破滅回避の調香師は、冷徹公爵に『感度』を管理される

破滅回避の調香師は、冷徹公爵に『感度』を管理される

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「動くな。……まだ、許可していない」

耳元で囁かれた絶対零度の声に、私の背筋は恐怖とは違う、もっと粘度のある熱で粟立った。

視界が滲む。

思考が白い霧に包まれていく。

冷たい執務机の上に押し付けられた頬が熱い。

背後に立つ男――この国の影の支配者であり、私の「債権者」であるヴァレリアス公爵の指先が、私の背骨をピアノの鍵盤でも叩くように、ゆっくりと、意地悪く下へと滑り落ちていく。

「っ、あ……閣下、これ以上は……!」

「黙りなさい、エリーズ。これは『監査』だ。君が開発したこの香油……『月下美人の雫』と言ったか? その効能を、開発者自身が証明してみせろ」

逃げ場はない。

私は前世の記憶を持つ転生者だ。

本来なら、この後に訪れる断罪イベントを回避するため、現代知識を駆使した「香水ビジネス」で莫大な借金を返済し、優雅な独身貴族を貫くはずだった。

けれど、最大の誤算があった。

私の作った香りが、この冷酷な捕食者の「独占欲」という名の導火線に、火をつけてしまったことだ。

第一章 負債とフェロモンの調合比率

私が転生したのは、乙女ゲームの悪役令嬢エリーズ。

実家は浪費で傾き、両親は夜逃げ。

残されたのは莫大な借金と、カビ臭い屋敷だけ。

通常ならここで王子に擦り寄り、ヒロインを虐めて破滅する。

だが、私は違った。

前世、調香師としてブラック企業で酷使されていた知識がある。

(この世界の人間は、香りの『レイヤリング』を知らない……!)

