君の言葉を翻訳するために、僕は記憶を売り渡す

君の言葉を翻訳するために、僕は記憶を売り渡す

主な登場人物

相馬 湊(ソウマ・ミナト)
相馬 湊(ソウマ・ミナト)
26歳 / 男性
少し伸びた黒髪、インクで汚れた眼鏡、現代のシャツの上に異世界の擦り切れたローブを羽織っている。常に手帳とペンを携帯。
ルナリア・アイギス
ルナリア・アイギス
19歳 / 女性
月光のような銀髪のロングヘア、意志の強さを感じさせる蒼い瞳。白銀の甲冑に身を包んでいるが、その下には無数の傷跡がある。
オズワルド卿
オズワルド卿
不詳(見た目は50代) / 男性
整えられた白髪と髭、モノクル。常に分厚い『予言の書』を持ち、漆黒の貴族服を優雅に着こなす。

相関図

相関図
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6 5920 文字 読了目安: 約12分
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第一章: 処刑台の咆哮

鼻孔を突く鉄錆と腐臭。吐き気を催すほど濃厚な、死の匂いだ。

足裏から這い上がる石畳の冷気。擦り切れた革靴の底を突き抜け、骨の髄まで凍てつかせていく。

処刑台の上。

相馬 湊は、インクの染みた丸眼鏡を中指で押し上げた。少し伸びすぎた黒髪が、異界の乾いた風に煽られ視界を遮る。現代日本での白シャツは見る影もなく、今は粗末な灰色のローブ姿。右手には唯一の武器、革表紙の手帳とインク切れ寸前の万年筆。

[A:相馬 湊:冷静]「……参ったな。辞書の『絶体絶命』の項目、この光景を追記すべきだね」[/A]

眼下に広場を埋め尽くす群衆。彼らの瞳に宿るのは期待と恐怖。視線の先にあるのは湊ではない。彼の前に聳え立つ『災厄』だ。

黒い霧を纏った巨獣。

獅子と爬虫類を悪魔の窯で煮込んだようなその怪物は、全身から膿のような粘液を滴らせ、喉の奥で雷鳴のような唸りを上げている。

対峙するのは一人の少女。

月光を編んだような銀髪が、血と泥に汚れた白銀の甲冑の上で揺れる。蒼い瞳は、感情を殺した硝子玉のように冷徹。『沈黙の聖騎士』、ルナリア・アイギス。

[A:ルナリア・アイギス:冷静]「…………」[/A]

無言。身の丈ほどもある大剣を構える彼女。切っ先が怪物の喉元へ向けられると、大気がピリリと帯電した。処刑の執行人。彼女が剣を振るえば、怪物の首と共に、生贄として縛り付けられた湊の命も散る運命。

[Think](死ぬのか。言葉一つ遺せずに)[/Think]

喉が渇きで張り付く。早鐘を打つ心臓。指先が微かに震える。だが、その時。

『――・――・・――・――・』

怪物の咆哮に混じる、異質なリズム。

ただの獣の唸り声ではない。規則的で、断続的な、意図を持った音の連なり。

湊の耳がピクリと反応した。言語学者の脳、瞬時にパターン解析を開始。

長音、短音、長音。

これは――モールス信号。

『サ』

『ミ』

『シ』

『イ』

背筋を駆け抜ける電流。

怪物は吼えているのではない。泣いているのだ。

ルナリアが剣を振り上げる。銀色の閃光が走る寸前、湊は肺の空気をすべて吐き出す勢いで叫んだ。

[Shout]待て! 殺すなッ!![/Shout]

凍りつく処刑台の空気。寸前で止まるルナリアの剣。その蒼い瞳が見開かれ、湊を射抜く。

[A:相馬 湊:興奮]「聞こえないのか、この声が! こいつは……この獣は、『寂しい』と泣いているんだ!」[/A]

手帳を開き、万年筆を走らせる湊。紙の上に魔力を込めた『翻訳』のルーンを描く。

魔獣の咆哮を、人間の言葉へと強制変換する術式。

代償として、ごっそりと持っていかれる体力。明滅する視界、逆流する胃液。

それでも、彼は叫ぶ。

[Magic]《翻訳・解呪(デコード)》!![/Magic]

[Shout]「サミシイ……ダレカ……抱きしめて……」[/Shout]

