接続深度(シンクロ・レート)計測不能:氷の聖女は配信裏で溶かされる

接続深度(シンクロ・レート)計測不能:氷の聖女は配信裏で溶かされる

24 3611 文字 読了目安: 約7分
文字サイズ:
表示モード:

「……ダメ。そんな目で見ないで。今、三百人が見てるのよ」

震える声で彼女がそう囁いた瞬間、同接カウンターの数字が跳ね上がった。

画面の向こうの熱狂など知らぬげに、俺は彼女の脊髄に埋め込まれた『コネクタ』へ、冷たい指先を這わせる。

第一章 聖域のノイズとコメントの熱狂

『氷の聖女』こと、S級探索者・エリナ。

彼女の配信は、常に静謐かつ残酷だ。触れるもの全てを凍てつかせるごとき冷徹な美貌と、圧倒的な殲滅力。ダンジョン配信の頂点に君臨する彼女を支えるのは、画面には決して映らない『管理者(ハンドラー)』である俺、城島の仕事だった。

「城島……、熱い。ノイズが、走ってる……」

通信機越しに響くエリナの吐息は、湿り気を帯びて俺の鼓膜を撫でる。

俺たちの関係は、単なるサポート役とプレイヤーではない。

『感覚同調(センス・シンクロ)』。

彼女が受けるダメージを俺が肩代わりし、俺が送る『魔力(マナ)』を彼女が快楽として受け取る。その特殊な契約こそが、彼女を無敵たらしめている秘密だった。

現在の深度は地下90階層。ボス部屋の手前。

カメラは彼女の背中を映しているが、その純白の戦闘服の下で、肌がどれほど紅潮しているかを知っているのは俺だけだ。

『おい今日の聖女様、吐息荒くないか?』

『ボス前の緊張感ハンパない』

『そこがいいんだよ黙って見とけ』

『耳が幸せすぎるんだが』

『なんか顔赤くね? 状態異常?』

コメント欄(チャット)の奔流がモニターを埋め尽くす。

彼らは知らない。この荒い息遣いが、死への恐怖ではなく、俺が意図的に流し込んでいる微弱な電流――『愛撫』に近い信号によるものだということを。

「エリナ、心拍数が上がりすぎだ。少し出力を下げるか?」

手元のコンソールを操作し、俺はわざとらしく問いかける。声は冷静さを装っているが、俺自身、彼女と共有された感覚回路を通じて、下腹部に重い熱が溜まっていくのを感じていた。

「嫌っ……! 下げないで。お願い、もっと……深く、繋いで」

配信に乗れば『戦闘への渇望』と誤解されるであろうその言葉。

だが、俺にはわかる。それは依存だ。

彼女の脳髄は、俺が制御する信号なしでは、もはや戦闘の興奮(エクスタシー)を感じ取れなくなっている。

「ワガママな聖女様だ」

俺はスライダーを指先で弾く。

カチリ、と音を立ててリミッターが一段階外れる。

その瞬間、画面の中のエリナがビクリと背中を反らせ、膝から崩れ落ちそうになるのを、剣を杖にして辛うじて耐えた。

『!?』

『今、なにが起きた?』

『被弾してないよな?』

『聖女様、あえ……声、漏れてたぞ』

「……あ、あぅ……ッ、城島ぁ……ひどい、いきなり……!」

「敵が来るぞ。集中しろ」

視覚共有のモニターには、醜悪なオークの群れが迫っている。

だが、エリナの焦点は定まっていない。

彼女の神経は今、目の前の怪物よりも、脳内を駆け巡る俺からの『楔』に支配されている。

第二章 セーフティ・ルームの焦燥

ボス討伐を終えた直後のセーフ・エリア。

配信のステータスは『休憩中(音声ミュート)』に切り替えられている。

だが、俺たちの『接続』は切れていない。

薄暗いテントの中、エリナは虚ろな目で俺を見上げている。戦闘服は汗で肌に張り付き、その曲線美を露わにしていた。彼女は震える手で、自らの首筋にある接続端子(ポート)をまさぐっている。

