断罪のバイブレーション

断罪のバイブレーション

主な登場人物

氷室 冴子 (Himuro Saeko)
氷室 冴子 (Himuro Saeko)
28歳 / 女性
切り揃えられた黒髪のボブカット、銀縁眼鏡、常にオーダーメイドの高級スーツ。肌は病的白い。
レン (Ren)
レン (Ren)
19歳 / 男性
ボサボサの茶髪、猫背、拘置所の指定ジャージ、首に電子錠。
権田原 警部 (Inspector Gondawara)
権田原 警部 (Inspector Gondawara)
52歳 / 男性
よれよれのトレンチコート、無精髭、鋭い眼光。

相関図

相関図
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第一章: 硝子の聖女、あるいは浸水する肉人形

無数のフラッシュ。網膜を白く焼き尽くす光の暴力。

東京地方検察庁、大会議室。壇上に立つ氷室冴子は、この国の正義を具現化したような出で立ちで、三百を超えるレンズの砲列を冷ややかに睥睨していた。

顎のラインで鋭利に切り揃えられた漆黒のボブカット。照明を冷たく弾く銀縁の眼鏡。そして、身体のラインを一ミリの誤差もなく包み込む、仕立ての良いチャコールグレーのスーツ。彼女の纏う空気は、この空間の誰よりも硬質で、冷徹だった。

だが、演台の陰。誰の目にも触れない足元では、異常事態が進行中。

[A:氷室 冴子:冷静]「……冒頭申し上げました通り、本件に関する検察の立場は、極めて明確です」[/A]

声は澄んでいる。アルプスの雪解け水のように透明で、揺らぎがない。

しかし、彼女のハイヒールの中では、体温を帯びた粘度のある液体が、不快な音を立てていた。

[Sensual]

下腹部の奥底、誰にも触れさせることのない秘められた花芯に、異物が深く埋め込まれている。

『それ』は、不規則なリズムで猛り狂い、彼女の理性の堤防を内側から食い破らんとする捕食者。

[Tremble]ブブッ、ブブブッ、……ンッ……[/Tremble]

波が来るたび、背骨を駆け上がる電流。太腿の内側が痙攣し、膝が笑い出しそうになるのを、彼女は足の指を靴底に食い込ませることで辛うじて耐えていた。

[/Sensual]

[Think](……まだ、足りない。もっと……もっと視なさい)[/Think]

彼女は記者たちを見下ろす。

彼らは冴子の言葉を一言一句聞き漏らすまいと、血走った眼で彼女を凝視している。その視線。無遠慮で、暴力的で、粘着質な眼差し。

冴子の脳内で、それは『取材』から『視姦』へと変換される。

数百人の男たちに、スーツの上から剥かれ、値踏みされ、犯されている錯覚。

その倒錯した妄想が、デバイスの振動と共鳴し、脳髄に脳内麻薬(エンドルフィン)をぶち撒けた。

[A:氷室 冴子:冷静]「法とは、感情を殺した先に在るものです。我々は、決して揺るぎません」[/A]

[Impact]嘘だ。[/Impact]

今まさに、彼女は揺らいでいる。ぐらぐらと。

演台の下、大理石の床には、彼女の股間から滴り落ちた蜜が、小さな水溜まりを作っていた。

冴子は眼鏡のブリッジを中指で押し上げ、微かに湿った唇を歪める。

[A:氷室 冴子:狂気]「……質問は、以上ですか?」[/A]

その時、彼女の耳に装着された超小型のインカムから、気怠げな少年の声が響いた。

『[Whisper]ねえ、冴子さん。今の演説、噛まなかったのご褒美だね。……強度、上げていい?[/Whisper]』

冴子の瞳孔が一瞬、針のように収縮した。

◇◇◇

第二章: 鉄格子越しの調教師

東京拘置所、特別接見室。

厚さ五センチの強化ガラスを隔てて、冴子はパイプ椅子に腰掛けていた。

対面に座るのは、薄汚れた灰色のジャージを着た少年、レン。猫背で、伸び放題の茶髪が目にかかっている。手元には、特例で持ち込みを許可された捜査用のタブレット端末。

部屋の隅には、冴子の部下である権田原警部が、腕組みをして立っている。

[A:権田原 警部:冷静]「おい小僧。さっさと解析結果を出せ。検事ちゃんも忙しいんだ」[/A]

権田原の野太い声に、レンはあくびで返す。

[A:レン:冷静]「アンタさぁ、急かすと精度落ちるよ? ……で、冴子さん。ここのセキュリティホールの件だけど」[/A]

レンの指先が、タブレットの画面を滑る。

カチッ、という電子音が、冴子の鼓膜を打った。

[Sensual]

[Impact]ガクンッ![/Impact]

冴子の上半身が、見えない糸で引かれたように跳ねた。

「強度3」から「ランダムパルス」への移行。

体内の愛の楔が、まるで生き物のように膨張し、最も敏感な最奥の襞を執拗に擦り上げる。

[/Sensual]

[A:氷室 冴子:恐怖]「ッ……! ……ええ、続けてください。レン」[/A]