獣の口からではなく、空間そのものが震えるように響き渡る、幼い少女の声。

息を呑む群衆。

晴れていく黒い霧。

膿にまみれた巨躯が崩れ落ち、その中心から現れたのは――ボロ布を纏った、痩せこけた人間の少女だった。

石畳の上で体を丸め、震えながら涙を流す少女。

[A:相馬 湊:冷静]「……翻訳、完了」[/A]

膝から崩れ落ち、荒い息を吐く湊。

静寂。

圧倒的な静寂が広場を支配する。

ルナリアが剣を下ろし、ゆっくりと歩み寄ってくる。カツン、カツンと響く金属音。目の前で立ち止まると、その美しい顔を近づけ、信じられないものを見るような瞳で彼を凝視した。

唇が動く。声は出ない。だが、湊には読めた。

『あなたは、誰?』

汚れた眼鏡を指で押し上げ、血の味がする口の中で笑みを浮かべる。

[A:相馬 湊:冷静]「通りすがりの、ただの翻訳家だよ。……どうやら、この世界は文法が乱れているようだね」[/A]

世界が、軋む音を立てて回り始めた瞬間。

だが、湊はまだ知らない。この翻訳が、世界の根幹を揺るがす禁忌の鍵であることを。

◇◇◇

第二章: 声なき者たちの旅

乾いた大地を行く馬車。

車輪が小石を弾く音だけが、果てのない荒野に響いていた。

幌の中で、湊は古びた羊皮紙の束と格闘中。隣にはルナリア。窓枠に肘をつき、流れる景色をぼんやりと眺めている。時折、風が銀髪を悪戯に撫で、甘い花の香りを湊の鼻先へと運ぶ。血と鉄の匂いが染み付いたこの世界で、唯一心を安らげる香り。

[Sensual]

馬車が大きく跳ねた。

湊の身体が傾き、ルナリアの肩にぶつかる。硬質な甲冑の感触と、その下にある確かな体温。

振り返るルナリア。至近距離。蒼い瞳が、水面のように揺れている。

彼女は無言のまま、湊の乱れた襟元に手を伸ばした。

冷たい金属の籠手(ガントレット)を外し、素手になった指先が、湊の首筋に触れる。

驚くほど柔らかく、温かい指。

彼女は湊のローブのボタンを一つ一つ、丁寧に掛け直していく。その仕草は、壊れ物を扱うように慎重で、どこか祈りに似ていた。

視線が絡み合う。言葉はない。

だが、彼女の指先が湊の鎖骨をなぞった瞬間、言葉以上の熱が伝播した。

それは感謝なのか、それとも孤独な魂が触れ合う共鳴なのか。

湊の心臓が、痛いほど強く脈打つ。

[/Sensual]

[A:相馬 湊:照れ]「……あ、ありがとう。ルナリア」[/A]

小さく首を振るルナリア。手帳を取り出し、さらさらと文字を走らせる。

『あなたは無防備すぎる。もっと自分を大事にして』

[A:相馬 湊:照れ]「善処するよ。でも、君が守ってくれるだろう?」[/A]

微かに朱に染まる頬。視線を逸らし、再び窓の外へ顔を向ける彼女。その耳朶が赤い。

旅の目的は、各地に出現する魔獣の『翻訳』と浄化。

湊たちは既に三体の魔獣を人間に戻していた。共通するのは、魔獣たちが元は人間であり、強烈な「満たされぬ感情」を抱えていたこと。

亡き子への未練、飢えへの恐怖。

湊がその声を拾い、意味を確定させることで、彼らは呪縛から解き放たれる。

[A:相馬 湊:冷静]「魔獣とは、行き場を失った言葉の残骸だ。君の剣で斬ることはできても、救うことはできない」[/A]

夕暮れ時。野営の準備。

爆ぜる焚き火の音。

甲冑を脱ぎ、簡素なシャツ姿になるルナリア。その腕や背中には、歴戦の証である無数の古傷が刻まれていた。

包帯を取り出し、慣れた手つきで新しい傷の手当をしようとするが、背中には手が届かない。

もどかしそうに眉を寄せる彼女を見て、湊が立ち上がる。

[A:相馬 湊:冷静]「貸して。僕がやる」[/A]

[Sensual]