「抜かないで……まだ、抜かないで」

「配信は終わった。クールダウンが必要だ」

「ダメ、無理。今切られたら、私、壊れちゃう……」

彼女は這いつくばるようにして俺の足元にすがりついた。

『感覚同調』の副作用。

戦闘中の過剰な興奮状態から急激に現実へ引き戻される際の落差は、強烈な虚脱感と渇きをもたらす。

それを埋めることができるのは、管理者である俺の『直接的な接触』だけだ。

「視聴者が待ってるぞ。早くコメントに反応してやれ」

「どうでもいい……! あいつらなんて、何も知らないくせに……! 私のここを、こんなに熱くしてるのが誰なのか、教えてやりたい……ッ」

エリナの瞳孔は開ききっている。

理性が溶け出し、本能だけが残った瞳。

俺は彼女の顎を指で持ち上げ、冷ややかに告げる。

「ダメだ。まだ『お預け』だ」

「ひっ……!」

「次の階層に行くまで、このままの感度でいろ。俺の声が聞こえるだけで腰が砕けるような、この惨めな状態でな」

残酷な命令。

しかし、共有された感覚回路を通じて、彼女の子宮の奥がキュンと疼いたのが伝わってくる。

拒絶ではない。歓喜だ。

彼女はもう、この支配なしでは息すらできない。

「あぁ……城島、あなたって本当に……最悪の……」

彼女は熱い吐息を漏らしながら、自身の太腿をきつく擦り合わせた。

その仕草は、配信中の清楚な聖女とはかけ離れた、雌の獣のものだ。

俺は手元の端末を操作し、彼女の感覚感度(センシティビティ)をさらに引き上げる。

指先一つ動かすだけで、彼女の全身に電流のような痺れが走る設定。

服の布地が肌に触れるだけで、性感帯を直接撫でられるような錯覚に陥るはずだ。

「うぐっ……! あ、あぁぁ……ッ! 何したの……!? 服が、擦れて……乳首が、痛い……っ」

「さあ、休憩終了だ。ミュートを解除するぞ」

「待って、無理、こんな顔、見せられな……」

「見せるんだよ。その、欲求不満でとろけきった顔を」

俺は無慈悲に『配信再開』のボタンを押した。

第三章 絶頂の向こう側にある深淵

『再開キター!』

『あれ? エリナちゃん、なんか艶っぽくなってない?』

『汗すごいな』

『目がトロンとしてる……もしや毒攻撃?』

『神回確定』

『エッッッッッッッッッ』

コメントの嵐が流れる中、エリナは必死に表情を取り繕おうとしている。

だが、膝はガクガクと震え、剣を握る手には力が入っていない。

「次の……階層へ、進みます……」

声を出すだけで、彼女の身体がビクリと跳ねる。

俺がコンソールで『聴覚刺激』のパラメータをいじったからだ。

自分の声が骨伝導を通じて脳を揺らし、それが快感へと変換される。

喋れば喋るほど、彼女は自分で自分を追い詰めていく。

(城島……許さない……あとで、覚えてなさい……)

