第一章: 木漏れ日の街と年利18%の通知音
ピロリン♪ 今月の返済額、50,000マナのうち49,800マナが『リボ手数料』に充当されました!
ミモザ・クレスト「おめでとうございます! 今月も元本はたったの200マナしか減っていませんよ♪ 残高はあと3,420,000マナですね!」
黄金色の胞子が舞うレンガ畳。
アッシュ・バークは膝から崩れ落ちた。
煤と樹液で汚れた革製の作業ツナギから、徹夜で浴びた『装甲百足』の青い体液がポタリと垂れ、石畳の隙間に染み込んでいく。
肺の奥から絞り出すような呼吸。指先が冷たく痺れ、爪が掌の皮膚に食い込む。
アッシュ・バーク「……は? おい待てミモザ、俺は昨晩、下層根で百足の群れを魔導チェーンソーでミンチにしてきたんだぞ! 5万マナ稼いで、元本が200マナしか減らねえってどういう計算だ!」
くせ毛の黒髪を乱暴に掻きむしる。
血走った三白眼で頭上の少女を睨み上げた。
巨樹の葉漏れ日に映えるモスグリーンの小粋なギルド制服。
栗色の編み込みお下げ髪を揺らし、ミモザ・クレストは大きな丸眼鏡の奥で、獲物を愛でる蛇のように細く目を眇めた。
ミモザ・クレスト「だ・か・ら、それが『あんしん元利定額リボ』の魔法なんじゃないですか♪ 年利18%の複利計算、アッシュさんの大好物でしょう?」
アッシュ・バーク「誰が好物だ! 342万の年利18%なら、月々の利息だけで5万1300マナじゃねえか! 計算が合わねえぞ!」
奥歯がギリリと鳴る。唇の端を噛み締め、鉄錆の味が口内に広がった。
ミモザ・クレスト「まあ、さすが暗算だけは早いですね! 実は先月、アッシュさんの腰の魔導チェーンソーに『刃こぼれあんしん保険(自動更新・月額3,000マナ)』を勝手に追加しておいたんです♪ その特別優待キャンペーンで、今月だけ手数料をおまけしてあげました!」
街のパン屋から漂う焼きたてのスコーンの甘い香りと、蒸気機関ののどかな汽笛が、朝の澄んだ空気を揺らして通りを抜けていく。
その平和な喧騒が、今はただ耳障りなノイズとして鼓膜を逆撫でした。
アッシュは首から下げた真鍮製の防毒ゴーグルを、金属が歪むほど強く握りしめ、重い腰を上げる。
ミモザがコツ、と革靴の踵を鳴らして一歩踏み出した。
肩掛けの革カバンを揺らし、アッシュの胸元に白い鼻先をすり寄せる。
ミモザ・クレスト「……すぅっ。ああ、機械油と焦げた樹液、それにアッシュさんの徹夜明けの汗の匂い……♥ たまりませんね」
トクン、と耳元で彼女の熱い吐息が跳ねる。
白く細い指先が、アッシュの汚れたツナギの襟元へ潜り込み、鎖骨のラインをツーッと撫で上げた。
ゾクリと背筋に悪寒と熱が同時に走り、アッシュは一歩後ずさろうとして、革カバンのストラップに指を絡め取られる。
ミモザ・クレスト「アッシュさんが過労で死なないように、毎月の支払いを一定にしてあげる優しいシステムですよ? 完済なんてしなくていいんです。一生、私の管理下で泥水すすって働いてくださいね♥」
アッシュ・バーク「ふざけんな! 俺は一括繰上返済して、てめえのその悪魔の笑顔から永遠にオサラバしてやるんだよ!」
襟元の手を振り払い、乱暴に唾を吐き捨てる。
だが、その強気な怒号とは裏腹に、胃の底が鉛を飲み込んだように重く冷えていた。
クソッ、このままじゃ死ぬまでギルドの養分だ。どこか一発で元本を削れる特需はねえのか……!
