「地獄で朽ち果てろと言ったわね、お父様」
断崖から突き落とされた私は、風切り音の中で嗤った。
「ならば私は、地獄の女王となって舞い戻るまで」
第一章 奈落の底、人ならざる熱
王都の地下深くに広がる、光の届かぬ場所。
「奈落」と呼ばれる廃棄場。
そこに捨てられた私は、即死するはずだった。
けれど、身体は砕けなかった。
代わりに私を受け止めたのは、硬い地面ではなく、ぬるりと脈打つ「何か」だった。
「……あ、っ?」
視界を埋め尽くすのは、漆黒の闇。
だが、それはただの暗闇ではない。
蠢き、形を変え、意思を持って私の四肢に絡みついてくる。
「離、して……無礼者……!」
悪役令嬢としての矜持だけで声を張り上げる。
けれど、その抵抗は一瞬で封じられた。
足首を掴む感触。
人間の手ではない。
もっと不定形で、熱く、そして圧倒的な質量を持った粘性の拘束。
ずるり、と這い上がってくる。
「ひっ……!」
冷たいはずの地下で、異常なほどの熱気が私のドレスを侵食していく。
それは私の太腿を割り入り、もっと奥、誰にも触れさせたことのない聖域へと、無遠慮に指先(のようなもの)を這わせた。
恐怖で震えるはずの身体が、なぜか芯から痺れている。
(殺される……食われる……!)
本能が警鐘を鳴らす。
だが、耳元で響いたのは言葉ではなかった。
『――求めていた。極上の、器を』
脳髄に直接流し込まれる、重低音の震え。
それは聴覚ではなく、鼓膜の奥の神経を直接撫で回されるような感覚。
背筋がゾクリと跳ねた。
恐怖ではない。
これは、もっと悍ましく、甘美な予感。
私の前に「それ」が凝縮し、人の形を模る。
顔はない。けれど、私を見下ろす強烈な視線だけは感じる。
この奈落の王。
人外の捕食者。
「私を……どうする気……」
問いかけ終わる前に、私の唇は「それ」によって塞がれた。
第二章 侵食する甘い毒
「んぅ、っ、ぁ……!」
キス、なんて生易しいものではない。
口蓋の奥まで侵入してくる異質な舌。
ねっとりと絡みつき、唾液を奪い、代わりに甘い痺れを伴う何かを流し込んでくる。
息ができない。
酸素の代わりに、彼の「熱」が肺を満たしていく。
「んんっ、ふぁ、あ……!」
理性が溶ける音がした。
ドレスの布地など、彼の前では霧のように無意味だった。
いつの間にか肌は露わになり、冷たい空気に晒される暇もなく、熱い闇に包み込まれる。
人間とは違う肌触り。
滑らかで、それでいて吸盤のように肌に吸い付き、私の感度を強制的に引き上げていく。
「や、だ……そんなところ……!」
胸の先端を、執拗に弄られる。
指先で摘まれるたび、電流が走ったような快感が腰に抜ける。
「ひぐっ、ぁ、ああ!」
おかしい。
こんなに強く、乱暴に扱われているのに。
痛みがない。
あるのは、頭が真っ白になるほどの快楽と、満たされていく安堵感。
『我を受け入れよ。さすれば、理(ことわり)を書き換えよう』
甘い囁きと共に、私の秘所へ熱い塊が押し当てられる。
「まっ、待って、大きい、むり……っ!」
人間のサイズではない。
物理的にあり得ない質量。
けれど、それは私の拒絶をあざ笑うかのように、ぬるりと粘膜を押し広げた。
「あ、ぎっ、いやぁぁあああっ!」
裂けるような感覚は一瞬。
すぐに、その「異物」は私の内部に合わせて形を変え、隙間という隙間を埋め尽くしていく。
きつい。
苦しい。
けれど、それ以上に。
(熱い……! 奥が、焼けるように……!)
内側から侵略される感覚。
私の内臓一つ一つを確かめるように、蠢き、脈打ち、最奥へと潜り込んでくる。
「あ、はっ、んああっ! おく、ついちゃ、だめぇっ!」
子宮の入り口を、容赦なく叩かれる。
人間相手では決して味わえない、重く、深く、魂ごと貫かれるような衝撃。
私の「女」としての本能が、彼を受け入れようと勝手に道をこじ開ける。
「ひぃ、あ、あ、すごい、入ってく、るぅぅ……!」
王都を追放された絶望?
元婚約者への未練?
そんなものは、波状攻撃のように押し寄せる快楽の波に飲まれて消えた。
今はただ、この人外の王に「愛されている」という事実だけが、私の存在意義だった。
第三章 苗床としての覚醒、あるいは復讐
「も、う、許し、て……壊れちゃ、う……!」
涙と涎で顔をぐしゃぐしゃにして、私は懇願した。
けれど彼は止まらない。
むしろ、私の絶頂が彼の食欲を刺激しているようだった。
『良い声だ。もっと啼け。その悦びが、世界を侵食する力となる』
ズンッ、と重い一撃が最奥を突き上げる。
「あ゛っ、あ゛ぁぁぁぁーーーーっ!」
視界がスパークする。
脊髄を駆け上がる強烈な痺れに、背中が弓なりに反る。
私の限界などお構いなしに、彼はさらに深く、激しく、私を掘削し続ける。
(私が、変わっていく……)
彼と繋がっている部分から、人間としての理性が剥がれ落ちていく。
代わりに注ぎ込まれるのは、この奈落の「魔力」。
熱い、ドロドロとした奔流が、胎内へ惜しげもなく放たれる。
「んぐぅっ! 熱いっ、なんか、いっぱい、来てるぅっ!」
お腹が熱い。
膨れ上がるほどの「種」を注ぎ込まれ、私は物理的に満たされた。
それは生殖の悦びであり、同時に契約の儀式。
私の体が快楽で痙攣するたび、地上の王都では地震が起きているだろう。
私が彼を受け入れ、喘ぐたび、かつて私を断罪した者たちの常識が歪んでいく。
「あは、あはは……っ! 見て、お父様……!」
意識が飛びそうなほどの絶頂の中で、私は狂ったように笑った。
「私は、魔王様の苗床……! この国の誰よりも、深く、愛されて……っ!」
ガクガクと震える太腿を、不定形の触手が優しく、しかし拘束するように絡め取る。
逃がさない。
一生、この奈落の底で、彼の子を孕み、産み、愛され続けるのだ。
その事実に、背筋が凍るほどの歓喜を覚えた。
『そうだ。お前は私の女王。この腐った世界を、我らの愛で塗り替えよう』
仕上げとばかりに、最奥へ注がれる熱情。
私は喉を反らせ、言葉にならない絶叫を上げた。
「あ゛ぁぁぁッ❤❤❤!!!」
視界が暗転する。
最後に見たのは、私を慈しむように見つめる、無貌の王の気配。
ああ、なんて幸せな復讐。
私は堕ちたのではない。
選ばれたのだ。
この暗く、湿った、甘美な地獄の底で。
私はようやく、本当の「運命」に出会ったのだから。