【悲報】救世主、聖女様のペットになる。

【悲報】救世主、聖女様のペットになる。

主な登場人物

エリス・サン・ルミエール
エリス・サン・ルミエール
18歳(精神年齢は不詳) / 女性
月光のような銀髪、ハイライトのない虚ろな碧眼。純白に金刺繍の聖職者ローブだが、スリットが深く太腿が露わになる。
レオン・ブレイブハート
レオン・ブレイブハート
19歳 / 男性
燃えるような赤髪、意志の強い金色の瞳(徐々に濁っていく)。軽銀の鎧。
シルヴィア・ノワール
シルヴィア・ノワール
20歳 / 女性
切り揃えた黒髪ボブ、知的な眼鏡。露出度の高い漆黒の魔女ドレス、ガーターベルト。

相関図

相関図
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第一章: 祝福の牙


世界が、反転する。


内臓を灼き尽くす業火。喉元から溢れる鉄錆の味。それが私の知る「英雄」からの、最後の贈り物だった。

勇者レオン・ブレイブハート。彼が突き立てた聖剣の感触、肋骨の隙間に残留する鈍い痛み。

視界の白濁。泥のような闇への沈殿。


……否。


肺に流れ込む冷たい大気。

私は跳ね起き、乱れた呼吸を整える。豪奢な天蓋、窓の外に広がる燃え落ちていない王都の夜景。

指先の震え。恐怖ではない。これは、歓喜による痙攣。

サイドテーブルの鏡。そこに映る、かつての私。

月光を吸い濡れたように輝く銀髪。深海ごときハイライトの消えた碧眼。純白の聖職者ローブは、冒涜的な儀式のためにあるかのように、太腿の付け根まで大胆に裂けている。


エリス・サン・ルミエール「……戻ってきたのですね」


喉の奥から込み上げる、甘い毒のごとき笑い。

明日、私たちは旅立つ。世界を救うために。そして、私が殺されるために。

いいえ。

今回は違う。脚本(シナリオ)は私が書き換える。


音もなく廊下を滑るように進む。石造りの床の冷気が、裸足の裏を心地よく刺激してくる。

レオンの部屋の前。躊躇いなどあろうか。鍵など、魔力の糸一本で弾け飛ぶ。

部屋の中、微かに漂う男特有の汗と革の匂い。

彼は眠っている。無防備に、仰向けで。

燃えるような赤髪が枕に散らばり、閉じられた瞼の下にある金色の瞳は、今はまだ曇りを知らない。



ああ、愛しいレオン様。

ベッドの縁に腰を下ろし、指先で彼の喉仏をなぞる。熱い。脈動。

血管の下を流れる血液が、私の渇きを誘う。

レオン・ブレイブハート「……ん、う……?」

微かな唸り声。薄目が開く。

意識の覚醒より早く、私は彼の上に跨った。スリットから覗く素肌、腹筋の硬さを直に感じる至福。

レオン・ブレイブハート「え、エリス……様? な、なんで……」

エリス・サン・ルミエール「しっ。静かに、レオン様。悪い夢を見ていたのですか?」

「可哀想に。心臓がこんなに早鐘を打って」

指が彼の胸板を這い、突起を軽く摘む。背がビクリと跳ねる反応。

レオン・ブレイブハート「あ、熱い……エリス様、近すぎ……」

エリス・サン・ルミエール「これは『祝福』です。未来の厄災からあなたを守るための」

嘘。これは首輪(マーキング)。

身体を伏せ、首筋に顔を埋める。脈動する頸動脈、ドラムのごとく耳朶を叩く音。

口を開き、白い歯を柔らかな肌へ。

レオン・ブレイブハート「ちょっ、まっ……痛っ!?」

食い込む。

鋭利な痛みが走った瞬間、傷口から自身の魔力を逆流させた。

血液と魔力の混合。神経網を焼き切るような快楽への変換。

レオン・ブレイブハート「あ゛ッ、が……あ、あ、あああッ!!」

声にならない絶叫。剥かれる白目、痙攣する四肢。

私の魔力が脳髄を侵食し、痛覚を愉悦へと書き換えていく。



エリス・サン・ルミエール「受け入れなさい、レオン様。これが私の愛です」

耳元での囁き。涎と血で汚れた口元を、彼の鎖骨で拭う。

彼はもう、言葉を発することもできない。ただ荒い息、虚空を見つめ流れる涙。

その瞳の奥、理性の光が揺らぎ、消えていく様。私は見逃さない。


