第一章: 忘却の銀雪
透き通るようなアメジストの瞳。冷たい窓ガラス越しに舞う銀色の雪を捉えて離さない。
月光のように輝く銀糸の長髪。それが肩から滑り落ち、身に纏った汚れのない純白のシルクドレスの波に溶けていく。
ここは終わらない冬が続く常夜の都。
窓枠に置いた指先から、凍りつくような冷気が骨の髄へと這い上がってくる。
なぜだろう。この雪景色を見ていると、胸の奥が張り裂けそうになる。
不意に、背後から覆い被さる漆黒の軍服コート。
氷のような青い瞳を持つ絶対君主。ヴィクトール。
彼こそが、私の全て。この命を永遠に捧げるべき、唯一の最愛の夫。
首筋に這う、蒼白の唇。
背中から包み込まれる圧倒的な体温に、ルミアの柔らかな双丘が微かに震える。
ヴィクトール「外ばかり見て……私を置いていく気か、ルミア」
ドクン、と。
耳の裏に落ちた低い声の振動だけで、ルミアの腰がビクンと跳ねた。魔力を帯びた絶対者の言霊。それが鼓膜を震わせた瞬間、理性のタガが容易く外れ落ちる。
ルミア「あ、ぁ……ヴィクトール様……違います、私は、ただ……っ」
言い訳は、甘い吐息に溶けて消える。
分厚い掌が純白のシルクを撫で下ろし、鎖骨のラインをなぞる。
直接的な交わりなど必要ない。ただ愛を囁き、彼が首筋に息を吹きかけるだけで、ルミアの奥深くにある濡れた秘境から、熱い蜜がとめどなく溢れ出す。
ヴィクトール「お前の全ては私のものだ。魂の髄まで、私への愛で染まりきれ」
ルミア「ああっ……! ヴィクトール様、もっと……私を、あなたの声で満たしてください……!」
太ももを固く擦り合わせ、ルミアは背中を弓なりに反らせる。♥
指先一つ挿入されていないというのに、足の指がギュッと縮こまり、視界が白く飛ぶ。極限まで開発された聴覚と精神の繋がりだけで、ルミアの身体は狂おしいほどの絶頂を迎え、ガクガクと痙攣しながら甘い蜜を吐き出した。
シーツに崩れ落ちる彼女の頬を、生温かい雫が伝う。
アメジストの瞳から、意味のない涙が止めどなく溢れていた。
なぜ泣いているのか。ただ、魂の底に開いた風穴を通り抜ける空っ風のように、底知れぬ喪失感だけが彼女を苛む。
◇◇◇
第二章: 愛の調教と影の潜入

豪奢な天蓋ベッドの上。
ヴィクトールは直接的な結合を避け、視線と魔法の言霊だけでルミアの理性をドロドロに溶かしていく。
それは彼の底知れぬ孤独を埋めるための、あまりにも残酷な儀式。
ヴィクトール「私の瞳だけを見ろ。他の何も映すな」
《言霊の呪縛》
魔力を帯びた青い瞳が、ルミアの網膜を焼き尽くす。
彼女はシーツを乱し、涎を垂れ流しながら、熱く火照る自身の敏感な真珠を自らの指で弄り続ける。
ヴィクトールに教え込まれた卑猥な手つき。花弁を広げ、愛の蕾を擦るたびに、くちゅ、ぐちゅ、といやらしい水音が寝室に響き渡る。
ルミア「はぁっ、あぁっ……! 好き、ヴィクトール様、私……愛して、ます……っ!」
白目を剥きかけながら、彼女は幾度目かの絶頂に果てる。
わずかな吐息と囁きだけで、彼女の肉体は完全に背徳の奴隷へと作り変えられていた。
同時刻。常夜の城の地下水路。
錆びた鉄と泥の悪臭が鼻を突く暗がりを這い進む、一つの影。
機能的な革鎧と使い込まれたマント。無造作な癖のある茶髪と、泥に塗れた精悍な顔立ち。反体制レジスタンスの若きリーダー、セト。
セト「ルミア……待ってろ。今すぐ助けてやる」
冷たい石壁に手を当て、彼は荒い息を吐く。
脳裏に浮かぶのは、太陽のように笑う銀髪の少女。かつて永遠の愛を誓い合った、ただ一人の本当の恋人。
どんなに厳重な警備だろうと関係ない。絶対に諦めない。俺が必ず、お前をあの悪夢から連れ出す!
