第1章:奈落の底、血塗られた泥の中で

激しい豪雨が、地下迷宮「神の墓標」の冷たい岩肌を濡らしていた。
容赦なく降り注ぐ水滴は、暗黒に沈む石畳を叩き、重苦しい音を反響させている。
泥水にまみれた石畳の上で、ルドは這いつくばっていた。
指先は凍え、泥を掴む爪の間からじわりと血が滲む。
胸の奥からせり上がる、焼けた鉄のような生臭い味が、喉をじりじりと焼いた。
[A:ルド:冷静]「がはっ……、あ、ぐ……」[/A]
視線を落せば、己の胸を深く、無慈悲に貫く、黄金に輝く白銀の刃。
それはかつて、果てしない死線を共に越え、背中を預け合ってきたはずの男の武器だった。
[Impact]《太陽の聖剣》[/Impact]が、ルドの心臓のすぐ横で、脈打つ肉を無残に焦がし続けている。
じゅぶ、と肉の焼ける悍(おぞ)ましい音が鼓膜に直接響き、白い煙が胸元から立ち上る。
[A:ガルム:喜び]「あはは! 見苦しいねえ、ルド。そんな泥まみれの顔、実によく似合っているよ」[/A]
まばゆい純白のプレートアーマーに身を包んだ勇者ガルムが、見下すような冷笑を浮かべて立っていた。
神聖な光をまとうはずの鎧は、この暗い迷宮にあってもなお、神々しい金色の光輪を放っている。
濡れた金髪が額に張り付いていても、その容姿は民衆が崇める「絵本の中の英雄」そのもの。
だが、その美しい青い瞳の奥に蠢(うごめ)いているのは、ドブ川の底に溜まった泥のような、醜悪極まりない嫉妬と優越感だった。
[A:ガルム:冷静]「君の『模倣(コピー)』なんて不気味な能力は、美しく清らかな英雄譚には不要んだよ。民衆が称えるべきは、唯一無二の光である私一人。泥臭い裏方は、歴史の裏で大人しく消え失せるのがお似合いさ。これからは私がすべての手柄を独り占めする。死ね、道化師」[/A]
ガルムは靴底でルドの頭を踏みつけ、容赦なく聖剣を引き抜いた。
肉と骨が削られる鈍い音が、静まり返った最下層に響き渡る。
ルドの胸から、堰(せき)を切ったように赤い生血が溢れ出し、冷たい泥水を赤黒く染めていく。
視界が急激に彩度を失っていく中、ルドは震える唇を開いた。
[A:ルド:絶望]「……ガ、ルム……お前、は……」[/A]
[A:ガルム:狂気]「さあ、お片付けの時間だ。この血まみれのゴミを、世界の底へ放り込め!」[/A]
ガルムの合図に、控えていた神殿の兵士たちが一斉に動き出す。
無造作に、まるで汚物を処理するように、ルドの脇腹を金属の長靴が激しく蹴り飛ばした。
視界がぐにゃりと歪み、上下が反転する。
体が宙を舞い、底の知れない奈落の境界線を越えていくのを、ルドはただ無感覚に受け入れていた。
[Pulse]ドクン、ドクンと、鼓動が急速に、その熱を失っていく。[/Pulse]
暗黒が、牙を剥いてルドの全身を包み込む。
どこまでも深く、光の届かない虚無の穴。
全身の皮膚を切り裂くような極寒の風を浴びながら、ルドの脳裏に、かつて奴隷として刻まれた首元の『隷属の刻印』が、今更になって焼けるように熱く疼(うず)き出していた。
信じていた仲間に、全てを奪われ、捨てられた。
その絶対的な裏切りの事実が、胸の奥で燻(くすぶ)っていた命の残り火を、一瞬にして爆発的な青い炎へと変えていく。
[A:ルド:怒り]「[Shout]まだ……死ねるか……! お前たちを、絶対に……![/Shout]」[/A]
落下した先は、完全なる沈黙が支配する暗黒の世界だった。
だが、死の女神はルドを見放さない。
奇跡的に突出していた鋭い岩肌が、ルドの古びた灰色のマントを激しく引き裂きながらも、その墜落の勢いを殺したのだ。
どさりと、硬い地面に叩きつけられる。
全身の骨が悲鳴を上げる激痛に耐え、血塗られた右手を前へと這わせる。
冷え切った指先が、妙に冷たく、禍々しい金属の質感に触れた。
[System]《警告:高濃度魔力不純物『深淵の封印鎖』を検知。精神汚染の危険性大。接触を推奨しません》[/System]
