無防備な脇腹へ。ごく自然な、接触。
込めたのは別れの挨拶? 否。数年を費やし編み上げた、神経系書き換え術式――『遅効性の呪言』。
「……あ」
「んッ……?」
漏れ出る甘美な吐息。ビクリと跳ねる聖女の肩、自身の胴を抱く女騎士。だが、先を行く勇者にその異変は届かない。
「君たちの身体、僕がいないと何も感じられないようにしておいたよ。……いや、訂正しようか。『僕以外』では耐えられないほど感じるようにね」
雨音に溶ける囁き。誰の耳にも届かぬ遺言。
背を向け、クロトは闇へ。路地裏の深淵、極秘裏に用意した『治療院』という名の蜘蛛の巣が、獲物を待ち構えているのだから。
◇◇◇
数日後。帝都最下層、陽光すら忌避するスラムの一角。
古びた魔道具のモニター、冷めたコーヒー。画面の向こうでは、彼を追放した『光の剣』がダンジョン攻略に挑んでいる。
だが、異様。
画面の中、聖女セレスティアがスライムの粘液を浴びただけで、地面に蹲り、奇妙な痙攣を繰り返している。
「ひぐっ、あ、あぁっ……! なに、これ……服が、擦れて……っ!」
紅潮する清楚な貌、裏返る白目。世界中に配信される、聖女の醜態。
クロトは口元を歪め、三白眼を細める。
「計算通りだね。さあ、堕ちておいで」
治療院の扉を叩く音。激しく、焦れたようなリズム。
第2章: 剥き出しの神経と配信の檻
「はぁ、はぁ、っ……クロ、ト……さん……!」
扉が開くと同時になだれ込む、むせ返るような百合の香りと汗の臭気。
セレスティア。国一番と謳われる聖女の面影など、どこにもない。泥と不明瞭なシミに汚れたシスター服、乱れた金糸、涙で潤む虚ろな碧眼。
敷居を跨ぐことすら叶わず、四つん這いで床を這う。
「助け、て……身体が、熱いのです……皮膚の下に、蟲がいるみたいで……っ!」
身じろぎ一つで、衣服と肌が擦れる「衣擦れ」の音が、脳髄を焼き切る激痛と快楽へ変換される。クロトが仕込んだ『感覚倍化』の呪い。
風が吹けば絶頂し、布が触れれば拷問に近い刺激。今の彼女は、歩く性感帯そのもの。
「おや、セレスティア。僕みたいな無能に何の用だい?」
椅子に座ったまま、組んだ足を解こうともしないクロト。
ガタガタと震える手で、クロトの擦り切れたブーツにしがみつく聖女。
「わ、私が、悪かったのです……謝りますから、この熱を、消して……!」
「消す? もったいない。君のその反応は、芸術的だよ」
懐から取り出した小さな魔石。宙に浮き、淡い光と共に録画を開始するレンズ。
向けられた視線に、セレスティアの身体が強張る。
「い、嫌……撮らないで……こんな、はしたない姿……」
「選択肢を与えるよ、聖女様。このまま一生、風に撫でられるだけで涎を垂らす狂人として生きるか。それとも――」
ブーツの先で、彼女の豊満な胸を、サラシ越しにグイと踏みつける。
「あ゛っ♡!?」
「僕の管理下で、その過剰な感度を『処理』してもらうかだ」
踏みつけられた痛み? いや、それを凌駕する圧倒的な快楽。弓なりに反る背中、喉奥から漏れる獣の喘ぎ。
理性は拒絶を叫ぶ。だが、クロトに触れられた箇所だけが、地獄のような焦燥感から解放される唯一の救済。
「お、お願い、します……管理、して……クロトさんの、手で……ッ!」
「いい子だ。じゃあ、まずはその窮屈そうなサラシを外して、視聴者の皆さんに挨拶しようか」
指を鳴らす音。起動する配信魔道具。
『元聖女の緊急治療』――不穏なタイトルがネットの海へ。閲覧数カウンターが、異常な速度で回転を始めた。
第3章: 鋼鉄の処女、溶解する
深夜の治療院に響く、金属の鈍重な摩擦音。
現れたのは女騎士レオン。未だ、あの重厚な全身鎧を纏ったまま。否、脱げなかったのだ。
鎧の内側、硬い革と金属に密着した肌は限界を超えている。歩くたびに内股が装甲に擦れ、脇腹が締め付けられる。その摩擦熱だけで、意識が飛びかけるほどの法悦。
「ク、クロト……貴様、何をした……!」
剣を抜こうにも、指先に力が入らない。柄の革巻きが掌に触れる感触だけで、腰が砕けそうになる。
ガシャン、と無様に膝をつくレオン。視線の先で展開される、信じ難い光景。
「ひぐっ、あぁ……! もっと、もっとコメントください……! 私は、雌犬ですぅ……ッ!」
寝台の上、一糸まとわぬ姿でM字に開脚するかつての聖女。清廉潔白の象徴が、今はただの肉。
無表情のクロトが、彼女の熟れきった蕾へ冷たいスライムの粘液を垂らす。そのたびに聖女は白目を剥き、蜜を噴き上げるように痙攣する。
「セ、セレスティア……!? き、貴様、仲間になんてことを!」
「仲間? 彼女は今、君たちとの冒険より充実しているようだけど?」
クロトの視線。レオンの顔が朱に染まる。
怒りではない。その冷徹な眼差しが鎧越しの肌を撫でた錯覚、ビクリと震える内腿。
「レオン、君はずっと我慢していたね。その堅苦しい鎧の下で、誰かに無理やり剥かれたいと願っていた」
「ち、違う! 私は騎士だ、誇り高き……っ、あぁッ!?」