私は錬金術と現代化学を融合させ、脳の大脳辺縁系――つまり、本能と感情を直接刺激する「魔性の香水」を開発した。

狙いは的中した。

貴族たちの間で私の香水は爆発的に売れ、借金返済の目処が立った、はずだった。

「素晴らしい経営手腕だ。だが……計算が合わないな」

執務室に呼び出された私に、ヴァレリアス公爵は羊皮紙を突きつけた。

「君の借金は、利息を含めると昨日の時点で倍になっている」

「なっ……そんな暴利、法律で認められていません!」

「私が法だ」

彼は琥珀色の瞳を細め、獲物を値踏みするように私を見下ろした。

整いすぎた美貌が、逆に恐ろしい。

彼は立ち上がり、ゆっくりと私に歩み寄る。

その手には、私が最高傑作として秘密裏に調合した小瓶――媚薬に限りなく近い、鎮静と興奮の矛盾を孕んだオイルが握られていた。

「返済の代わりと言ってはなんだが……君には新しい事業プランを提案しよう」

「じ、事業……ですか?」

「ああ。『人体における官能深度の限界測定』だ。被験者は君一人。開発者は私だ」

意味がわからず後ずさる私の腰を、強靭な腕が引き寄せた。

「君はこの香りで男を惑わし、金を巻き上げた。……なら、その『責任』を取るべきだろう?」

逃げようとした瞬間、蓋が開けられた小瓶から、甘く、重たい香りが爆発的に広がった。

それは私が作った香りなのに、彼が纏うと、まるで致死性の毒のように私の理性を侵食し始めた。

第二章 経営戦略的寸止め拷問

「んっ、ぁ……! ひ、ぅ……!」

机の上に散らばる書類が、私の汗で濡れていく。

ドレスの背中は無残に切り裂かれ、露わになった肌に、彼の手によって香油が塗り込まれていた。

熱い。

焼けるように熱い。

「いい声だ。だが、まだ早い」

ヴァレリアス公爵の手つきは、あまりにも冷静で、かつ執拗だった。

彼は決して、直接的な行為には及ばない。

ただ、私の肌の敏感な一点一点を、正確無比な手つきで「開発」していくだけだ。

肩甲骨のくぼみ。

背骨のライン。

腰のくびれ。

彼の指が触れるたび、そこから電流のような痺れが走り、脳髄が白く弾ける。

「あ、だめ……そこ、は……おかしく、なる……っ!」

「おかしくなればいい。君が作ったんだろう? この香りは、体温で揮発し、皮膚から浸透して神経を過敏にさせる」

彼は楽しげに囁き、私の耳朶を甘噛みした。

「君の肌は今、最高品質の絹よりも滑らかで、そして……熟れた果実のように震えている。……もっと、見せてくれ」

「おねが、い……許して……」

「許す? 何をだ? 私はまだ、何もしていないぞ」

その通りだ。

彼はただ、オイルを塗っているだけ。

それなのに、私の体は勝手に熱を帯び、奥底からどうしようもない渇きがこみ上げてくる。

(これが、私の作った香りの効果……? 嘘、こんな……!)

