氷の檻、蜜の契り

氷の檻、蜜の契り

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第一章 凍てつく契約

乾いた音が、広い執務室に響いた。

万年筆を置く、ただそれだけの音。

だが私、月島美緒(つきしま みオ)にとっては、人生が決定づけられた断頭台の音のように聞こえた。

「これで成立だ」

デスクの向こう側。

革張りの椅子に深く腰掛けた男――桐生和臣(きりゅう かずおみ)が、氷のような瞳で私を射抜く。

桐生グループの若き総帥。

冷徹、無慈悲、そして完璧な美貌を持つ男。

没落寸前の実家を救うため、私はこの男に「買われた」のだ。

「……はい。これから、よろしくお願いいたします」

震える声で告げると、和臣は口の端をわずかに歪めた。

嘲笑のようにも、あるいは獲物を見定めた肉食獣のようにも見える。

「美緒。勘違いするな」

彼が立ち上がる。

長身の影が、私を覆い尽くす。

高圧的な足音が近づいてくるたび、心臓が早鐘を打つ。

「これはビジネスだ。だが、契約書には『世継ぎ』に関する条項もあったはずだな?」

あごを指先で掬い上げられる。

冷たい指先。

なのに、そこから流れ込んでくる熱が、私の芯を痺れさせる。

「初夜の義務を果たしてもらおう。……今ここで」

「え……こ、ここで、ですか?」

広いオフィス。

壁一面のガラス窓からは、東京の夜景が見下ろしている。

誰かに入られたら、という恐怖と、逃げ場のない焦燥。

「嫌か?」

耳元で囁かれる低音。

彼の吐息が、敏感な耳朶を撫でる。

ぞくり、と背筋に電流が走った。

「私の妻になった以上、お前の全ては私の所有物だ。髪の一本、指先の一つ、そして……その甘い匂いを放つ肌も」

彼は私のうなじに顔を埋め、深く息を吸い込んだ。

冷徹な仮面の下から、隠しきれない独占欲が滲み出ている。

「いい匂いだ……美緒。俺を狂わせるつもりか?」

問いかけに答える間もなく、私の唇は強引に塞がれていた。

第二章 暴かれる肌

「んっ……ぁ……!」

キスではない。

それは捕食だった。

唇を噛み、舌を絡め、口内の酸素と唾液をすべて奪い尽くすような、激しい蹂躙。

ビジネス? 契約?