脳内に直接響く機械的な警告音。
ルドはそれを、狂気混じりの笑みで無視した。
全身の傷口から溢れ出す赤い血が、錆びついた黒い鎖に伝わり、吸い込まれるように吸着していく。
その瞬間、[Flash]闇の光[/Flash]が、大迷宮の最底辺を白光よりも鋭く塗り潰した。
第2章:深淵の王女と結ぶ血の盟約

[FadeIn]不気味な光が収まった暗闇の中で、一人の少女が、凛として佇んでいた。[/FadeIn]
風もないはずの奈落の底で、白砂のような細い髪が、ふわりと重力を無視して舞う。
血のように鮮烈な紅い瞳が、鋭い氷刃のようにルドを射抜いた。
その額、白皙(はくせき)の肌から突き出た、小さな二本の漆黒の角。
ドレス of 深いスリットから覗く、吸い込まれるように白い太ももと、その細い手首に絡みつく、重厚で錆びついた鎖。
退廃的な美と、圧倒的な威厳を放つ少女。
彼女こそ、三百年前の神魔戦争の果てに、世界の理から捨てられ封印された「深淵の王女」エリシアだった。
[A:エリシア:冷静]「この深淵に堕ちて、あろうことか私に触れようとした愚者は、貴様が初めてだぞ。死にかけの人間よ」[/A]
[A:ルド:冷静]「……お前が、世界を滅ぼす、魔族の、王女か……」[/A]
[A:エリシア:驚き]「ほう、命の灯火が今にも消えかけているというのに、私の前で怯えもしないか。……む? これは……」[/A]
エリシアの紅い瞳が、驚愕に大きく揺れた。
彼女の肉体と精神を蝕み、三百年もの間苦しめ続けていた、神々による「魂を焼き尽くす不可避の呪い」。
その呪いの一部が、黒い霧となって鎖を伝わり、ルドの体へと急速に流れ込んでいく。
ルドは、自身の生得能力『万能模倣』を用い、その呪いの構造をリアルタイムで写し取り、自らの肉体へと引き受けていた。
[A:ルド:狂気]「[Tremble]あ、がはっ……! はは、凄いな、これが、世界を縛る、神の呪い、か……![/Tremble]」[/A]
骨の髄を直接炙(あぶ)られるような激痛が、ルドの全身の神経を駆け巡る。
しかし、彼の左目は狂気に満ちた鋭い光を宿したまま、エリシアをまっすぐに見据えて離さない。
[A:ルド:冷静]「俺もお前も、世界に捨てられた。なら、手を組もう。お前の力を俺に写せ。お前を縛る世界を、俺が丸ごと模倣して壊してやる」[/A]
エリシアは小さく息を呑んだ。
冷たい封印の檻の中で、人間に裏切られ、ただ一人、孤独に凍えていた三百年の時間。
そこに、ルドの剥き出しの執念と復讐の炎が、熱い楔(くさび)となって、彼女の閉ざされた心へ深く打ち込まれた。
[Sensual]
[A:エリシア:愛情][Whisper]「面白い。貴様が私の痛みを取り去り、私の影になるというのなら、私は喜んでそのすべてを捧げよう。私たちは共犯者だ、ルド」[/Whisper][/A]
エリシアが、ルドの血に塗れたボロボロの体を、そっと愛おしそうに抱き寄せた。
冷たく絹のような彼女の肌から、甘く、だが頭の芯を痺れさせるような破壊的な魔力の香りが漂う。
彼女の細い白い指先が、ルドの首元に残る、あの忌まわしい奴隷の刻印を、なぞるように愛撫した。
[A:エリシア:愛情][Whisper]「私の『始祖の闇』を受け入れろ。貴様の体を、私の色で染め上げてやる……」[/Whisper][/A]
ふたりの熱い吐息が交差する。
エリシアの潤んだ唇が、ルドの傷ついた喉元に優しく触れ、かすかな熱が二人の肉体の境界線をドロドロに溶かしていく。
[/Sensual]
[System]《能力『万能模倣』発動:【深淵の終焉(アビス・トリニティ)】を完全に模倣しました。エラーをバイパス。肉体再生プロセスを開始します》[/System]
ドクン、と黒い波動が弾けた。
漆黒の魔力がルドの全身の傷口に入り込み、肉を縫い合わせ、失われた血を瞬時に満たしていく。
