第一章 汚染された温室
警告音が、遠くで鳴っているような気がした。
視界が赤いアラートで点滅しているはずなのに、私の網膜に焼き付いているのは、目の前に立つ男の冷ややかな微笑だけだ。
「エレナ博士。バイタルが乱れていますね。環境適応(テラフォーミング)の数値エラーですか?」
低く、腹の底に響くような声。
惑星開発局の最高管理官、ケイル・ヴォルグ。
彼が指先で空中のホログラムを弾くと、私が管理していた生態系シミュレーターの数値が、ありえない速度で書き換えられていく。
「やめ……て……、ケイル。これ以上、温度を上げたら……植物たちが……」
「植物? 君が心配すべきなのは、君自身の『生態系』だろう?」
ここ、惑星エデン・ゼロの第4バイオドームは、外気とは遮断された完全なる無菌室だ。
はずだった。
けれど今、私の身体は、未知の熱病に冒されたように火照り、白衣の下で汗が伝うのを感じていた。
ケイルが靴音を響かせ、実験台に寄りかかる私へと歩み寄る。
逃げ場はない。
背後には、彼が「育成」を命じた、肉厚な葉を持つ異星の植物たちが、私の震えを嘲笑うかのように蠢いている。
「極限環境における生命の繁殖力。それを証明するのが君の任務だ」
彼の手が、私の頬を滑り落ち、喉元で止まる。
革手袋の冷たい感触に、身体がビクリと跳ねた。
「優秀な生態学者である君なら分かるはずだ。過酷な環境であればあるほど、生命は種の保存を渇望する」
「それは……理論上の……話で……っ!」
「実践してみせろ」
彼は容赦なく、私の白衣の胸元に指を滑り込ませた。
布一枚隔てた肌に、彼の「支配」が直接触れる。
理性が警鐘を鳴らすが、身体は裏腹に、彼に触れられた場所から甘い痺れを拡散させていく。
この惑星のテラフォーミング計画は、すべて彼のシナリオ通りに進んでいる。
大気の組成も、土壌のバクテリアも、そして――この研究所の「女王」である私自身も。
「あ……っ、だめ、ケイル……そこは……センサーが……」
「感度良好だ。これなら、すぐにでも発芽するだろう」
彼は私の耳元で囁くと、わざとらしく研究室の空調パネルを操作した。
『湿度、上昇。フェロモン濃度、致死レベルへ移行』
無機質なAIのアナウンスと共に、部屋中の空気がねっとりと重くなる。
私は膝から力が抜け、その場に崩れ落ちそうになった。
それを待っていたかのように、ケイルの強靭な腕が私の腰を抱き留める。
「さあ、実験を始めようか。君という不毛な大地を、私が耕し、種を植え付ける。拒絶は許さない」
彼の瞳の奥に、狂気じみた所有欲が揺らめいた。
それは愛などという生温いものではない。
この星の重力そのもののような、抗えない絶対的な強制力だった。
第二章 極限環境下の適応訓練
「うっ、あぁっ……! あつい、熱いよぉ……っ!」
「泣くな。まだ初期段階だ」
視界が白い霧で覆われている。
いや、それは私の呼気と、異常なまでに上昇した室内の湿気が作り出した靄(もや)だ。
私は実験台の上に仰向けにされ、両手首を冷たい拘束具で固定されていた。
「惑星エデンの地表温度は40度、湿度は90%を超える。君がこの星で生き残るためには、この環境下で快楽を受け入れられる身体にならなくてはならない」
ケイルは冷静な口調で分析しながら、私の露わになった太腿の内側を、ゆっくりと指でなぞり上げる。
指先が触れるたび、電流のような刺激が脳髄を駆け上がった。
「ひぐっ……! お願い、許して……もう、おかしくなる……」
「おかしくなれ。理性など、この星には不要だ」
彼は私の懇願を一蹴し、さらに残酷な「処置」を加える。
彼が手にしたのは、微弱な生体電流を流す特殊なデバイスだった。
本来は植物の成長を促進させるための器具。
それを、私の敏感になりきった秘所に、じらしながら押し当てる。
「あ、あ、あああぁっ――!」