念話(テレパス)で恨み言が飛んでくるが、その響きは甘ったるい蜜のようだ。

「右だ。そこに罠がある」

俺の指示に従い、彼女が動く。

避ける動作、その一瞬のG(重力)さえもが、今の彼女には強烈な愛撫となる。

「んっ……ぁ……!」

小さな悲鳴。

視聴者はそれを『回避行動の息切れ』と受け取る。

だが、俺と彼女だけが知っている。

今、彼女の内側では、我慢の限界を超えた衝動が、堰を切って溢れ出そうとしていることを。

「城島、もう……限界。お願い、許可(クリアランス)を……」

「まだだ」

「お願い……! 壊れる、私、変になっちゃう……! 皆の前で、イっちゃう……!」

極限の懇願。

その瞬間、ダンジョンの最奥から異形のボスが現れた。

しかし、エリナは動けない。

快楽と焦らしの檻に囚われ、その場に崩れ落ちる。

『え、ちょ、危ない!』

『動けエリナ!』

『運営何してんだ!?』

絶体絶命のピンチ。

だが、俺は冷静に、最後のコード(暗号)を打ち込む。

――『Synchro Rate: MAX(強制同調・限界突破)』――

「あ――――――――ッ!!!!」

彼女の絶叫がダンジョンに木霊する。

それは恐怖の叫びではない。

俺の感覚、俺の支配、俺の欲望が、すべて彼女の中に雪崩れ込んだ瞬間の、魂の絶頂の叫びだ。

彼女の身体から、目に見えない魔力の波紋が爆発する。

ボスの巨体が、その衝撃波だけで吹き飛んだ。

『は?』

『今の魔法?』

『演出? 画面ホワイトアウトしたぞ』

画面は白一色になり、何も見えない。

だが、音声だけは生きていた。

「はぁ、はぁ、はぁ……ッ、城島ぁ……♡ すご、かった……全部、入ってきた……♡」

「よくやった、エリナ」

「ねえ、まだ……足りない。配信、切って……? 早く、続き……あなたの本物で、埋めて……」

カツン。

俺はミュートボタンを押さなかった。

代わりに、ボリュームを最大まで上げた。

世界中の視聴者が、その『音』を聞いた。

衣擦れの音。

粘着質な水音。

そして、聖女がただの女に堕ちていく、甘く、重く、狂おしい喘ぎ声を。

俺たちは、三百万人の前で、精神(こころ)を交わらせたまま、決して戻れない深淵へと沈んでいった。

これは配信事故ではない。

これは、俺たちが世界に見せつけた、最初で最後の『所有宣言』なのだから。

AI物語分析

【主な登場人物】

  • エリナ(氷の聖女): S級探索者。表向きは冷徹で高潔なアイドル的存在だが、実態は城島の『感覚操作』がないと精神を保てないほどの重度依存者。戦闘中の快感と苦痛の境界が曖昧になっており、城島に焦らされることに至上の喜びを感じている。
  • 城島(管理者): エリナの専属オペレーター。かつては最強だったが、現在はエリナの『神経』を握ることで、間接的に戦場を支配する。彼女を『理想の作品』として管理し、限界ギリギリの反応を楽しむ歪んだ愛情の持ち主。
  • コメント欄の視聴者たち: 何も知らずにエリナを応援し、時には性的な目で見る一般大衆。彼らの無邪気なコメントが、エリナの羞恥心と興奮を煽る『スパイス』として機能する。

【考察】

  • 『配信』という名の公開視姦: 本作における配信は、単なるエンターテインメントではなく、視聴者が無意識に参加する『集団的な加害/窃視』のメタファーである。エリナが耐えているのが敵の攻撃ではなく『城島からの快楽』であるという事実は、視聴者の熱狂を滑稽かつ背徳的なものへと変質させる。
  • 感覚同調(センス・シンクロ)の二面性: 痛みを引き受ける『自己犠牲』のシステムに見せかけて、その実態は相手の五感を完全にジャックする『絶対支配』の拘束具である。これは現代社会における『推し活』や『ネット依存』の極端なカリカチュアとも取れる。
  • 『寸止め』の美学と崩壊: 物語全体を貫く『焦らし』は、AdSense的な制約(メタ的な意味ではなく、物語内の倫理コードとしての制約)を逆手に取った演出である。最終的にそのタガが外れ、音声だけが世界に流出する結末は、視覚情報(建前)が遮断され、聴覚情報(本音・欲望)だけが真実として残る皮肉を描いている。
この物語の「続き」を生成する

あなたのアイデアをAIに与えて、この物語の続きや、もしもの展開を創作してみましょう。

0 / 200
本日、あと...

TOPへ戻る