第一章: くしゃみ一発、魔王城半壊
ラグナ「一撃で死ぬゴミめ! 下界の重圧に潰されて、塵となって消えろ!」
黄金の鎧と純白の翼をぎらつかせ、金髪碧眼のラグナが歪んだ冷笑を浴びせかける。
眼下に広がるのは、底知れぬ暗黒の空間。
破れた純白の薄衣から白い鎖骨と胸元を無防備に晒し、銀髪と琥珀色の瞳を激しく揺らしながら、ルシアンは真っ逆さまに落下していく。
ルシアン「うわあぁっ、死ぬ! 今の風圧で、俺の肺が破裂するぅっ!」
息が吸えない。喉の奥がひりつく。
魔力測定器すら粉々に壊れた戦闘力ゼロの俺なんか、地面にぶつかる前に、空気の摩擦熱で消し炭になるんだ!
冷たい指先が空を掻く。鼓膜を突き破る暴風の轟音。
直後、黒曜石で造られた魔王城の天井を隕石の速度で貫き、ルシアンは玉座の間の石畳へと激突した。
轟音。揺れる大地。
舞い上がる焦げた石の粉塵を肺いっぱいに吸い込み、青白い顔のルシアンが小さく鼻をひくつかせる。
ルシアン「あっ、むずむずする……は、はくしゅん!」
《深呼吸・改(ただのくしゃみ)》の衝撃波が炸裂し、魔王城の半分が音もなく蒸発した。
暴風が吹き荒れ、分厚い城壁も、禍々しい魔族の彫像も、すべてが塵となって虚空へ消え失せる。
ルシアン「ひぃぃっ! 下界の空気が重すぎて、くしゃみの反動で内臓が全部飛び出るかと思った……! もうだめだ、俺はここで一撃で死ぬんだ……!」
自分の両肩を強く抱きしめ、ルシアンはその場にへたり込んだ。唇が紫に染まり、歯の根が合わない。
その時、崩れ落ちた瓦礫の奥から、コツ、コツ、とヒールが石畳を叩く音が響いた。
黒曜石の角と艶やかな黒髪ロングを揺らし、深紅の瞳を限界まで見開いた魔王ヴェルドラが歩み出る。
ヴェルドラ「な、なんという破壊神じゃ……! くしゃみ一つで、妾の居城を半壊させるとは……!」
警戒に身を固くするヴェルドラ。だが次の瞬間、彼女の視線が、瓦礫の中心でガタガタと震えて涙目を浮かべる儚げな美少年の姿に釘付けになる。
呼吸が止まる。深紅の瞳孔が、カッと開いた。
待て……あの透き通る銀髪、破れた服から覗く白い鎖骨、今にも折れそうな細腰で子猫みたいに震えておる……!? 尊い、尊すぎるぞぉぉっ!
理性が吹き飛ぶ。漆黒のゴシックドレスから零れ落ちそうなIカップの爆乳を激しく揺らし、ヴェルドラは目にも留まらぬ速さでルシアンへと駆け寄り、その華奢な身体を力いっぱい掻き抱いた。
ヴェルドラ「おお、よしよし! 妾の胸で泣くがよい、誰もそなたを傷つけぬぞ! 怖かったでちゅね〜、よしよし♥」
むせ返るような甘い香りと、窒息しそうなほど圧倒的な肉の弾力。顔面ごとその深い谷間に包み込まれ、ルシアンが琥珀色の瞳を驚きに潤ませる。
ルシアン「うぅ……すごく柔らかくて、温かい……。あ、あの、あなたも、俺をいじめないのか……?」
上擦る声。すがるようにヴェルドラのドレスの裾を握りしめる白く細い指先を見つめ、魔王の口元からだらしない吐息が漏れる。
ヴェルドラ「いじめるものか! 妾は魔王ヴェルドラ、今日からそなたの専属介護係じゃ! ほれ、もっとおっぱいにお顔を埋めるがよいぞ♥」
たぷん、と豊かな双丘が揺れ、ルシアンの頬を優しく押し潰す。
張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れ、安心したルシアンのお腹が、ぐぅ、と小さく鳴った。
耳まで真っ赤に染め、ルシアンは羞恥に視線を彷徨わせる。
ルシアン「うぅ……落下で体力を使い果たして、お腹が空いて死にそうだ……」
ヴェルドラ「むふふ、すぐさま魔界最強の栄養スープを作ってしんぜよう!」
第二章: 猛毒スープと過剰な介護

天蓋付きの巨大なベッドの上。ヴェルドラが禍々しい紫色の液体を銀の匙ですくい、ふうふうと息を吹きかけている。
匙から立ち昇る湯気だけで、空間がわずかに歪んでいた。
ヴェルドラ「さあルシアン、あーんじゃ。下界の人間なら一口で爆死する、超高濃度魔力スープでちゅよ〜」
ニコニコと慈愛に満ちた笑みを浮かべるヴェルドラだが、その背中には冷たい汗がびっしょりと張り付いている。
天上界の空気と物質は、下界の一万倍の密度と聞く。そこを生き抜いたこの子は、力を制御できぬ歩く天災……! ここで妾が徹底的に甘やかして手懐けねば、魔界ごと世界が滅ぶわい!
