第一章: 剥がれ落ちた傲慢と変異の兆し
レオン・フォン・アシュブルック「あぐっ……あ、熱い、身体が……内側から裂ける……っ! なんだこの呪いは、私の魔力が、全部……っ!」
鼻腔を突き刺すのは、羊皮紙が爆ぜた焦燥の臭気。床に散乱した禁書の残骸の中で、誇り高き白銀の長髪が無残に石畳の泥を舐める。
爪が割れるほど強く床を掻きむしるが、指先の感覚は急速に麻痺していく。
ギルバート・クライヴ「へえ、すげえ声で鳴くじゃねえか、天才レオン様。男のプライドごと、立派に溶けちまったな?」
革靴の底がすぐ目の前で停止した。見下ろす巨躯の影が、痙攣する背中に濃い闇を落とす。
骨が軋み、縮んでいく……肺腑を直に握られたような熱痛。なぜだ、なぜ私の腕が、指が、こんなにも細く縮んでいる……っ!?
仕立ての良い特待生用の漆黒ローブが、まるで他人の衣服のようにだぶつく。
布地の内側、突如として激痛を伴いせり上がった柔らかな双丘が、薄いインナーを痛烈に押し上げた。
乳頭が衣擦れだけで異常な熱を帯び、電流のような快痛が背筋を貫く。
レオン・フォン・アシュブルック「ふざけるな……ギルバート! 見るな、私を見るな……っ! 早く解呪班を呼べ!」
喉の奥から絞り出した怒声は、低く凛とした青年の響きを失い、かすれ、湿り気を帯びた甲高い悲鳴となって木霊した。
ギルバート・クライヴ「呼ぶわけねえだろ。その呪い――古代の『絶陰の転生胎』だぞ。学園に知られたら即刻隔離、一生解剖台の上だ」
レオン・フォン・アシュブルック「な、に……っ? 私はアシュブルックの跡継ぎだぞ……女の身体など、冗談はやめろ……っ!」
荒い呼吸のたび、陶器めいた白い顎を伝って、紅い瞳から涙がぼろぼろと床へ零れ落ちる。
変異した皮膚は外気に触れるだけで粟立ち、下腹部の奥底にぽっかりと空いた虚無が、激しい渇きを訴えてズクズクと脈打つ。
ギルバート・クライヴ「ほら、魔力核が空っぽで息も絶え絶えだ。死にたくなきゃ、俺に縋れ」
黒革の手袋が脱ぎ捨てられる乾いた音。ギルバートの無骨な指先が、はだけた胸元から露わになった白い鎖骨を、熱鉄のように無遠慮になぞり下ろした。
レオン・フォン・アシュブルック「ひゃああっ!? な、にを……頭の奥が、痺れ……っ!」
接触した皮膚から、暴力的な密度の魔力が奔流となって脊髄へ逆流する。
全身の毛穴が開き、下腹部に激しい痙攣が走ると同時に、細く引き締まった腰が天井へ向けて激しく跳ね上がった。
ギルバート・クライヴ「俺の魔力だけが、お前の飢えた穴を満たせるんだよ。プライド抱いて干からびるか、俺の牝になるか選べ」
耳元に吹き込まれた熱い低音に、レオンの思考回路が焼き切れる。
その刹那、重い石壁の彼方から、規則正しく冷ややかな足音がコツン、コツンと石畳を叩いて近づいてきた。
エレナ・ヴァレンシュタイン「地下書庫で魔力の乱れを検知しましたわ。誰かそこにいまして?」
第二章: 秘密の調律と歪んだ共犯関係

レオン・フォン・アシュブルック「はぁっ、はぁっ……ギルバート、早く……魔力を寄越せ……っ。回路が、焼き切れそうだ……っ!」
埃の舞う旧校舎の器具準備室。重苦しい金属の施錠音がガチャリと落ちる。
壁に背を預けたレオンの額には冷汗が滲み、荒い吐息が唇の隙間からこぼれ落ちていた。
急激に女性化した細い四肢は冷え切り、全身の魔力経路が干からびた粘土のように軋みを上げている。