そんな言葉とは裏腹の、煮えたぎるような情熱がそこにはあった。

「か、ずおみ、さん……」

唇が離れた一瞬、酸素を求めて喘ぐ。

だが、彼は休むことを許さない。

シャツのボタンが弾け飛ぶ音がした。

乱暴な手つき。

あらわになった鎖骨に、熱い唇が押し付けられる。

「あッ……!」

鋭い痛みと、その後に広がる甘い痺れ。

彼がキスマークを刻みつけたのだ。

「俺のものだという証だ。……もっと深く、刻み込んでやる」

彼の手が、スカートの裾から滑り込んでくる。

大きな掌。

ストッキング越しでも伝わる、火傷しそうなほどの熱量。

「ひゃ……っ!」

太ももの内側を、わざとらしくゆっくりと撫で上げられる。

指先が際どいラインをなぞるたび、私の体は意思に反して跳ねた。

「正直な体だ。震えているぞ?」

「ち、違います……これは、怖くて……」

「嘘をつくな」

和臣の指が、秘められた場所へと到達する。

下着の上から、確信犯的にその膨らみを押し潰した。

「んあぁっ!」

声が漏れる。

恥ずかしい。

こんな、オフィスのデスクに押し付けられて、こんな声を。

「濡れているじゃないか。恐怖で濡れる女がいるか?」

残酷な指摘。

彼は私の抵抗など意に介さず、障害物を排除していく。

冷たい空気が肌に触れたのも束の間、すぐに彼の熱い視線が私の裸身を舐め回した。

「美しい……」

先ほどまでの冷徹な瞳が、今は欲情で濁り、怪しく光っている。

その瞳に見つめられただけで、身体の奥が熱く疼いた。

「見せてみろ。お前の本当の姿を」

デスクの上に仰向けにされる。

書類が床に散らばるが、彼は気にも留めない。

私の両足を開き、その間に彼が割り込む。

見上げれば、整った顔立ちが苦悶に歪んでいるのが見えた。

彼もまた、限界が近いのだ。

第三章 理性の崩壊

「もう、待てない」

和臣の低い唸り声と共に、彼の熱源が私の入り口に押し当てられる。

硬く、脈打つ熱。

その圧倒的な存在感に、本能的な恐怖と、どうしようもない期待が入り混じる。

「美緒、こっちを見ろ。俺だけを見ろ」

命令と共に、彼は一気に距離を詰めた。

「あ、あぁぁぁーーッ!」

身体が引き裂かれるような衝撃。

けれど、それはすぐに脳髄を溶かすほどの快楽へと変わっていく。

彼が私の最奥まで侵入し、内側からすべてを埋め尽くした。

「きつ……ッ。なんて中だ……」

和臣が荒い息を吐きながら、私の腰を掴む指に力を込める。

逃がさない。

絶対に逃がさないという、強固な意志。

動き始めた彼のリズムは、容赦がなかった。

「んっ、ぁ、あッ、激し、すぎ……っ!」

「お前が悪いんだ。俺をここまで飢えさせた」

突かれるたび、視界が白く明滅する。

敏感な部分を執拗に擦られ、抉られる。

理性など、とうに吹き飛んでいた。

「あっ、そこ、だめ、おかしく、なるぅッ!」

「おかしくなれ。俺のために、狂ってしまえ」

彼はわざと、私が一番感じてしまう一点を狙って打ち付ける。

快楽の波状攻撃。

頭の中が真っ白になり、指先が彼の背中に食い込む。

爪を立て、彼にしがみつくことしかできない。

「いい声だ……もっと啼け。俺の名前を呼べ」

「かず、おみ、さん……っ! あッ、あッ、すき、すごいっ!」

蜜が溢れ、彼を受け入れる音が、静かなオフィスに卑猥に響き渡る。

恥ずかしさよりも、快感が勝る。

もっと欲しい。

もっと奥まで。

彼に満たされたい。

私の思考は、完全に彼という毒に侵されていた。

第四章 蜜の虜

終わりが見えない。

何度も絶頂に達し、力尽きそうになっても、和臣は許してくれない。

「まだだ。まだ足りない」

彼は私を抱き上げると、今度は窓ガラスに手をつかせた。

眼下には煌めく東京の夜景。

背後には、獣のような彼。

「この景色よりも、今の美緒のほうがずっと綺麗だ」

背後からの愛撫。

耳元で囁かれる愛の言葉。

冷徹な御曹司はどこへ行ったのか。

今の彼は、ただ愛を乞い、愛を貪る一人の男だった。

「あ、あぁ……っ、深い、深いのっ!」

「そうだ、全部受け入れろ。俺の愛を、俺の欲望を」

再び波が押し寄せる。

今度は先ほどよりも大きく、高い波だ。

身体の芯が熱く溶解し、魂ごと彼に吸い取られていくような感覚。

「いく……っ、一緒に、いって……!」

「ああ……美緒……ッ!」

彼が最奥で震え、熱い奔流を解き放つ。

私もまた、目の前が真っ白になるほどの絶頂の中で、意識を手放しかけた。

身体の中で脈打つ彼の鼓動。

私たちは一つに溶け合い、境界線が消滅していた。

最終章 永遠の独占

事後。

和臣は私の身体を丁寧に拭い、自分のシャツを羽織らせてくれた。

ソファに抱きかかえられ、彼の広い胸に顔を埋める。

「……契約の話だが」

彼の声は、まだ情事の余韻を含んで甘く嗄れていた。

「一つ、訂正がある」

「訂正、ですか?」

まさか、身体の相性が悪かったから破棄、なんて言われるのだろうか。

不安に駆られて見上げると、彼は優しく、けれどどこか狂気を孕んだ瞳で微笑んだ。

「期限付きの契約ではない。これは、終身刑だ」

「え?」

「実家を救う? そんなものは口実だ。俺はずっと前から、お前が欲しかった」

彼は私の髪にキスを落とす。

「お前のその香り。その瞳。ずっと俺だけのものにしたかった。だから、罠を張ったんだ」

冷徹な御曹司の仮面の下にあったのは、長年募らせた重く、暗く、そして深い愛。

「逃がさない。死ぬまで、俺の腕の中で溺れていろ」

その言葉は、命令であり、呪縛であり、そして最高の愛の告白だった。

私は彼のシャツをぎゅっと握りしめる。

逃げるつもりなど、もうない。

この甘美な檻の中でなら、一生囚われていてもいい。

「……はい、あなた」

私が答えると、彼は満足げに目を細め、再び私の唇を塞いだ。

夜はまだ、終わらない。

AI物語分析

【主な登場人物】

  • 月島美緒(つきしま みお): 繊細で儚げな美女。類稀なる嗅覚を持ち、香りを操る才能があるが、家族から虐げられて育ったため自己肯定感が極端に低い。和臣の強引な愛撫によって、自身も知らなかった「女」の部分を開花させていく。
  • 桐生和臣(きりゅう かずおみ): 桐生グループの冷徹な総帥。氷のように冷たい表情の下に、美緒への煮えたぎるような独占欲と執着を隠し持っていた。彼女の作った香水だけを纏い、彼女の香りなしでは眠れないほどの重度の中毒者。

【考察】

  • 香りのメタファー: 物語の中で「香り」は、視覚以上に本能に訴えかける要素として描かれている。和臣が美緒に執着するきっかけも香りであり、理性が崩壊するスイッチもまた香りである。これは、言葉(契約)よりも本能(嗅覚)が優位に立つことを示唆している。
  • 「檻」の二重性: タイトルの「檻」は、物理的なペントハウスの閉鎖性と、和臣の独占欲という心理的な拘束の両方を意味する。しかし、美緒にとってその檻は恐怖の対象から、最終的には「守られ、愛されるための聖域」へと変貌を遂げている。
  • 契約の逆転: 当初は「実家を救うための契約」という主導権が曖昧な状態だったが、結末において和臣が「罠だった」と明かすことで、最初から全ての主導権は彼にあったことが示される。この構造は、読者に「逃げられない背徳感」と「愛されている安心感」を同時に与える仕掛けとなっている。
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