焦燥をごまかすように、アッシュが腰の無骨な魔導チェーンソーの装甲を拳で叩いた、まさにその瞬間。
『ウーッ! ウーッ! 緊急警報! 第7導管にて高圧樹液の異常膨張を検知!』
街中の真鍮スピーカーから、鼓膜を劈くサイレンが咆哮した。
足元のレンガ畳が激しく波打ち、ミモザの持つ最新型のスマホ型魔導端末が、血のような真紅の警告光を放つ。
ミモザ・クレスト「あら? これは……10年に一度の大災害、『高圧樹液の津波(サップ・フラッド)』の緊急招集ですね!」
アッシュ・バーク「……津波だと? 下層が丸ごと琥珀漬けになるやつじゃねえか」
アッシュの三白眼から、瞬き一つで疲労の色が消え失せた。
浅くなっていた呼吸を深く吐き出し、首の防毒ゴーグルを素早く目元に装着する。
黒煙を吐き出す魔導チェーンソーのグリップを握りしめた指には、すでに迷いはなかった。
第二章: 琥珀色の大津波と狂気の特需ボーナス

世界樹の内部インフラ『第7導管バルブ室』。
そこは今、蒸し焼きにされる寸前の巨大な圧力鍋と化していた。
縦横に張り巡らされた木質のパイプラインがミシミシと悲鳴を上げ、ひび割れた亀裂から、黄金色に発光する高温の樹液が間欠泉のように噴き出している。
バルド・ガング「バルブが腐食して閉まらねえ! このままじゃ下層街ごと琥珀漬けだ、総員退避しろ!」
分厚い樹皮を加工した重装甲の防護服を纏い、顔半分を覆う真鍮の呼吸マスク越しにバルド・ガングが怒鳴り散らす。
白髪交じりの無精髭を震わせ、義手の左腕に装着した巨大な魔導パイルバンカーで隔壁の閉鎖スイッチを狂ったように連打していた。
作業員たちが悲鳴を上げて逃げ惑い、肩をぶつけ合いながら出口へと雪崩れ込む。
その恐慌の渦の中、アッシュだけが蒸気と轟音の向こう側を凝視して立ち尽くしていた。
バルド・ガング「おいアッシュ、何ボサッとしてやがる! てめえもさっさと逃げやがれ!」
アッシュ・バーク「……親方、今回の緊急出動の基本給はいくらだ?」
バルド・ガング「あぁ!? 避難命令が出たんだ、手当なんざ出るわけねえだろ!」
アッシュ・バーク「タダ働きだと……!? ここまで走るのに魔導チェーンソーのアイドリングで300マナ分の燃料を食ったんだぞ!」
膝の力が抜けそうになる。300マナ。今月の元本返済額を上回る赤字だ。
導管の奥深くから、内臓を直接揺さぶるような地鳴りとともに、黄金色の大奔流が迫ってくる。
甘い松脂の匂いが一気に煮詰まり、肌を焼くような熱風がアッシュの黒髪を激しく煽った。
その灼熱の上昇気流に乗って、バサバサと小型滑空翼を広げたミモザが導管の天井から舞い降りてくる。
ミモザ・クレスト「お待たせしました! 緑陽会・債権管理課より『緊急特需キャンペーン』の発動をお知らせします♪」
アッシュ・バーク「ミモザ!? てめえ、こんな危険区域まで取り立てに来やがったのか!」
ミモザ・クレスト「今、あの大津波の直前でバルブを塞いでいる『寄生フジツボ群』を伐採した方には……なんと通常の10倍! 150万マナの危険手当を『即時・元本充当』でお支払いしまーす!」
「即時・元本充当」
その六文字が鼓膜を撃ち抜いた。
全身の毛穴が一斉に開く。
ドクン、と心臓が肋骨を蹴り上げるように大きく跳ねた。
喉の奥がカラカラに乾き、視界の端が赤く明滅する。
アッシュ・バーク「……元本に、直で入るだと? 手数料も利息も抜かれずに、あの3,420,000の数字が……ゴリッと150万も削れるのか……!」
死んだ魚のような三白眼が、血に飢えた肉食獣のそれへと変貌し、ギラリと黄金の光を反射した。
口角が耳元まで不自然に吊り上がる。
アッシュは腰の魔導チェーンソーのスターターコードを、肩の関節が外れんばかりの勢いで引き抜いた。
ギュイイイインッ! と蒼い魔力火花が爆ぜ、凶暴な回転刃が鼓膜を破る咆哮を上げた。
アッシュ・バーク「命は惜しいが、来月のリボ手数料はもっと惜しいんだよ! どけぇっ、その150万は俺の元本だァッ!」
逃げてくる作業員たちの波を強引に押し分け、アッシュは黄金色の濁流が迫る導管の最深部へと単独で突っ込んでいく。
バルド・ガング「ば、馬鹿野郎! あいつ、親父と同じ場所で死ぬ気か……!」
バルドが呼吸マスクの奥で漏らしたその微かな呟き。
頭上を旋回していたミモザの魔導端末の集音マイクが、それを1デシベルたりとも逃さず拾い上げていた。
ミモザの丸眼鏡が、噴き出す樹液の閃光を反射して冷たく白く光る。
そして、暴走する樹液の熱い飛沫を浴びながら巨大フジツボの塊に飛びかかったアッシュは、フル回転するチェーンソーの刃をその根元へ渾身の力で叩き込んだ。
ガギィィィンッ!!