◇◇◇


第二章: 冒涜の加護


旅立ちから一週間。パーティによる魔物駆逐は順調。

だが、その内実は異様。



湿り気を帯びた森の奥。オークの剛腕がレオンの鎧を掠めただけの浅い傷。

本来なら唾をつけておけば治る程度のかすり傷。そこに、過剰なまでの神聖魔術を行使する。

《聖女の慈悲(ヒール)》

閃光。

レオン・ブレイブハート「ひっ、あ……ぅあ!」

剣を取り落とし、泥濘の中へ膝をつくレオン。

傷が塞がる瞬間の痒みと熱量。通常の百倍への増幅。

細胞の一つ一つが再生する歓喜を、脳が絶頂と誤認するほどの出力。

レオン・ブレイブハート「だ、だめだ……身体が、熱くて……力が、入らな……」

ガチガチと鳴る歯。股間を押さえてうずくまる勇者。

オークが再び棍棒を振り上げるが、回避不能。

エリス・サン・ルミエール「あらあら、レオン様。また油断なさいましたね?」

指先一つでオークを爆散させ、震える勇者へ歩み寄る。

泥にまみれた頬を両手で包み込み、強制的な視線合わせ。

エリス・サン・ルミエール「もっと深い『治癒』が必要ですね? ここの痛みも、取って差し上げましょうか?」

視線、彼の膨張した下半身へ。

レオン・ブレイブハート「ゆる、して……エリス様……おかしく、なる……」



拒絶の言葉とは裏腹、身体は私の魔力を求めて火照る。

その矛盾こそ、彼を壊すための楔。


◇◇◇


第三章: 公開された恥辱


夜の帳。野営地に満ちる不穏な静寂。

焚き火の爆ぜる音。そこへ、宮廷魔術師シルヴィア・ノワールが忍び込んでくる。

漆黒のドレス、知的な眼鏡の奥で光る瞳。彼女は、私の企みに気づいている数少ないイレギュラー。


シルヴィア・ノワール「……随分と悪趣味な趣味をお持ちなのね、聖女様」

エリス・サン・ルミエール「あら、何のことでしょう?」

シルヴィア・ノワール「とぼけないで。レオンの魔力回路、ズタズタじゃない。……あれじゃまるで、発情期の獣よ」

声に含まれる、非難よりも湿った好奇心。

ハーブティーを一口啜る。ラベンダーの香り、微量のアトロピンを混ぜた特製品。

エリス・サン・ルミエール「あなたも見たのでしょう? あの凛々しい英雄が、涎を垂らして私の足元で鳴く姿を」

図星ね。

シルヴィアの呼吸の一瞬の停止。深層心理にある、勇者への歪んだ憧憬と劣等感。

エリス・サン・ルミエール「彼が誰のものにもならず、ただ『モノ』として堕ちていく様……特等席で見たくはありませんか?」


翌日。ダンジョン攻略。

世界中に映像を届ける「クリスタル通信」の配信中、私はレオンの背中に張り付いた。

《精神感応(テレパス)》

「レオン様、みんなが見ていますよ。……我慢できますか?」

脳内だけに直接響く私の声。

同時に、昨晩仕込んだ遅効性の媚薬が牙を剥く。



レオン・ブレイブハート「っ……!? なんだ、視界が……揺れる……」

ダンジョン最深部、ボスモンスターであるキメラの御前。突如として剣を杖代わりに突き、荒い息を吐くレオン。

流れ落ちる滝のような汗。定まらぬ焦点。

シルヴィア・ノワール「レオン? どうしたの、敵は目の前よ」

シルヴィアの冷徹な追い打ち。

レオン・ブレイブハート「ちが、違うんだ……身体が、勝手に……うっ、くぅ……!」

虚空に向かって揺れる腰。

鎧の擦れる音、通信を通じて世界中へ響く恥辱。

勇猛果敢な勇者が、敵前で欲望に屈し自らを慰めようとする醜態。

エリス・サン・ルミエール「ああ、なんてこと……! これは『色欲の呪い』ですわ!」

悲痛な声を上げ、彼の身体に抱きつく。耳元での甘い囁き。

「いいですよ、レオン様。ここで果ててしまいなさい。世界中の人々に、あなたの情けない顔を見せてあげましょう」

レオン・ブレイブハート「やめ……見ないでくれ……頼む……ッ!」

限界。

口から白濁した泡を吹き、私の腕の中でビクビクと痙攣し、意識を手放す。



世界は彼を同情するか? 軽蔑するか?