彼女は机の下で、両膝を強く擦り合わせた。

シルクのブラウスが、背中の冷や汗で肌に張り付く感触。

権田原がいる。部下の前で、年端もいかない犯罪者に遠隔操作され、雌の顔を晒すわけにはいかない。だが、その背徳感が、更なる蜜を呼ぶ呼び水となる。

[A:レン:喜び]「顔、赤いっしょ。ここ空調悪いんじゃね?」[/A]

レンは楽しんでいる。

画面上のスライダーを弄ぶその指は、物理的には触れていないはずなのに、冴子の内壁を直接指で掻き回しているかのような錯覚。

[A:権田原 警部:冷静]「……検事ちゃん。なんかこの部屋、甘ったるい匂いがしませんか? 花のような、いや、もっと生々しい……」[/A]

鼻を鳴らす権田原。動物的な勘が、冴子の発するフェロモンの香りを嗅ぎつけていた。

心臓が破裂しそうになる。バレる。社会的な死。

その恐怖こそが、絶頂への起爆剤。

[Think](ああ……ダメ。権田原さん、見ないで。いや、見て。私がこんな風に汚されているところを、もっと……)[/Think]

冴子は資料を持つ手を震わせながら、上気した顔を伏せた。

[A:氷室 冴子:冷静]「……権田原さん。空調の故障でしょう。報告を続けます。レン、次は『波状攻撃(ウェーブ)』モード……いえ、解析パターンのBをお願い」[/A]

言い間違いを装ったリクエスト。

レンがニヤリと笑い、タブレットをタップした瞬間、冴子は白目を剥きかけた。

◇◇◇

第三章: 女王の仮面、怪物の素顔

事件の核心に迫るデータが入手できた夜。

誰もいない取調室で、レンはタブレットを机に放り投げた。

[A:レン:怒り]「もういいだろ。犯人の居場所は割れた。俺の役目は終わりだ」[/A]

彼はうんざりしている。

最初は面白半分だった。国家権力の犬であるエリート女検事を、指先一つでひひ言わせる。その背徳感に酔っていたのは事実。

だが、最近の冴子は異常だ。要求する出力レベルが、人間の耐えられる限界を超えている。

彼女は苦痛に顔を歪めているのではない。苦痛という名の燃料がなければ、立っていることすらできないのだ。

[A:レン:冷静]「アンタ、壊れてるよ。これ以上やったら、脳味噌焼き切れるぜ」[/A]

レンはデバイスの停止ボタンに指を伸ばした。

その時。

[Impact]ダンッ!![/Impact]

冴子が机を叩き、立ち上がる。

整っていた髪は乱れ、眼鏡は鼻先までずり落ちている。だが、その瞳に宿っているのは、懇願ではなく、底冷えするような殺意。

[A:氷室 冴子:狂気]「誰が、止めていいと言いました?」[/A]

[A:レン:驚き]「は……? 俺はアンタのために」[/A]

[A:氷室 冴子:怒り]「勘違いしないで。貴方が私を支配しているんじゃない。私が、貴方という『道具』を使って、私自身を調律しているのです」[/A]

冴子はゆっくりとレンに歩み寄る。

汗と香水の混じった、むせ返るような雌の香りがレンを包み込む。彼女はレンの胸ぐらを掴み、耳元で甘く、毒を含んだ声で囁いた。

[Sensual]

[Whisper]「止めれば、貴方の司法取引は破棄します。ハッキング、機密漏洩、すべての罪を被せて、一生塀の中で腐らせてあげる。……嫌でしょう? 自由が欲しいなら、続けなさい。私が『壊れる』まで」[/Whisper]

[/Sensual]

レンは戦慄する。

自分は飼い主ではなかった。

首輪をつけられていたのは、最初から自分の方。

この女は、正義の味方などではない。

公権力という巨大なシステムを、自らのオナニーのために私物化する、美しい怪物だ。

[A:氷室 冴子:興奮]「さあ、明日は最終公判よ。……出力、最大(Max)でお願いね」[/A]

◇◇◇

第四章: 法廷という名の処刑台

東京地方裁判所、第一刑事部。

傍聴席は満員。テレビカメラが法廷内に入り、国民の視線が一点に注がれる。

被告人の弁護団は、この日のために冴子の「精神的な不安定さ」を攻撃材料に用意していた。

「検察官! あなたのその顔色はなんだ! ろくに立っていられない人間に、人を裁く資格があるのか!」

弁護人の怒声が響く。

確かに、検察官席に立つ冴子の様子は異常そのもの。

顔面は蒼白、呼吸は荒く、演台を掴む指の関節は白く浮き出ている。

だが、それは病ではない。

[System]Output Level: 98% ... 99% ... CRITICAL[/System]

傍聴席の最前列、記者席に紛れ込んだレンが、震える手でタブレットを操作していた。

冴子からの厳命。『公判中、一秒たりとも止めるな』と。

[Sensual]

視界が溶ける。

思考が白濁する。

法廷の風景が、シュルレアリスムの絵画のように歪み、極彩色のノイズが走る。

体内を暴れ回る振動は、もはや快楽を超え、暴力的なまでの衝撃となって内臓を揺さぶっていた。

足の筋肉が悲鳴を上げ、子宮口が熱い蜜を吐き出し続ける。

[Flash]あ、ア、あ……ッ![/Flash]