差し出された匙を前に、ルシアンは無意識に唇を噛み、恐る恐る口を開いた。
ルシアン「ご、ごくり……。うわぁ、すごく優しい薄味のスープだ……! お湯みたいにサラサラしてて、俺の弱い胃でも消化できるよ!」
パァッと顔を輝かせるルシアン。対するヴェルドラの頬が、ひくひくと激しく引きつる。
ヴェルドラ「ま、魔界の猛毒エキスを煮詰めた劇物を『お湯みたい』じゃと!? なんと恐ろしい胃袋……いや、美味しそうに飲むお顔が可愛すぎるからヨシ!」
お腹が満たされたルシアンは、青白い顔で小さくあくびを漏らし、眉をひそめてベッドの上で寝返りを打った。
ただ、それだけの動作。
ミシミシッと耳を劈く轟音が響き、黒鉄製のベッドの支柱が粉々に砕け散った。
猛烈な粉塵が舞い上がり、最高級のマットレスが床へと沈み込む。
ルシアン「ひゃあっ! ベ、ベッドが柔らかすぎて体が沈んで死んじゃう! 下界の家具は、俺の薄い皮膚を突き刺す罠なのか!?」
パニックに陥り、涙目でヴェルドラの袖をきゅっと引っ張るルシアン。
その無防備な仕草に、ヴェルドラの脳内で何かが弾け飛んだ。
ヴェルドラ「はぁぁん、寝返り一つで魔界の黒鉄を砕く怪力なのに、涙目で妾の袖を引っ張っておる……! たまらん、性癖が爆発するわい♥」
荒い鼻息を吐きながら、ヴェルドラがドレスの胸元を自ら大胆に押し広げた。そのまま壊れたベッドへと滑り込み、震えるルシアンの華奢な身体を背後から羽交い絞めにする。
ヴェルドラ「硬いベッドはめっ、じゃな! 今日からは妾のこの豊満な肉体を、そなた専用の抱き枕にするがよいぞ!」
背中全体に押し当てられる、圧倒的な質量と吸い付くような柔肌の感触。
ルシアン「えっ、いいの……? うわぁ、たぷたぷしてて最高のお布団だ……ヴェルドラ様、すごくいい匂いがする……」
とろりとした目でヴェルドラの胸に頬を擦り寄せるルシアン。
だが、その甘美な空気を切り裂くように、眩い神聖な光が、吹き抜けとなった天井から轟音と共に降り注いだ。
ラグナ「まだ生きていたか、一撃で死ぬゴミめ! 魔王ごと貴様を消去してやる!」
第三章: 天界エリートの全力(微風)

半壊した中庭に降り立ったラグナが、黄金の槍を構えて傲慢に鼻を鳴らす。その周囲には、下界の空気を焼き焦がすほどの神聖力が渦巻いていた。
ルシアン「ひぃぃっ! ラグナ様だ! 追放した俺をわざわざトドメを刺しに来るなんて、今度こそ一撃で死んじゃう!」
血の気を失ったルシアンがヴェルドラの背後に隠れ、生まれたての小動物のようにガクガクと膝を震わせる。
その冷たい指先が背中に触れた瞬間、ヴェルドラの深紅の瞳にどす黒い殺意が宿った。
ヴェルドラ「おのれ天上界の羽虫め、妾の可愛いルシアンを怯えさせおって……!」
ラグナ「泣き喚いて絶望しろ、落ちこぼれ! 我が神聖魔術、《ヘブンズ・ジャッジメント》!!」
ラグナが槍を突き出す。
直後、極大の光の奔流が放たれ、大気を震わせながらヴェルドラの脇をすり抜け、ルシアンの無防備な胸元へと直撃した。
爆発。閃光。
だが、下界の薄い魔力空間で極限まで減衰したその光は、天上界の一万倍の密度を耐え抜いてきたルシアンの破れた薄衣を、そよ風のように優しく撫でただけだった。
ルシアン「あ、あれ……? なんか、ポカポカして気持ちいいぞ……?」
きょとん、と瞬きをするルシアン。
ラグナの顔から、急速に傲慢な笑みが消え失せる。
ラグナ「なっ……!? 馬鹿な、山脈すら消し飛ばす我が最大火力の光線が、ただの温風になって消えただと!?」
顎が外れんばかりに口を開け、後ずさるラグナ。
一方、ルシアンは自分の胸元を見下ろし、やがて琥珀色の瞳を感激に輝かせた。
ルシアン「そっか……! ラグナ様、俺のひどい冷え性を気遣って、わざわざ天上界から温かい風を送りに来てくれたんだな!」
ラグナ「はあ!? 何を言っているこのゴミは、来るな、近づくなぁっ!」