硬質な殻が悲鳴を上げて砕け散る。
剥がれ落ちたフジツボの肉片の下から、腐食した「旧式の魔導バルブ」が露わになった。
そこに刻まれていた生々しい傷跡。それを目にした瞬間、アッシュの呼吸がピタリと止まった。
第三章: 342万マナの正体と、債権者の愛の告白

アッシュ・バーク「……おい、バルド。通信機、繋がってるな?」
黄金の樹液が渦巻く大空洞の最深部。
蒸気と轟音を切り裂き、アッシュの氷のように冷たい声が通信回線を通って響く。
彼の目の前にある旧式バルブには、亡き父が彫ったイニシャルと共に、巨大な『角型の杭』で無理やりこじ開けられたような無惨な破壊痕が刻まれていた。
アッシュ・バーク「なんで俺が背負わされた『親父の設備破損の賠償金342万マナ』の証拠品に……てめえの左腕のパイルバンカーと全く同じ刻印があるんだ?」
隔壁の向こう側で、バルドがヒュッと息を呑む音がノイズ混じりに漏れる。
バルド・ガング「そ、そいつは10年前の事故で、お前の親父が操作を誤って……」
声が上擦り、義手の金属パーツがガチャガチャと震える音が重なった。
ミモザ・クレスト「はーい、そこまでです♪ ギルドの極秘アーカイブと照合完了しました!」
ミモザが滑空翼を畳んでアッシュの頭上のパイプに軽やかに降り立ち、スマホ型端末の画面を隔壁の向こうのバルドへ突きつける。
ミモザ・クレスト「10年前、高圧樹液の逆流にビビってバルブをパイルバンカーで破壊し、逃走したのはバルド監督、あなたですね? そしてギルドの上層部と結託して、亡くなったアッシュさんのお父様に罪をなすりつけ、遺族であるアッシュさんに『リボ払い』として架空の賠償金を背負わせた……違いますか?」
静まり返る通信機。
アッシュの脳裏に、泥水をすすり、百足の体液にまみれ、毎月49,800マナの手数料に絶望し続けた日々が走馬灯のように駆け巡る。
こめかみの血管がブチブチと音を立てて膨れ上がった。
アッシュ・バーク「なんだと……!? じゃあ俺が今まで払ってきた血の滲むような利息は、全部てめえの尻拭いだったってのかよ、バルドォッ!」
真鍮マスクの奥で、開き直ったバルドの目がどす黒く血走る。
バルド・ガング「……ああ、そうだよ! この世界樹の底じゃ、搾取する側に回らなきゃ生き残れねえんだ! お前の親父は真面目すぎて死んだ、だからお前には『借金』っていう生きる目標をくれてやったんだぜ!」
アッシュ・バーク「ふざけんな、ぶっ殺してやる……! いや待て、おいミモザ! てめえ、今のアーカイブをいつの間に調べた? 最初から知ってやがったな!?」
アッシュが血走った眼光を頭上へ振り向けると、ミモザは両頬に手を当てて、心底うっとりと陶酔した笑みを浮かべた。
ミモザ・クレスト「だって、不正債権だってバラしたら、借金がゼロになっちゃうじゃないですか! 借金がなくなったらアッシュさん、この街から出て行っちゃうでしょう!?」
琥珀色の熱風が吹き荒れる中、ミモザはゆっくりと丸眼鏡を外した。