指先一つの動作。不可視の『神経操作』の糸が、鎧の留め具を弾き飛ばす。
ガコン、と音を立てて外れる胸当て。冷たい外気が、汗ばんだEカップの双丘を直撃。
「ひゃうッ!?」
「騎士様が、こんなに勃っているよ」
露わになった先端。興奮で赤く充血し、はち切れんばかりに尖っている。
容赦なく、その敏感な突起を指で弾くクロト。
「ぎぃやぁぁぁぁぁッ!!」
絶叫。苦痛ではない。脳髄を焼き切る致死量の快楽。
膝から崩れ落ち、額を床に擦り付ける。
「殺せ……っ! こんな辱めを受けるくらいなら、いっそ殺してくれ……っ!」
「死なせないよ。君にはこれから、その鎧を一枚ずつ脱ぎながら、どれだけ感じているか実況してもらうんだから」
影がレオンを覆い尽くす。
抗えない。細胞の一つ一つが、この男の指先を求めて疼く。
女騎士の瞳から消え失せる誇りの光。満ちていくのは、濁った欲情の色。
第4章: 崩壊する勇者、完成する地獄
「クロトォォォォォッ!!」
物理的に粉砕される扉。
飛び込んできたのは、聖剣を構えた勇者アルス。血走る目、こめかみに浮かぶ青筋。
無理もない。宿屋での休息中、ネットを独占していたのはかつての仲間たちの信じがたい痴態なのだから。
「よく来たね、アルス。特等席を用意していたよ」
部屋の中央、スポットライトごとき照明の下に立つクロト。
足元に侍る、二人の「肉奴隷」。
首輪をつけられ、犬のように舌を出してクロトの指を舐めるセレスティア。
全裸で四つん這いになり、自らの豊満な臀部を突き出しながら、主人の視線を待つレオン。
「き、貴様ら……正気か!? 騙されているんだろ!? 今すぐ助けてやる!」
振り上げられる聖剣。だが、その刃が振り下ろされることはない。
「やめてぇッ!!」
「クロト様に近づくなッ!!」
絶叫したのは、セレスティアとレオン。
あろうことか、二人はクロトを庇うようにアルスの前に立ちはだかったのだ。
「な……んだと……?」
「クロト様を傷つけたら……私、もうイけなくなっちゃう……!」
「私の身体を管理できるのは、この御方だけだ! 貴様のような凡庸な男に、私の感度が扱えるものか!」
罵倒。拒絶。
信頼していた仲間からの言葉は、物理的な攻撃以上にアルスの精神を抉る。
「そ、そんな……俺たちは、世界を救う『光の剣』じゃ……」
「救済ならここにあるよ、アルス」
クロトが二人の頭を撫でる。それだけで、セレスティアは涎を垂らして崩れ落ち、レオンは恍惚の表情で白目を剥く。
パァンッ、と乾いた音。二人の尻を同時に叩いた音。
アルスの心の中で、何かが決定的に折れる音。
「見せてあげなさい。君たちが誰の所有物なのか」
「「はいぃぃぃッ♡!!」」
勇者の目の前で始まる背徳の宴。
服を着たままのクロト。競うようにベルトへ手をかけ、ズボンを下ろしにかかる二人の美女。
濡れた音。卑猥な吸引音。そして、「美味しい、美味しい」という狂った譫言。
「う、あ……あぁ……」
カランと音を立てて床に落ちる聖剣。
膝をつくアルス。目の前の光景から目を逸らすこともできず、ただ口を開けて呆然とするのみ。
配信のコメント欄が、勇者の絶望を嘲笑う文字で埋め尽くされていく。
カメラに向かい、冷ややかに微笑むクロト。
「さて、今日のメインイベントだ。勇者君、君も参加するかい? ……カメラマンとしてね」
第5章: 終わらない夜と孤独な王
あれから半年。
『光の剣』の快進撃は続く。
魔王軍幹部を次々と撃破し、大陸中に轟くその名。
戦闘中の神がかった動き。攻撃を受けることへの異常な忌避感――否、痛みすら快楽に変換してしまう狂気じみたタフネスが、彼女たちを無敵の戦士に変えたのだ。
だが、それは表の顔に過ぎない。
「んっ、はぁっ……! 皆さん、こんばんわぁ……♡」
「今夜も、躾の時間だ……見ていてくれ……」
夜の帳が下りれば、世界中の視聴者がモニターの前で固唾を飲む。
帝都の一等地に建てられた豪邸。その地下室で始まる、クロトによる「メンテナンス」配信。
セレスティアもレオンも、昼間の凛とした姿はない。あるのは、クロトの与える刺激なしでは呼吸すらできぬ、哀れで幸福な家畜の姿だけ。
高級な革張りのソファ、揺れるワイングラス。
足元には、虚ろな目をした元勇者アルス。カメラを構え、這いつくばる男。言葉はない。ただ、最高の画角で彼女たちの痴態を切り取ることだけに、残された理性の全てを費やす。
「クロト様、お願いします……早く、その熱い楔を……!」
「待ちくたびれました……奥まで、かき回してください……ッ!」
懇願する二人。静かにグラスを置き、立ち上がるクロト。
「仕方ないね。君たちは、僕がいないと本当にダメなんだから」
冷徹な瞳の奥に灯る暗い情熱。
復讐は終わった。だが、支配に終わりはない。
彼女たちの感度が限界を超えて崩壊するその日まで、あるいは彼自身がこの歪な快楽に溺れて朽ちるまで。
この夜は続いていく。
「さあ、始めようか」
伸びる手。
地下室の闇に溶ける、歓喜の絶叫。
【完】