どちらでもいい。彼の尊厳は今、完全に私の掌の上で砕け散ったのだから。


◇◇◇


第四章: 蜜の檻


宿屋の一室。打ち付ける豪雨。

雷鳴が轟くたび、ベッドの上のレオンは怯えたように身を縮める。

かつての鋼のような肉体。度重なる魔力過多と精神的負荷で、驚くほど華奢に変貌していた。



レオン・ブレイブハート「エリス……様……欲しい……ください……」

涙目で見上げる瞳。世界を救う意思など欠片もない。

あるのは、私の体液(魔力)への渇望のみ。

エリス・サン・ルミエール「まだ駄目ですよ。昨日、剣の稽古をサボりましたね?」

レオン・ブレイブハート「だって……剣を握ると、手が震えて……エリス様のことを考えると、立っていられなくて……」

這いずり、聖衣の裾に顔を擦り付ける。

エリス・サン・ルミエール「正直な子。……ご褒美をあげましょう」

指先を彼の口内へ。

赤子のように必死に吸いつく彼。濡れた部屋に響く水音。

♥ドクン。[/Heart]

指を通して伝わる心臓の音。

完全に私のもの。思考も、反射も、魂さえも。



シルヴィア・ノワール「……準備が整ったわ。魔王城への転移ゲート、開いたけれど」

ドアの向こう、シルヴィアの宣告。

私はレオンの頭を撫でながら、鏡に映る自分に微笑みかける。

エリス・サン・ルミエール「行きましょう、レオン様。最後の仕上げです」


レオンはもう、魔王を倒すために戦うのではない。

私という檻の中で、永遠に飼われるために戦うのだ。

たとえその先で、彼の手足がもがれようとも、私が「治して」あげるのだから。


◇◇◇


第五章: 閉ざされた楽園


魔王の間。

玉座に座る魔王は、既に息絶えていた。

私の裏工作、暴走したレオンの暴力的なまでの聖剣技。原形を留めぬ肉塊への変貌。


レオン・ブレイブハート「終わった……終わったよ、エリス様! これで、俺のこと、もっと……!」

血塗れのまま、駆け寄ろうとする彼。

だが、私は冷たく杖を掲げた。

《世界結界・永劫回帰(パラダイス・ロスト)》

世界が、閉じる。

魔王の核を利用し、この空間だけを外部から切り離す。

外の世界では、勇者が魔王と刺し違えたことになっているだろう。あるいは、魔王の残党によって世界が滅びゆくかもしれない。

けれど、そんなことは些事。


レオン・ブレイブハート「エリス様……? 外へ、帰らないの……?」

エリス・サン・ルミエール「帰る場所なんてありませんよ、レオン様。ここが私たちの家です」

四肢を拘束する術式の展開。

光の鎖が手首と足首を縛り上げ、空中に固定する。



レオン・ブレイブハート「な、なに……動けな……っ!」

エリス・サン・ルミエール「もう剣を振るう必要はありません。歩く必要も、考える必要も」

ゆっくりと近づき、唇を奪う。

これまでで一番深く、濃厚な口づけ。

レオン・ブレイブハート「んんっ……ふぁ……!?」

奪われる酸素。開く瞳孔。

エリス・サン・ルミエール「あなたはただ、私の愛を受け入れるだけの器(もの)になればいいのです」



シルヴィアが部屋の隅、恍惚とした表情で記録を続けていた。

レオンの瞳から光が消え、完全に焦点が合わなくなる。

口元の緩み。幸せそうな、しかし壊れた笑顔。


レオン・ブレイブハート「あ……えりす、さま……すき……だいすき……」

エリス・サン・ルミエール「ええ、私も愛していますわ。……永遠に、ね」


崩壊する世界の外側、私たちの終わらない飼育生活(ハッピーエンド)が幕を開けた。

救世の果てにあったのは、甘く腐った蜜の檻だった。

クライマックスの情景

【物語の考察:聖性の反転】

本作において「聖女」の象徴である「治癒(ヒール)」は、救済ではなく支配の手段として描かれています。痛みを快楽へ、回復を依存へと書き換えるプロセスは、献身という概念のグロテスクなパロディです。エリスの行動は一見するとヤンデレ的な狂気ですが、その根底には「英雄としての死」という運命から彼を剥離させ、「ただの肉塊」として生かし続けるという、歪んだ形の人道主義が存在します。

【メタファーの解説:閉ざされた楽園】

最終章で展開される《世界結界》は、胎内回帰願望の具現化です。外部との接続を断ち、二人(と観測者)だけの世界を作る行為は、成長と旅立ちを否定する究極の停滞を意味します。魔王を「肉塊」に変え、勇者を「器」に変えることで、物語(ロールプレイング)としての役割を強制終了させ、永遠の「ままごと」を開始する。それは世界にとってはバッドエンドですが、狂った二人にとっては唯一無二のハッピーエンドなのです。

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