死の淵から蘇ったルドの瞳に、暗く、決して消えない底知れない闘志が宿った。
<h3>第3章:虚飾の英雄と生贄のシステム</h3>

地上は、偽りの光に満ち満ちていた。
光り輝く聖都の至る所に、ルドの似顔絵が描かれた手配書が貼られている。
『魔王を復活させ、世界を焦土に変えようとした最悪の大罪人』。
昨日まで、ルドが歴史の影で、その命を救ってやったはずの民衆。
彼らは今、口々にルドの死を叫び、あの裏切り者の勇者ガルムを救世主として称えていた。
[A:エリシア:冷静]「愚かなものだな。光の届かぬ場所で、あの英雄とやらは何を語るのか」[/A]
深くフードを被ったルドと、魔力を隠蔽したエリシアは、喧騒に包まれる「聖都建国記念祭」の裏側、大聖堂の地下深くへと侵入していた。
湿った冷たい石壁に囲まれた、極秘の地下研究室。
重い鉄扉の先に広がっていた光景に、二人の呼吸が止まる。
そこにあったのは、緑色の怪しい液体で満たされた無数の魔力カプセル。
そして、その中に閉じ込められた、痩せ細った幼い孤児たちの姿だった。
[A:ルド:冷静]「これは……魔力の強制抽出ラインか。奴らの言う『神の奇跡』の正体は、これだったのか」[/A]
[A:エリシア:狂気]「やはり、あの光の英雄とやらは、私以上に浅ましく、薄汚いな。他者の命を燃料にして、神を騙るとは。吐き気がする」[/A]
引き出しから見つけた極秘書類には、ガルムの署名と聖教団の血印が、はっきりと刻印されている。
ガルムの真の目的。
それは、エリシアの内に眠る「始祖の魂」を最後の極大燃料とし、自らが不老不死の「新世界の神」へと昇格することだった。
[A:ルド:怒り]「奴らが光を騙るなら、俺たちは極限の闇でその偽りの光を喰い尽くすのみだ。……ガルム、お前のすべてを、ここで終わらせる」[/A]
その時、冷たい静寂を破り、背後から重苦しい金属の足音が響き渡った。
[A:アズエル:冷静]「そこまでだ、教団の敵め。……いや、かつての『便利屋』、ルドだな」[/A]
灰鋼色の短い髪。
その大柄な体躯を分厚いプレートアーマーで包んだ男が、身の丈ほどもある巨大な大剣を引き抜き、退路を塞いでいた。
帝国最強にして、最も高潔とされる騎士、アズエル。
その琥珀色の瞳には、一点の曇りもない堅固な「正義」が宿っていた。
<h3>第4章:騎士アズエルの覚醒、交差する刃</h3>

[A:アズエル:怒り]「[Shout]国の安寧を脅かす悪党め、ここで我が剣の錆となれ![/Shout]」[/A]
地を蹴る轟音。
アズエルが、その巨体に似合わぬ神速で突進する。
大剣の一撃は、周囲の空気を爆発的に引き裂き、堅牢な床の石畳を粉々に粉砕した。
ルドは瞬時にエリシアの前に立ち塞がり、己の右腕を黒い硬質結晶で覆う。
[Impact]ガギィィィン!!![/Impact]
金属と黒い結晶が激突し、凄まじい衝撃波が地下室を揺らす。
山をも容易に引き裂くような、アズエルの重圧。
ルドの足元の石畳が、その圧力に耐えかねて蜘蛛の巣状にひび割れ、陥没していく。
[A:ルド:冷静]「相変わらずの馬鹿力だな、アズエル。だが、お前が文字通り命をかけて守るその『国』が、何の上に成り立っているか、その目で確かめたことはあるか?」[/A]
[A:アズエル:冷静]「黙れ! 罪人の欺瞞(ぎまん)の言葉など、我が剣には通じん!」[/A]
流れるような連撃がルドを襲う。
暴風のごとき剣風に、ルドは防戦一方に見える。
だが、その灰色の左目は、アズエルの筋肉の弛緩、魔力の流れ、剣技の全軌道を克明に捉えていた。
脳内の『万能模倣』が、その技術を神速で再現(トレース)していく。
ルドはあえて、アズエルが放った渾身の横薙ぎを、左肩で受け止めた。
肉に刃が鋭く食い込み、鮮血が飛び散る。
[A:アズエル:驚き]「何……!? なぜ避けぬ、防がぬ!」[/A]