熱気と歪んだ情欲で潤んだ瞳が、獲物を絡め取るようにアッシュを射抜く。
ミモザ・クレスト「私は一生、毎月25日にあなたと顔を合わせていたいんです♥ 命がけで働いて、手数料に絶望して、それでも私のお金のために目をギラつかせるアッシュさんを、永遠に私の手綱で縛り付けておきたいんですよぉ……♥」
アッシュ・バーク「こいつも大概イカれてやがる……! 自然災害のど真ん中で昼ドラみたいな告白してんじゃねえ!」
悪寒が熱風を凌駕した、その時だった。
隔壁の外側にいたバルドが、義手のパイルバンカーを緊急ロック装置に力任せに叩き込んだ。
ガゴォンッ! と火花を散らして分厚い鉄の隔壁が落下し、アッシュとミモザの退路を完全に遮断する。
バルド・ガング「おしゃべりはそこまでだ! 証拠のバルブごと、仲良く琥珀の化石になりやがれ!」
導管の奥から、秒速50メートルを超える黄金の樹液津波が、木質の壁を削り取りながら咆哮と共に迫ってくる。
逃げ場のない密室。
充満する熱気で、アッシュの防毒ゴーグルのレンズがピシリと音を立ててひび割れた。
皮膚がチリチリと焦げる。死の奔流が目の前に迫る。
だが、アッシュはひび割れたレンズの奥で目を細め、口の端を凶暴に歪めて笑った。
アッシュ・バーク「おいミモザ、てめえが俺の債権者なら、ここで俺が死んだら342万マナは貸し倒れだな?」
ミモザ・クレスト「えっ……? そ、それは困ります! アッシュさんのいない人生なんて、元本割れどころの騒ぎじゃありません!」
アッシュ・バーク「なら俺の命を担保に、『限度額突破(オーバーローン)』を今すぐ承認しろ! ギルドの魔力供給ライン、全部このチェーンソーにぶち込むぞ!」
第四章: 一括完済のチェーンソーと新たな契約
ミモザの瞳が歓喜に輝き、彼女の白魚のような指が、かつてない超高速で魔導端末の画面を叩いた。
ミモザ・クレスト「承認しました! 『魔力前借りリボ・フルバースト』、金利は天井知らずです! 死んだら地獄の底まで取り立てに行きますからね、アッシュさん!」
『リミッター解除。第4下層根の全予備魔力を、個体名:アッシュ・バークの魔導具へ直結します』
空洞内のマナが渦を巻いて収束し、アッシュの腰の魔導チェーンソーが太陽のような蒼白い閃光を放つ。
流れ込む莫大な魔力の奔流。
作業ツナギの両袖が風圧で弾け飛び、剥き出しになったアッシュの鍛え上げられた腕の血管が、魔力過多で青白く発光した。
筋肉が悲鳴を上げ、歯茎から血が滲む。だが、その痛みすらも今は極上の燃料だった。
アッシュ・バーク「オラァッ! これぞ『火事場の債務者モード』だ! 元本も利息も、悪徳上司もまとめて伐採してやるぜぇぇっ!!」
アッシュが咆哮と共にチェーンソーを振り抜く。
瞬間、全長10メートルを超える巨大な光の回転刃が形成され、空間そのものを焼き焦がした。
迫り来る黄金の樹液津波のど真ん中へ、光の刃を真っ向から叩き込む。
ズガァァァァンッ!!