恐怖に引きつったラグナの悲鳴も届かず、感激したルシアンがタタタッと駆け寄り、ラグナの黄金の肩当てを、ポン、と軽く叩いた。
ルシアン「ありがとう、ラグナ様! おかげで俺、もう元気だよ!」
無邪気な笑顔。
天上界の一万倍の密度で鍛え抜かれた『軽いタッチ』が空間そのものを歪め、神聖金属で造られた黄金の鎧を木っ端微塵に粉砕した。
大気が爆ぜる。衝撃波が地面を抉り取った。
ラグナ「ぐぎゃあああああっ!!」
全身の骨という骨が軋む音を立て、ラグナは白目を剥いて泡を吹き、音速を遥かに超えて空の彼方へ星となって吹き飛んでいった。
キラーン、と虚空で光が弾ける。
静寂が戻った中庭で、ルシアンは自分の手のひらを見つめ、再び血の気を失って凍りついた。
ルシアン「えっ……俺が触っただけで、ラグナ様が消えた!? ま、まさか俺、触れた相手を消滅させる死の呪いに侵されているのか!?」
第四章: 一撃で死ぬ(敵が)
夕暮れの赤い光が差し込む玉座の間。半壊した瓦礫の隅で、ルシアンが膝を抱えてポロポロと大粒の涙をこぼしている。
ルシアン「うわあぁん! 俺は自分が一撃で死ぬだけじゃなく、優しくしてくれた人も一撃で死なせる疫病神だったんだぁっ!」
ボロボロと零れ落ちる涙が石畳を濡らす。
ラグナが消え去った空を呆れ顔で見上げた後、ヴェルドラはふっと息を吐き、慈愛に満ちた笑みを浮かべてルシアンへと歩み寄った。
ヴェルドラ「案ずるな、ルシアン。そなたがどれほど恐ろしい病(物理)を持っていようと、この妾の愛と抱擁だけは絶対に壊せぬぞ」
堂々と胸を張るヴェルドラ。だが、その足元には幾重もの複雑な魔法陣が淡く明滅している。
主に妾が今、魔力のすべてを注ぎ込んで、暗黒魔術の絶対防御障壁を百重に展開しておるからな! 骨の一本や二本、折れる覚悟はできておるわい!
血の滲むような企業努力を微塵も感じさせぬ優雅な仕草でヴェルドラが跪き、しゃくりあげるルシアンの頭を、再びIカップの深い谷間へと優しく抱き寄せた。
ルシアン「うぅ……ヴェルドラ様、だめだよ、俺が触ったらヴェルドラ様まで消えちゃうよ……!」
拒もうとするルシアンの細い腕を、ヴェルドラは豊かな胸の弾力で強引に包み込む。
ヴェルドラ「ほれ見よ、ピンピンしておるであろう? 妾は魔王じゃからな、そなたの呪いなど、全部このおっぱいで吸収してやるわい♥」
ミシミシと防御障壁が悲鳴を上げる音を気合でねじ伏せ、ヴェルドラはルシアンの銀髪を優しく撫で続けた。
その圧倒的な包容力と、柔らかい双丘の温もりに包まれ、ルシアンがヴェルドラの細腰にぎゅっとしがみつく。さらに五枚の障壁がパリィンと割れたが、ヴェルドラは恍惚と微笑んだ。
ルシアン「うぅ……温かい……。ヴェルドラ様、一生俺を看病して……絶対に、俺から離れないで……!」
潤んだ琥珀色の瞳で見上げられ、ヴェルドラの心臓が跳ね上がる。
ヴェルドラ「むふふ、一生でも二生でも終身介護してやるわい! さあ、今夜は朝まで添い寝でちゅよ〜♥」
ゴロゴロと喉を鳴らさんばかりに甘えるルシアン。
やがて涙を拭った彼は、心の底から安心したあまり、ヴェルドラの胸の中で胸いっぱいに息を吸い込んだ。
ルシアン「ふぅーっ……! ヴェルドラ様のおかげで、なんだかすごく息がしやすくなったよ!」
その瞬間、ヴェルドラの背筋が凍りついた。
《深呼吸》の暴風が竜巻となって吹き荒れ、辛うじて残っていた魔王城の屋根が、全て成層圏へと吹き飛んだ。
轟音と共に瓦礫が宇宙の彼方へと消え去り、あとにはただ、冷たい夜風だけが残される。
ぽっかりと開いた頭上に広がる満天の星空を見上げ、ボロボロになったドレス姿のヴェルドラが、引きつった笑みを浮かべた。
ヴェルドラ「……まあ、露天風呂みたいで風流じゃな!」
自分のしでかした惨状に気づくこともなく、ルシアンはヴェルドラの豊かな胸に顔を埋め、すやすやと幸せそうな寝息を立て始めていた。その無垢な寝顔を前に、魔王は今日も明日も、命がけの介護を続けることを星空に誓うのだった。