[A:ルド:冷静]「アズエル、お前が仕える『光』の裏で、どれほどの子どもたちの命が搾り取られ、消えたか知っているか? お前が命じるその正義は、ただの生贄(いけにえ)のシステムだ」[/A]
ルドは血に染まった左手で、激動するアズエルの額に直接触れた。
[System]《能力『万能模倣・逆転投射』:脳内メモリに記録された『生贄の儀式の記憶』を対象の精神へダイレクト送信します》[/System]
[A:アズエル:絶望]「[Tremble]ぐ、あ、あたまが……! これは……何だ、この、子供たちの叫び声は……!? 何が起きている……![/Tremble]」[/A]
アズエルの脳裏に、教団の地下深くで子供たちが絶叫し、魂を削られて塵(ちり)となって消えていく、生々しく悍ましい光景が直接流れ込む。
絶対の正義を信じていた騎士の剣が、激しい精神的動揺とともにピタリと制止する。
その刹那、天井の暗闇から、無音で教団の直属暗殺部隊が躍り出た。
彼らの目的は、真実を知ったルドの抹殺、そして不都合な真実を見て動揺したアズエルの口封じだった。
「二人まとめて、ここで神の光の塵に消え去るが良い!」
無数の、猛毒を塗られた神聖光矢が、アズエルの無防備な背後へと一斉に放たれる。
[A:ルド:怒り]「[Shout]させるか![/Shout]」[/A]
ルドは瞬時にアズエルの前に割って入り、両手を大きく広げた。
[Magic]《剛殻の盾(アイアン・クラッド)》[/Magic]
アズエルが持つ固有の防御結界を、ルドが完全に『模倣』し、眼前に巨大な半透明の鉄壁を展開する。
放たれた光矢の豪雨が、甲高い金属音を立てて防壁に弾かれ、空しく霧散していった。
[A:アズエル:驚き]「お前……なぜ、裏切り者の私を、守った……」[/A]
[A:ルド:冷静]「お前はまだ、自分の頭で考えられる人間だ。死に値する腐った人間ではない。……その剣を、本当は何のために振るうべきか、もう分かったはずだ」[/A]
アズエルは己の震える手を見つめ、そして、血の汚れを払うように大剣を構え直した。
今度はルドに刃を向けるのではなく、彼と背中を合わせるようにして。
[A:アズエル:怒り]「……我が騎士道は、無辜(むこ)の子供たちの涙の上に成り立つものではない。ルド、ここを生き延びたら、俺もお前たちの旅に同行する。この偽りの光を、この手で叩き割るためにな!」[/A]
<h3>第5章:肉体崩壊、魂を繋ぐ紅き接吻</h3>

大聖堂の巨大なステンドグラスが、血のように不気味な黄金の光で染まっていた。
街中の人々が突如として苦しみに悶え始め、その体内から光る粒子が天へと吸い上げられていく。
ガルムによる、最悪の「神降ろし」の儀式が、ついに最終段階を迎えていた。
[A:ガルム:狂気]「素晴らしい! 見たまえ、この圧倒的な神の力を! 私は不滅の神になるのだ!」[/A]
大聖堂の最上部、祭壇。
不完全な神の器と化し、全身を肥大化した光の触手で覆われたガルムから、触れるものすべてを蒸発させる極大の熱線が放たれた。
[A:アズエル:怒り]「[Shout]ここは俺が食い止める! 行け、ルド![/Shout]」[/A]
アズエルが大剣を床に突き立て、全身の魔力を限界まで放出して『剛殻の盾』を最大展開する。
だが、神の力を得たガルムの『太陽の聖剣』から放たれる熱線は、その絶対防御の盾すらも、バターのように融解させていく。
ルドは前に踏み出そうとした。
だがその瞬間、全身の血管が黒く浮き上がり、針で刺されたような激痛が脳髄を突き抜けた。
目から、鼻から、耳から、黒い不純な血がポタポタと冷たい床に滴り落ちる。
[System]《致命的警告:『万能模倣』の過剰使用により、自己境界が完全に崩壊しつつあります。本源的記憶の80%がすでに消失。これ以上の使用は、存在自体の消滅(デリート)を意味します》[/System]
[Think]俺の……故郷の名前は……何だった?
幼い頃、俺の手を引いて優しく笑ってくれた、あの人の顔は……?