琥珀色の瞳が、闇の中で鋭い光を放つ。
彼は双剣の柄を握り直し、心臓部である王の寝室へと繋がる隠し扉に手をかけた。
◇◇◇
第三章: 醜悪な怪物と激痛の記憶

重厚な扉が蹴り破られる。
蝶番が引きちぎれる激しい金属音。雪の冷気が寝室に一気に流れ込む。
セト「ルミア!!」
双剣を構えたセトが寝室へ飛び込む。
だが、彼を待ち受けていたのは、ヴィクトールの腕の中で乱れたドレスをかき合わせるルミアの姿。
ルミア「ひっ……! 嫌、こっちに来ないで……!!」
ルミアの喉から、悲鳴が引き攣る。
常識と記憶を根本から改変された彼女のアメジストの瞳。そこには、かつて愛した青年の姿が映っていない。牙を剥き出しにし、優しい夫の命を狙う醜悪な怪物がいるだけ。
彼女はパニックに陥り、ヴィクトールの漆黒のコートに顔を埋めた。
ルミア「ヴィクトール様に近づくな、化け物! 出て行って!!」
セト「ル、ミア……? 嘘だろ、俺だ、セトだ……! わからないのか!?」
セトの膝から力が抜け、剣の切先が床に下がる。
その琥珀色の瞳に浮かぶ、張り裂けるような絶望。
それを見た瞬間。
ピキィィィン!!
ルミアの脳奥で、何かが砕ける音がした。
ルミア「あ……ぁ、え……?」
星空の下で笑い合う二人の影。
不器用に編んだ古びたお守り。
温かい手のひら。
失われたはずの記憶の破片が、ガラスの破片となって脳髄をズタズタに切り裂きながらフラッシュバックする。
ルミア「あああああああああああっ!?」
頭を抱え、ルミアは床を転げ回る。
ドクン、ドクン、ドクン!
血の鉄の味が口の中に広がった。
呼吸が止まり、眼球が裏返る。
理解不能な矛盾に脳が焼き切れ、彼女の意識は深い闇へと沈んでいった。
ヴィクトール「……不愉快極まりない」
気絶したルミアを見下ろすヴィクトールの青い瞳。そこに、絶対零度の殺意が宿る。
◇◇◇
第四章: 呪われた発情

ルミアの心の揺らぎ。それはヴィクトールの歪んだ独占欲を激しく逆撫でした。
彼は意識のないルミアの首の後ろを掴み、最も残酷な呪いをその魂に深く刻み込む。
ヴィクトール「《魂の書き換え(ソウル・リライト)》」
ヴィクトール「過去の残滓に泣くがいい。だが、あの男を思い出す悲しみも、罪悪感も……全て私への強烈な発情に変換しろ」
その日から、真の地獄が始まった。
深夜。独り寝台で目を覚ましたルミアの脳裏に、悲痛な顔をしたセトの姿がよぎる。
胸が締め付けられ、涙がポロポロとこぼれ落ちる。
どうして、あんなに悲しい目をして……胸が、苦しい……
だが、次の瞬間。
ルミア「あ、ひっ……!? や、だ……また……っ」
悲しみが頂点に達した瞬間、胸の痛みが灼熱の熱量に変わり、下腹部へと急降下する。
最奥の蜜壺がドクンと脈打ち、耐え難いほどの疼きとなって全身を駆け巡る。
熱い蜜が太ももを伝い落ち、シーツをどろどろに汚していく。
ルミア「う、ああっ! 寂しい、苦しいのに……っ、ああっ、ヴィクトール様、ヴィクトール様ぁっ!」
汗と蜜の混じった濃厚な匂いが寝室に充満する。
ルミアは床を這いずり、自らの花弁を指で激しく掻き毟った。
ヴィクトールの部屋へ向かって卑猥な懇願の声を上げる。
魂は真実の愛を求めて泣き叫んでいる。だが肉体は、極限の背徳的快楽に屈服し、狂ったように腰を振る。
ドゴォォォォン!!!