ギルバート・クライヴ「おいおい、頼み方ってもんがあるだろ。天才様が落ちこぼれに物乞いする態度か、それが?」
男物の制服をだらしなく着崩したギルバートが、嘲笑を浮かべてわざとらしく扉へ背を向けた。
レオン・フォン・アシュブルック「貴様……調子に乗るなっ! 私は男だ、高貴な貴族だ……っ!」
唇を噛み締め、血を滲ませながら睨みつけるが、ギルバートは鼻を鳴らすだけで歩みを止めない。
ギルバート・クライヴ「あっそ。じゃあそのまま干からびて死ね」
レオン・フォン・アシュブルック「ま、待て……! 行くな……頼む……っ! 私を満たしてくれ……ギルバート……っ!」
骨の浮き出た華奢な指が、床を這うように伸び、ギルバートの黒いジャケットの裾を必死で握りしめた。
ギルバート・クライヴ「よく言えました、お嬢様」
振り返った屈強な腕が、華奢なレオンの腰を軽々と抱え上げる。
剥き出しにされた無防備なうなじへ、ギルバートの獰猛な牙が無慈悲に突き刺さった。
レオン・フォン・アシュブルック「あひっ、あぁあああっ!? 濃すぎる……っ、頭が、溶ける……っ!」
太い針で直接血管を穿たれたような錯覚。荒れ狂う他者の魔力が、未熟で狭窄した魔力管を強引にこじ開けて押し寄せる。
激痛と極彩色のアヘンに似た快感が視覚を白く染め上げ、レオンの背が弓なりにしなる。
ギルバート・クライヴ「声抑えねえと外に筒抜けだぞ。首席の座がそんなに惜しいか?」
レオン・フォン・アシュブルック「ん、んぐぅ……っ! は、なせ……っ、こんな、下品な……っ!」
抵抗しようと伸ばした腕は力なくギルバートの肩を滑り落ちる。
柔らかく膨らんだ胸が固い筋肉の胸板に無残に押し潰され、抗うはずの太ももは快感の痺れで小刻みに震えを繰り返した。
ギルバート・クライヴ「いい身体になったな。もう俺の魔力なしじゃ、指一本動かせねえだろ」
肉が擦れ合う微かな水音を遮るように、真鍮のドアノブがガチャリと乱暴に回転した。
冷徹極まりない声が、薄い木板の隙間から刃のように突き刺さる。
エレナ・ヴァレンシュタイン「レオン君、そこにいるのでしょう? すぐに開けなさい」
第三章: 暴かれた擬態と最悪の真実

金属の蝶番が悲鳴を上げ、解錠術式の青白い火花と共に扉が派手に蹴破られた。
エレナ・ヴァレンシュタイン「……あら。これは何の冗談かしら」
深紅の軍服風制服の裾を翻し、生徒会長エレナの凍てつく青眼が部屋の奥を射貫いた。
エレナ・ヴァレンシュタイン「孤高の首席が、あられもない雌の姿で落ちこぼれに跨がっているなんて」
乱れた白銀の長髪、紅潮した頬、涙に濡れた長い睫毛。
レオン・フォン・アシュブルック「ち、違う……エレナ、これは呪いの暴発で……っ!」
みっともなく震え、ブカブカの制服を必死に掻き集めて肌を隠そうとするレオン。
エレナ・ヴァレンシュタイン「言い訳は見苦しいですわ。規則違反、風紀紊乱、肉体変異の隠蔽……審問塔で私が直々に飼育して差し上げます」
エレナの細い指先が詠唱の光を帯びた、その瞬間。
ギルバート・クライヴ「誰を飼うって?」
部屋中の大気が破裂せんばかりに軋み、黒泥のような重圧が爆散した。
石造りの壁面が蜘蛛の巣状にひび割れ、窓ガラスがビリビリと激しく共鳴する。
エレナ・ヴァレンシュタイン「なっ……!? これが本当にあの無能の魔力……!?」
エレナの膝が、不可視の重力に圧迫されて床に落ちる。