超高圧の魔力と熱量が激突し、世界が白く塗り潰された。
轟音。衝撃波。
樹液の大津波がモーセの奇跡のように真っ二つに割れる。
それだけではない。余剰魔力を纏った光の刃は、腐食した旧式バルブを正常な位置へと強引にねじ込みながら、閉ざされていた分厚い鉄の隔壁を紙切れのように切り裂いた。
バルド・ガング「な、なんだこの出力は!? う、うわぁぁぁっ!」
隔壁の向こうで勝ち誇っていたバルドの重装甲と左腕のパイルバンカーが、光の奔流に巻き込まれて一刀両断に弾け飛ぶ。
爆風とともに、空中で急速冷却された高圧樹液が、キラキラと輝く無数の結晶へと姿を変えた。
破壊された天井の隙間から眩しい木漏れ日が差し込み、最高純度の『琥珀マナ鉱石』が黄金の雪のように下層街へと降り注ぐ。
煙が晴れた広場の中央で、アッシュは黒焦げになったチェーンソーを杖代わりに突き立て、肩で荒い息を吐いた。
肺が焼けるように熱い。指先は痙攣し、立っているのがやっとの状態だった。
それでも、彼はひび割れたゴーグルを額にずらし、舞い降りてくる少女へ顔を向けた。
アッシュ・バーク「はぁ、はぁ……どうだ、ミモザ……! 津波は止めた、バルドの不正も暴いた、それにこの特級の琥珀鉱石の採掘ボーナス……!」
ミモザが琥珀の雪の中でスカートを揺らして着地し、端末の画面をアッシュの目の前に掲げる。
『査定完了。不正債権3,420,000マナの抹消、および特級琥珀ボーナスを確認。現在の借金残高……0マナ』
画面に表示された、あまりにも美しく、あまりにも遠い存在だった『0』の数字。
アッシュの三白眼が見開かれ、煤だらけの頬を、熱い雫が一筋伝い落ちた。
アッシュ・バーク「……ゼロだ。ついに……ついに完済したぞぉぉっ! 俺は自由だァァッ!」
ボロボロの両手を広げ、降り注ぐ木漏れ日の空を仰ぎ見る。
10年間、首に食い込み続けていた見えない鎖が千切れ飛んだ解放感に、アッシュの全身が震えた。
その背後。
ミモザが丸眼鏡の位置を中指でクイッと直し、今日一番の、薔薇が咲き誇るような満面の笑みを浮かべた。
ピロリン♪ 新規のご契約ありがとうございます!
その軽快な電子音が、アッシュの歓喜を氷水のように冷やし尽くす。
アッシュ・バーク「……あ?」
首の骨が鳴るほどぎこちなく振り返ったアッシュの鼻先に、ミモザが新しく発光する契約書画面を突きつけた。
ミモザ・クレスト「完済おめでとうございます! でも、さっきの『魔力前借りフルバーストの燃料費』と『ギルド重要文化財である第7隔壁の器物破損』の賠償金で……新規の借金が5,000,000マナ発生しました♪」
アッシュ・バーク「ご、500万マナだとぉぉぉっ!?」
眼球が飛び出さんばかりに見開かれ、アッシュは再びレンガ畳に膝を突いた。
そんな彼の前にしゃがみ込み、ミモザは愛おしそうにその黒髪を撫でる。
ミモザ・クレスト「もちろん、アッシュさんが大好きな『あんしん定額リボ(年利18%)』に自動で切り替えておきましたよ♥ 手数料は月々75,000マナからです。ほら、早く立たないと、来月の引き落とし日に間に合いませんよ?」
耳元に吹きかけられる甘い吐息。
ミモザの瞳の奥には、決して逃がさないという底なしの独占欲が、琥珀の結晶よりも美しくギラついていた。
アッシュ・バーク「てめえは悪魔かァァァッ!! ぶっ殺す、いや完済してやる! 今度こそ一括で叩き返してやるからなァァッ!」
涙目で吠えながらも、アッシュはすでに黒焦げのチェーンソーのスターターコードに手をかけ、周囲に落ちている琥珀鉱石を血走った目でかき集め始めていた。
黄金色の美しい木漏れ日が降り注ぐ街に、今日も元気な債務者の絶叫と、それをうっとりと見守る債権者の吐息が溶け合っていく。
彼の魔導端末の残高が減る日は、まだ当分来そうにない。