[/Sensual]

弁護人の追及が遠くで聞こえる。

『答えろ!』

意識が飛びそうになる瞬間、冴子は舌を強く噛んだ。

口の中に広がる鉄錆の味。鮮血の激痛が、泥のような快楽から理性を引きずり戻す強烈なアンカー。

[A:氷室 冴子:怒り]「[Shout]異議あり!![/Shout]」[/A]

その声は、絶頂の悲鳴を無理やり怒号に変換したもの。

法廷内の空気が凍りつく。

冴子は、濡れた瞳で被告人を指差した。

[A:氷室 冴子:狂気]「論点のすり替えです! 被告が犯した罪は……ッ、そこにある事実のみが……くッ、語るべき真実……っ!!」[/A]

言葉が途切れそうになるたび、彼女は声を張り上げる。

喘ぎ声を隠すための、過剰なまでの激昂。

それが逆に、鬼気迫る「正義の執行者」としての迫力を生んでいた。

[Sensual]

[Tremble](イく、イっちゃう、みんなの前で、法の庭で、汚いメス豚みたいに……ッ!)[/Tremble]

[/Sensual]

限界を超えた快楽の波が、脳のシナプスを焼き切る。

しかし、彼女の論理は崩れない。快楽と理性が螺旋のように絡み合い、トランス状態の中で放たれる言葉は、鋭利な刃物となって被告人を切り刻んでいく。

誰も彼女を止められない。

彼女は今、法廷という巨大な寝室で、たった一人で踊り狂っているのだから。

◇◇◇

第五章: 檻の中の微笑み

[Impact]「主文、被告人を死刑に処する」[/Impact]

裁判長の無機質な声と共に、木槌の音が鳴り響いた。

完全勝利。

その瞬間、張り詰めていた糸が切れ、冴子の体は糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。

法廷内が騒然とする。

「検事!」「氷室検事!」

駆け寄る権田原、騒ぐ記者たち。

薄れゆく意識の中で、冴子は遠くで立ち尽くすレンの姿を捉えた。

彼は、恐怖に引きつった顔で、タブレットを握りしめている。

……

白い天井。消毒液の匂い。

冴子が目を覚ますと、そこは個室病室だった。

ベッドの脇には、やつれ果てたレンが座っている。

[A:レン:悲しみ]「……アンタ、死ぬところだったんだぞ。世間じゃ『正義のために倒れた英雄』扱いだ。……バカみたい」[/A]

レンの声には、もはや以前のような生意気さはなく、深い疲労と諦めが滲んでいた。

冴子は酸素マスクを外し、乾いた唇を舐める。

身体はまだ、あの熱の余韻を記憶している。

[A:氷室 冴子:愛情]「レン。……次の事件の資料は?」[/A]

[A:レン:絶望]「は……? 正気かよ。少しは休めよ」[/A]

冴子は、サイドテーブルにあった果物ナイフの切っ先を、自らの指先でなぞった。

鋭い痛みが走る。その痛みだけが、彼女に生きている実感をくれる唯一の証。

[A:氷室 冴子:愛情]「休んでいる暇はないわ。世の中には、まだ裁かれるべき悪が蔓延っている。……そして、私の身体も、まだ乾いているの」[/A]

彼女はレンの手を取り、自分の布団の中に引き込んだ。

そこには、既に新しい、より強力なデバイスが用意されている。

[Sensual]

[Whisper]「さあ、始めましょう。私の可愛い共犯者。……この地獄の底まで、付き合ってもらうわよ」[/Whisper]

[/Sensual]

窓の外には、抜けるような青空が広がっていた。

だが、氷室冴子の瞳には、果てしない闇だけが美しく輝いている。

彼女は微笑む。その笑顔は、聖女のように清らかで、娼婦のように淫らだった。

彼女は一生、この檻から出るつもりはない。

なぜなら、こここそが、彼女にとっての楽園なのだから。

[FadeIn](完)[/FadeIn]

クライマックスの情景

【物語の考察:聖性と獣性の逆転】

本作の核は「制御する側(検事)」と「制御される側(被告)」、そして「支配者(レン)」と「被支配者(冴子)」という二重の主従関係の逆転にある。一見、レンが冴子を玩具にしているように見えるが、第3章で冴子がレンを『私の調律器具』と定義した瞬間、全ての権力構造が崩壊する。彼女にとって法廷とは、社会正義を実現する場ではなく、公衆の面前で自身の『獣性』を解放するための巨大なプレイグラウンドに過ぎない。

【メタファーの解説:デバイスの意味】

体内に埋め込まれた振動デバイスは、冴子の失われた「人間性(あるいは情動)」の隠喩である。感情を殺し、法という無機質なシステムと化した彼女は、外部からの物理的な苦痛と快楽という『ノイズ』を与えられなければ、生の実感を得られない。彼女が求める『Max出力』とは、システムとしての死と、肉体としての生の限界点であり、そこでのみ彼女は『聖女』と『怪物』の境界を超越できるのである。

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