突然、城の壁が吹き飛び、耳をつんざく爆音が常夜の静寂を切り裂いた。
レジスタンスの総攻撃。
火の粉が舞い散る中、血まみれの双剣を構えたセト。彼が、再び死地へと足を踏み入れる。
◇◇◇
第五章: 永遠の常夜
業火に包まれる城の中枢部。
空中に浮かぶ巨大な氷の結晶――『記憶の結晶』。その前で、ヴィクトールとセトが対峙する。
ヴィクトール「愚かな虫が。ルミアはお前を思い出すたび、私を求めて発情する牝犬に成り下がったぞ」
セト「黙れぇぇぇ!!」
ヴィクトールの放つ氷の刃が、セトの体を次々と貫く。
鮮血が雪を赤く染め上げる。だが、セトは止まらない。
足の腱を切られながらも地を這い、自らの命を燃やし尽くして結晶へと飛び込んだ。
セト「ルミア……笑って、くれ……」
バァァァァン!!
セトの体が光に包まれ、記憶の結晶が大音響と共に粉々に砕け散る。
圧倒的に美しい光の奔流。それが城全体を飲み込んでいく。
ルミア「……セト?」
瓦礫の中で、ルミアの瞳から濁りが消える。
忘却の雪が解け、真実の記憶が全て蘇る。
貧民街で分け合ったパン。星空の下の誓い。彼がどれほど自分を愛し、命を懸けてくれたのか。
だが、視線の先。
光の粉が舞い散る中、事切れたセトの体がドサリと雪の上に崩れ落ちた。
ルミア「セトォォォォォォォォッ!!」
喉が裂けるほどの絶叫。
彼を思い出す激しい悲しみ。張り裂けるような罪悪感。
――その直後。
ルミア「あ……ぁ、あ、あああっ!?」
強烈な悲しみの波は、呪いの回路を通り、致死量の快楽となってルミアの脳髄を直撃した。
最愛の人の死を前にして、彼女の最奥は爆発的に蜜を吹き出し、肉体がガクガクと激しい痙攣を始める。
ルミア「いやっ! やめて、違う、私はセトを……っ! なのに、奥が、熱い、よぉっ……!」
涙と涎を垂れ流し、白目を剥きながら、ルミアは激しく絶頂を繰り返す。
真実の愛を取り戻した心。最愛の人の死で極限の発情を迎える肉体。
その致命的な矛盾。それに耐えきれず。
パツン、と。ルミアの精神は完全に弾け飛んだ。
「あ、あ、だめ、壊れる、真っ白になる……っ!」
崩落を続ける城の跡地。
冷たい雪が降りしきる中、ヴィクトールはゆっくりと歩み寄る。
虚ろな笑みを浮かべて腰を揺らすルミアを、きつく抱きしめる。
ヴィクトール「……これで、永遠に二人きりだ」
手に入ったのは、魂の抜けた美しい人形と、狂気だけの愛。
だが彼は満足げにルミアの銀髪に口づけを落とす。
彼女の口から漏れる甘い嬌声。意味のない涙。それだけを道連れに。
二人は静かに降りしきる雪の中、永遠に明けることのない常夜の奥底へと消えていく。