ギルバート・クライヴ「会長、お前じゃ扱えねえよ。こいつの身体をここまで造り替えたのは俺なんだからな」
レオン・フォン・アシュブルック「ギルバート……何を、言っている……?」
傾いた西日が薄暗い部屋を赤黒く染める中、ギルバートの琥珀色の瞳が狂気を宿して歪んだ。
ギルバート・クライヴ「レオン、あの禁書庫の結界を誰が弄ったと思ってんだ?」
レオン・フォン・アシュブルック「え……?」
ギルバート・クライヴ「俺だよ。お前に見下されるのも最高だったが……俺の腕で女になって啼く姿が見たかった」
レオン・フォン・アシュブルック「お前が……仕組んだのか……? 嘘だ……嘘だろギルバートォッ!」
信じていた日常の崩壊。かつてのライバルであり、唯一魔力を補給してくれていた男の底知れぬ悪意に、レオンの精神は完全に粉砕された。
第四章: 反転した主従と甘美なる隷属
冷たい夜風が吹き荒ぶ時計塔の最上階。下界の喧騒から隔絶された狭いバルコニーで、だぶついたローブがバタバタと激しく羽ばたく。
ギルバート・クライヴ「どうしたレオン。俺を殺したいほど憎いか?」
意識を奪ったエレナを階下の結界に置き去りにし、夜空の冷光の下、ギルバートの巨大な影が少女の輪郭を完全に呑み込んでいた。
レオン・フォン・アシュブルック「あ、あ……憎い、殺してやる……お前さえ、いなければ……っ!」
歯の根が合わぬほど震えながら、レオンは鬼気迫る形相で男を睨みつける。
だが、その瞳に宿る殺意とは裏腹に、全身の細胞は枯渇した魔力を求めて悲鳴を上げていた。
ギルバート・クライヴ「いいぜ。なら生き延びて殺してみろ。ほら、もう魔力が切れてるぞ」
差し出された逞しい右手の指先から、粘りつくような甘い魔力の燐光が微かに立ち上る。
だめだ、屈してはならない。私はアシュブルック家の男だ……だが、身体が、芯が、焼け焦げるように痛い……!
激痛に耐えかねて奥歯を噛み締め、だが次の瞬間、抗えぬ本能に支配された小さな唇が、吸い寄せられるようにギルバートの指先へ吸い付いた。
レオン・フォン・アシュブルック「ひっ……ちくしょう、身体が……勝手に……っ!」
舌先が触れた瞬間、舌根から甘美な熱の劇薬が流れ込み、背骨が電流に打たれたように跳ね上がる。
ギルバート・クライヴ「よくできました。お前はもう男には戻れねえ。俺の魔力で生きる俺の女だ」
乱暴に引き寄せられた細い腰が、男の硬い太ももの上に跨がせる形で固定される。
レオン・フォン・アシュブルック「私は……貴様を絶対に許さない……死んでもだ……っ!」
ギルバート・クライヴ「一生許すな。憎んだまま、俺に跨がって啼き続けろ」
重ねられた唇が、レオンの抗議を強引に塞ぐ。
舌を割り入れられ、肺腑の空気をすべて奪い去るような濃密な口づけと共に、規格外の魔力が喉の奥へと直接注ぎ込まれた。
視界の端が閃光に包まれ、収縮したレオンの紅い瞳孔が、悦楽の深淵に呑まれて限界まで開ききる。
レオン・フォン・アシュブルック「♥「あ……ん、ぁっ! ギルバート……もっと、奥まで……満たせ……っ!」[/Heart]」
華奢な白い腕は、激しい憎悪を瞳に滾らせたまま、しかし男の逞しい首筋へ爪を立てるほど強く、絶対に離れまいと絡みついていた。
零時を告げる鐘の重低音が、夜の冷気を震わせて響き渡る。
白銀の髪が乱暴な夜風に散り、紅い瞳からこぼれ落ちた一筋の涙は、二人の間に立ち上る熱い吐息の波に呑まれ、乾く間もなく消え去った。