声にならない悲鳴があがる。
直接的な接触ではない。
けれど、波紋のように広がる振動と熱が、身体の奥底に眠る「雌」の部分を無理やり叩き起こしていく。
「いい反応だ、エレナ。蕾(つぼみ)が、蜜を溢れさせている」
「みないで……そんな言葉、いわないで……っ」
「事実を述べているだけだ。君は今、高潔な科学者ではない。ただの、発情した雌花だ」
言葉の暴力。
けれど、その屈辱的な言葉こそが、私の興奮を極限まで高めていることを、彼は完全に見抜いていた。
逃れられない現実。
私の身体は、彼に管理され、弄ばれることに歓喜している。
「まだだ。絶頂(クライマックス)にはまだ早い」
私が腰を浮かせ、頂点に達しようとした瞬間、彼は冷酷にデバイスを離した。
「あ……っ? うそ、どうして……」
「焦らし(寸止め)もまた、重要な環境ストレスだ。渇望しろ。私を求めろ。君の意思など粉々に砕け散るまで」
身体中が、満たされない熱で疼く。
血管の中をマグマが流れているようだ。
苦しい。欲しい。彼に、埋めてほしい。
プライドも恥じらいも、汗と共に流れ落ちていく。
私は涙に濡れた瞳で、支配者を見上げた。
「ケイル……お願い……ください……。私を、めちゃくちゃにして……」
私の敗北宣言を聞くと、彼は満足げに口角を吊り上げた。
「よく言った。では、本番(テラフォーミング)を開始する」
第三章 創世記の捕食者
世界が、反転する。
ケイルが私に覆いかぶさった瞬間、私は自分が小さな羽虫になり、巨大な捕食植物に飲み込まれたような錯覚を覚えた。
「あぐっ、ぁぁあああっ!」
彼の一部が、私の最奥を穿つ。
それは熱く、硬く、私の存在そのものを塗り替えるための楔(くさび)だ。
避妊や優しさといった概念は、この部屋には存在しない。
あるのは、種を植え付け、根付かせようとする、暴力的で神聖な儀式だけ。
「狭いな……。だが、すぐに私の形に馴染む」
「お、おおきい……っ、裂けちゃう……こわれるぅっ!」
「壊れろ。一度壊れて、私専用の器として再生するんだ」
彼が腰を打ち付けるたび、激しい衝撃が背骨を伝って脳を揺らす。
思考が白く飛び、自分が誰なのか、ここがどこなのかも分からなくなる。
ただ、彼と繋がっている場所から、焼き切れるような快楽が押し寄せてくるだけ。
波ではない。
津波だ。
何度も何度も、限界を超えた絶頂が私を襲う。
「い、くっ……! いくぅっ! また、イっちゃうのぉぉっ!」
「逃がさない。全て受け入れろ、エレナ!」
彼は私の腰を掴み、さらに深く、執拗に、奥の奥にある子宮の入り口をノックする。
そこを突かれるたび、目の前で火花が散り、魂が抜かれていくような感覚に陥る。
私の内壁は、彼の侵入を拒むどころか、逃がさないようにと強く絡みつき、吸い付いていた。
そう、私は最初から、これを望んでいたのだ。
冷徹な科学者として振る舞いながら、心のどこかで、彼のような圧倒的な存在に征服されることを。
「ケイル……さま……っ、愛して……もっと、汚してぇっ!」
「ああ、愛しているとも。君のその、理性が崩壊した顔こそが、この星で一番美しい花だ」
彼の重い愛が、熱い奔流となって私の中に注ぎ込まれる。
一度、二度、三度。
終わらない脈動。
私の身体は弓なりに反り、声にならない絶叫を上げて、彼の腕の中で完全に溶け出した。
意識が戻りかけたとき、私はケイルの胸の中で微睡んでいた。
窓の外には、テラフォーミングが進み、赤から緑へと変わりつつある惑星の大地が広がっている。
けれど、私にとっての世界は、もうこの男の腕の中だけだった。
「これからは、君がこの星の母体(マザー)だ」
彼は私の汗ばんだ髪にキスを落とす。
私は力なく微笑み、その首に腕を絡めた。
もう、研究室に戻ることはないだろう。
私は極限環境に適応したのだ。
『彼に支配される』という、永遠の快楽の牢獄に。