自分の知識が、自分の体が、自分のものでなくなっていく恐怖。

しかし、それ以上に恐ろしいのは、この状況に抗えないどころか、彼の冷たい指先が離れることを「怖い」と感じ始めている自分自身の本能だった。

「焦らされるのは嫌いか? エリーズ」

彼は私の首筋に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。

「いい匂いだ。恐怖と快楽が混ざり合った、君だけの香りだ」

ズズッ、と衣擦れの音が響く。

彼の手が、ドレスの裾から滑り込み、太腿の内側を這い上がってきた。

「ひっ!」

「……濡れているな。嘘つきな口とは裏腹に、君の『下の口』は正直だ」

恥辱で顔が沸騰しそうだ。

けれど、彼の手は核心には触れない。

触れそうで触れない、ギリギリの場所を円を描くように撫で回す。

「焦がれろ。乞い願え。……私が与えるまで、君はイくことすら許されない」

それは、拷問だった。

甘く、残酷で、逃げ出すことなど考えられなくなるほどの、快楽の檻。

第三章 決算報告と堕ちる理性

時間はどれほど経過したのだろう。

数分だったかもしれないし、数時間だったかもしれない。

私はもう、涙と涎で顔をぐしゃぐしゃにして、ただ喘ぐことしかできなくなっていた。

「うあ、あ……! くださ、い……! ヴァレリアス様、もう、限界……!」

「何が欲しい?」

「あなた、が……欲しい……! 奥、突き上げて……壊してぇ……!」

プライドも、悪役令嬢としての矜持も、現代知識も、すべてが溶けて消えた。

残ったのは、目の前の男に満たされたいという、動物的な欲求だけ。

「よく言った」

ヴァレリアス公爵は満足げに微笑み、私を机の上で仰向けにさせた。

彼の瞳の奥に、暗い、狂気じみた情欲の炎が見える。

「君は優秀な経営者だ、エリーズ。……だが、君という『資産』の管理者は、これからは私だ」

彼が自身の楔を、私の準備ができきった秘所に宛がう。

熱い。

硬い。

その質量を感じただけで、腰が勝手に跳ねる。

「待て。……まだだ」

「っ!? 嘘、意地悪……!」

「君が完全に、私のものだと誓うまで……この『契約』は完了しない」

彼は入り口で止めたまま、ぐり、と先端を擦り付けた。

「ひあぁぁぁっ!」

一番感じるところを、一番残酷な方法で刺激される。

目の前がチカチカと明滅する。

「誓うか? 二度と、他の男に香りを売らないと。君のすべてを、私だけに捧げると」

「ちか、います……! 誓うからぁ……!」

「いい子だ」

その瞬間、堰を切ったように、彼が私の中に雪崩れ込んできた。

「ぎ、あぁぁぁぁぁっ!」

満たされる、という言葉では生温い。

内側からこじ開けられ、侵略され、塗り替えられていく感覚。

私の狭い場所は、彼の圧倒的な熱量で埋め尽くされ、逃げ場のない快感の波が、脳髄を焼き切る勢いで押し寄せた。

「ん、く……ッ! 締め付けるな……! まるで、私を食い千切るつもりか……?」

「あ、あ、すごい、おっき、い……! 奥、あたる、ぅぅぅ!」

彼は理性のタガが外れた獣のように、激しく腰を打ち付けた。

机がガタガタと音を立て、インク壺が床に落ちて割れる。

けれど、そんな音など私たちの耳には届かない。

何度も、何度も。

意識が飛びそうになるたびに、彼が唇を塞ぎ、無理やり現実に引き戻す。

「逃がさない。……君が壊れるまで、愛してやる」

それは愛の言葉というより、呪詛に近かった。

絶頂の瞬間に見た彼の顔は、この世の誰よりも恐ろしく、そしてどうしようもないほど美しかった。

第四章 永続的独占契約の罠

事後の気怠い空気が、執務室に充満していた。

私はヴァレリアス公爵の膝の上で、力なくぐったりと寄りかかっている。

体中が、彼の噛み跡とキスマークだらけだった。

「……これで、借金の利息分くらいにはなったか?」

彼が私の髪を弄りながら、満足げに呟く。

私は掠れた声で抗議しようとしたが、喉が鳴るだけだった。

「さて、エリーズ。先ほどの契約だが……」

「け、いやく……?」

「君は『すべてを捧げる』と言ったな。あれは、生涯契約の同意とみなした」

彼は引き出しから、新しい書類を取り出した。

そこには『婚姻届』と書かれている。

「ま、待ってください! それは詐欺です!」

「詐欺? 違うな。これは『合併吸収』だ」

彼は妖艶に笑い、私の耳元で囁いた。

「君の現代知識とやらも、その魅力的な体も、すべて私の管理下に置く。……拒否権はないぞ?」

再び、彼の手が私の胸元に伸びる。

さっきまであんなに激しく愛されたのに、私の体は、彼の指先一つでまた甘い疼きを思い出してしまう。

(ああ、間違いない……)

私は破滅フラグを回避したつもりだった。

けれど、待っていたのは処刑台よりも逃れられない、甘くて重い、愛という名の檻だったのだ。

「さあ、夜はまだ長い。……次の『実験』を始めようか」

悪役令嬢の経営改革は、ここで幕を閉じる。

これからは、冷徹公爵による、私への終わりのない『経営指導』が始まるのだから。

(完)

AI物語分析

【主な登場人物】

  • エリーズ (Elise): 現代日本のブラック企業調香師から転生。論理的で計算高いが、想定外の快楽には抗えない「開発途中」の体質。ヴァレリアスの冷徹な支配に恐怖しつつも、与えられる極上の快楽に依存し始めている。
  • ヴァレリアス公爵 (Duke Valerius): 国の影の支配者。感情を表に出さない冷血漢だが、内面は異常な独占欲の塊。エリーズの才覚を認めつつ、それを「自分だけが管理したい」という歪んだ愛で包み込む。サディスティックな焦らしを好む。

【考察】

  • 香りと支配のメタファー: 本作における「香水」は、単なる商品ではなく「他者の感情をコントロールする力」の象徴である。エリーズはそれをビジネスに利用しようとしたが、ヴァレリアスはその力を逆手に取り、エリーズ自身の理性をコントロールする手段として用いた。これは「知識(理性)」が「本能(情欲)」に敗北する構図を描いている。
  • 「経営」と「調教」の並列化: タイトルや本文にある「監査」「資産」「合併吸収」といったビジネス用語は、ヴァレリアスによる性的な支配行為のメタファーとして機能している。彼にとって愛とは対等な交流ではなく、完璧なマネジメント(管理)対象であることを示唆しており、現代社会的な契約関係と前時代的な所有欲の倒錯的な融合が見られる。
  • 寸止めの美学: 物語の核心は「行為そのもの」ではなく、そこに至るまでの「過程の支配」にある。ヴァレリアスがエリーズに強いる「待て」は、彼女の主体性を奪う儀式であり、最終的な結合の瞬間に彼女が自ら「陥落」を懇願することで、完全な服従が完成する構造となっている。
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