第一章 隠された聖域
重厚なオーク材のデスクの下は、まるで別の世界だった。
薄暗く、埃の匂いと、そして目の前に座る男――私の直属の上司であり、本部長である桐島(きりしま)の革靴の匂いが混じり合う。
「……ええ、先方の提示額には納得しかねますね」
頭上から降ってくるのは、氷のように冷たく、それでいて聴く者の耳を惹きつけてやまないバリトンボイス。
彼は今、ロンドンの支社と緊急のビデオ会議を行っている。
本来なら、私はその隣で議事録を取っているはずだった。
けれど今は、彼の足元に小さく丸まり、息を潜めている。
ことの発端は、会議開始直前に私が落とした万年筆を拾おうとしたこと。
そして彼が、私の背中を革靴の爪先で押し留め、そのまま会議を始めてしまったことだ。
「資料の3ページ目をご覧いただけますか」
桐島の足が動く。
逃げようとした私の太腿を、オーダーメイドのイタリア製スラックスに包まれた長い脚が、蛇のように絡め取った。
「っ……」
声を上げそうになり、慌てて自分の掌で口を塞ぐ。
デスクの隙間から漏れるモニターの青白い光が、私のスカートの裾を照らしていた。
心臓が早鐘を打つ。
バレる。
もし今、彼がカメラのアングルを少しでも下にずらせば。
あるいは、私が大きな音を立ててしまえば。
私の社会人としての人生は終わる。
けれど、その恐怖こそが、奇妙なほどに身体の奥底を熱くさせていた。
第二章 革靴と吐息
「こちらの懸念点は、リスクヘッジの甘さです」
流暢な英語で交渉を続けながら、桐島は片手でマウスを操作し、もう片方の手を――机の下へと滑り込ませた。
ひやりとした大きな手が、私のブラウスの襟元に触れる。
指先が鎖骨をなぞり、そのままゆっくりと下へ。
「ん……っ!」
喉の奥で悲鳴を噛み殺す。
彼の指は容赦なく、私の敏感な部分を探り当てていく。
視界の上半分では、彼が眉一つ動かさず、数億単位のビジネスを動かしている。
けれど、見えない下半分では、私の理性を壊そうと執拗に攻め立てている。
そのギャップが、脳髄を痺れさせた。
「エミさん」
不意に名前を呼ばれ、心臓が跳ね上がる。
しかし、それは私への呼びかけではなかった。
「エミッション・コントロール(排出規制)についての項目ですが……」
偶然の一致。
いや、絶対にわざとだ。
彼は知っている。
自分の名前が含まれる単語が出るたびに、私の体がビクリと反応してしまうことを。
彼の手が、スカートのホックに掛かる。
カチリ、という小さな金属音が、静寂な室内に雷鳴のように響いた気がした。
私は必死に首を横に振る。
(だめ、桐島さん。会議中……!)
目で訴えるが、彼はモニターを見つめたまま、私の太腿の内側を親指で愛撫し始めた。
熱い。
彼の指が触れる場所から、ドロドロとした熱が溶け出し、全身の神経を焼き切ろうとする。
第三章 決壊する理性
「条件を見直しましょう。我々は妥協しない」
桐島の声が一段低くなる。
それは相手への威圧であり、同時に私への命令でもあった。
『声を出すな。だが、感じろ』と。
彼の手の動きが激しさを増す。
直接的な接触はない。
あくまで、薄い下着越しに、一番弱い場所をピンポイントで責め立てられる。
「ぁ、う……っ」
涙が滲む。
机の脚を掴んだ指先が白くなるほど力を込めた。
逃げ場のない快楽。
デスクという狭い檻の中で、私はただ彼の指先一つに翻弄されるだけの玩具だ。
ズレた下着の隙間から、彼の指が楔のように食い込む。
「っ!?」
背中が弓なりに反る。
頭上のデスクに頭をぶつけそうになり、寸前で彼の膝がクッションになって私を守った。
そんな優しさを見せながら、彼は一番奥深い場所を容赦なく抉る。
(むり、おかしくなる、声が出ちゃう……!)
「……Excellent」
彼が短く呟いた。
それは商談成立の合図か、それとも私の様子に対する称賛か。
彼の指が、まるでとどめを刺すように、激しく、リズミカルに奥を掻き回す。
世界が白く弾けた。
私は自分の腕を思い切り噛み、絶叫を肉の痛みで相殺する。
全身が痙攣し、熱い蜜がとめどなく溢れ出し、彼の手を、私の太腿を、そしてオフィスの床を汚していく。
意識が飛びそうなほどの絶頂。
その最中も、彼はずっと冷静な声で、契約の締結を宣言していた。
最終章 独占の烙印
「Thank you. Have a good night」
通話終了の音が鳴り、重苦しい静寂が戻ってくる。
私は脱力し、床にへたり込んでいた。
乱れた服、紅潮した頬、涙に濡れた瞳。
デスクの下から這い出そうとすると、強い力で腕を引かれた。
そのまま、彼の膝の上へと抱き上げられる。
「……いい声を堪えていたな」
桐島は、いつもの冷徹な仮面を脱ぎ捨て、捕食者の目で私を見下ろしていた。
その指先は、まだ私の愛液で濡れ、艶かしく光っている。
彼はその指を、私の唇に押し当てた。
「舐めろ」
低く、甘い命令。
「自分の乱れ具合を、その舌で確認しろ」
逆らえるはずがなかった。
私は震える舌を伸ばし、彼と私を繋いでいた証を舐め取る。
鉄の味と、自分自身の甘い匂い。
そして、ほんのりと香る、彼の高価な香水。
「お前は仕事熱心だ。だが……」
彼は私の耳元に唇を寄せ、火傷しそうなほどの熱い息を吹き込んだ。
「俺以外の男の前で、あんな顔を見せたら……次はデスクの下じゃ済ませない」
その言葉は、愛の告白よりも深く、呪いのように私の心に刻まれた。
私は彼の首に腕を回し、深く頷くことしかできなかった。
この有能でサディスティックな上司の檻から、私はもう二度と出られないのだと、甘い絶望と共に悟った。