思い出せない……。何も、何も残っていない……。[/Think]
膝から崩れ落ちそうになるルドの体を、背後からエリシアが、必死に抱きしめた。
彼女の美しい白磁の顔は、かつて見せたことのない、涙で濡れていた。
[A:エリシア:悲しみ]「[Tremble]もういい、ルド! これ以上模倣すれば、貴様は貴様でなくなってしまう! 私を置いて逃げろ! 私の呪いを返し、ここから立ち去れ![/Tremble]」[/A]
ルドは、消えゆく意識の糸を必死に繋ぎ止めるように、エリシアの冷たい頬に、震える手を伸ばした。
その灰色の左目が、かすかに、だが力強く笑う。
[A:ルド:愛情]「……暗闇の底で、俺の名前を呼んでくれたのは、お前だ、エリシア。他のすべてを忘れても……お前のことだけは、絶対に忘れない。お前のすべてを、俺に写せ」[/A]
[Sensual]
エリシアは、胸を焦がすほどの激しい愛おしさと、この不条理な世界への怒りに身を震わせた。
彼女はルドの首筋、奴隷の刻印の上に、鋭い牙を深く、深く突き立てた。
[A:エリシア:愛情][Whisper]「ああ、私の半身よ。私の魂のすべてを、貴様に注ぎ込もう。二度と、私から離れることは許さぬ」[/Whisper][/A]
[Pulse]ドクン、ドクンと、二人の心音が完全に一つに重なり合う。[/Pulse]
牙から、エリシアの純粋な「始祖の闇」のコアが、熱い不純物となってルドの体内へと流れ込んでいく。
肉体が、魂の波形が、甘美に溶け合い、爆発的に再構築されていく。
ルドの澱(よど)んだ灰色の左目は、エリシアのそれと同じ、燃え盛るような紅蓮の色へと変貌を遂げた。
[/Sensual]
<h3>第6章:偽りの神を屠る、新たなる夜明け</h3>
[Flash]天地を裂く、漆黒の斬撃。[/Flash]
ルドが引き抜いた、深淵の闇を纏う模倣の刃は、ガルムが絶対の自信を誇っていた「絶対神聖障壁」を、薄い紙切れのように容易く引き裂いた。
[A:ガルム:恐怖]「[Tremble]ば、バカな……! 人間風情が、ゴミ屑のような模倣者が、私の神聖なる力を上回るはずがない! 私は選ばれし勇者だぞ! 神になる男だぞ![/Tremble]」[/A]
[A:ルド:冷静]「お前が神の力を誇るなら、俺はその神ごと模倣して、この泥まみれの地に引きずり下ろすまでだ」[/A]
ルドの背後に、ガルムによって「奇跡」の生贄にされてきた、何千、何万もの孤児たちの、無念と憤怒の影が立ち上る。
それは、これまで踏みにじられてきた、力なき者たちの復讐の咆哮だった。
[A:ルド:怒り]「[Shout]消え失せろ、偽りの光![/Shout]」[/A]
[Impact]《深淵の終焉(アビス・トリニティ)》[/Impact]
漆黒と紅蓮の混ざり合う刃が、ガルムの脳天から一文字に振り下ろされた。
神聖な光の殻が内側から爆破され、簒奪(さんだつ)されていた魂のエネルギーが、一気に夜空へと還っていく。
[A:ガルム:絶望]「[Shout]いやだ、私は神に……私は、光の勇者だァァァ!!![/Shout]」[/A]
神の力を失ったガルムの肉体は急速に枯渇し、干からびた老婆のような姿となって、大聖堂の冷たい床に崩れ落ちた。
やがて、その醜い体も灰となって、吹き抜ける風に掻き消えていく。
静寂が、ゆっくりと大聖堂に戻ってきた。
壊れた天窓から差し込むのは、不気味な黄金の光ではない。
本来の、静かで美しい星空。そして、東の空からゆっくりと昇り始める、本物の夜明けの光だった。
[A:アズエル:冷静]「終わったな。……いや、ここから始まるのか」[/A]
アズエルは重い大剣を静かに鞘に収め、寄り添う二人の姿を見つめた。
ルドの体は傷だらけだったが、その手はエリシアの手と、決して離れないように、強く、硬く握りしめられていた。
[A:エリシア:愛情][Whisper]「ルド。私の、大切なルド。私の名前が、わかるか?」[/Whisper][/A]
ルドは、紅蓮に染まった左目でエリシアを優しく見つめ、不器用な、だが確かな、幸福に満ちた笑みを浮かべた。
[A:ルド:冷静]「ああ。お前はエリシア。俺のすべてだ。……記憶は半分消えたが、お前が俺を呼んでくれる限り、俺は何度でも、君の騎士として生まれ変われる」[/A]
[A:エリシア:喜び]「ええ、私が貴様のすべてを記憶している。どこまでも行こう、ルド」[/A]
偽りの神を殺し、真の仲間、そして生涯の伴侶を得た【万能模倣者】の旅は、ここから新たなる、そして真実の英雄譚として紡がれ始める。
新生した夜明けの光が、寄り添う二人の影と、彼らを支える頼もしい騎士の姿を、美しく、どこまでも美しく照らし出していた。