湊はルナリアの背後に回り、包帯を受け取る。

白い肌に走る、痛々しい傷跡。指先で軟膏を掬い、傷口に塗る。

ピクリ、と跳ねるルナリアの肩。

「痛いか?」と問う前に、彼女は首を横に振る。

湊の指が背骨に沿って滑るたび、彼女の呼吸が少しだけ早くなるのが分かった。

言葉を奪われた少女。痛みだけを背負わされた聖騎士。

湊は、彼女の背中にある『王家の刻印』――焼印のように爛れた皮膚――を見つめ、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。

[/Sensual]

[A:ルナリア・アイギス:悲しみ]『……醜いでしょう?』[/A]

手帳に書かれた震える文字。

[A:相馬 湊:愛情]「いいや。……とても綺麗だ。君が生きてきた証だ」[/A]

嘘偽りなく告げる。

息を呑む気配。彼女は振り返らず、ただ震える肩を抱くようにして俯いた。

夜の帳が下りる。

星空の下、二人の距離は物理的なそれ以上に近づいていた。

だが、王都の城壁が見え始めた時、湊の手帳が嫌な予感を告げるかのように、風にパラパラとめくられた。

◇◇◇

第三章: 残酷の真実

王都の大聖堂。

ステンドグラスから降り注ぐ極彩色の光。祭壇に立つ男の影を長く伸ばしている。

オズワルド卿。宮廷魔術師長にして、この世界の理を管理する『編纂者』。

彼はモノクルを指先で弄びながら、演劇を見るような目で湊たちを見下ろした。

[A:オズワルド卿:冷静]「ようこそ、異邦の翻訳家。君の推敲作業には感服しましたよ。誤字脱字のような魔獣たちを、次々と人間に戻すとはね」[/A]

[A:相馬 湊:怒り]「誤字脱字だと? 彼らは人間だ。君たちが実験で魔獣に変えた被害者だ!」[/A]

聖堂に反響する湊の声。だが、オズワルドは優雅に肩を竦めるだけ。

[A:オズワルド卿:喜び]「ノン、ノン。実験ではありません。これは『編集』です。世界を維持するためのね」[/A]

指を鳴らすオズワルド。

空間に浮かび上がる巨大なホログラムのような文字盤。描かれているのは、世界のエネルギー循環図。

[A:オズワルド卿:狂気]「この世界は、神の死骸の上に成り立っています。維持するにはエネルギーが必要だ。最も効率が良い燃料は何だと思います? ――人間の『感情』ですよ」[/A]

愕然とする湊。

魔獣とは、感情を極限まで増幅させ、エネルギーとして搾取された人間の成れの果て。

[A:オズワルド卿:狂気]「そして、そのシステムの中核となる『世界柱(ワールド・ピラー)』には、最も純粋で、強大な感情を持つ器が必要になる」[/A]

オズワルドの視線が、湊の隣で凍りついているルナリアに向けられる。

[A:オズワルド卿:喜び]「そう、我が愛しき娘、ルナリア。彼女こそが次代の柱。声帯を潰し、言葉を封じたのは、感情を漏らさず内側に溜め込むため。熟成された絶望は、さぞ美味な燃料になるでしょう」[/A]

[A:ルナリア・アイギス:恐怖]「!!」[/A]

膝をつくルナリア。カシャリと鳴る甲冑。顔色は蒼白で、呼吸が過呼吸気味に荒い。

知っていたのだ。自分が使い捨ての部品であることを。

[A:相馬 湊:怒り]「ふざけるな! そんな理屈が通ってたまるか!」[/A]

[A:オズワルド卿:冷静]「理屈ではありません。ルールです。……さて、湊くん。君には特別にチャンスをあげましょう」[/A]

分厚い『予言の書』を開き、湊の目の前に突き出すオズワルド。

[A:オズワルド卿:冷静]「全ての魔獣を元に戻し、このシステムを書き換える『原初の言葉』。それを君なら翻訳できるかもしれない。ただし――」[/A]

悪魔のように歪むオズワルドの顔。

[A:オズワルド卿:喜び]「等価交換だ。その言葉を紡ぐには、翻訳者の『最も愛する者に関する全ての記憶』を代償として捧げねばならない」[/A]

思考停止。

最も愛する者。

脳裏に浮かんだのは、東京で死んだ家族ではない。

今、隣で震えている、銀髪の少女の姿。

[Think](彼女を救うためには、彼女を忘れなければならない?)[/Think]

残酷すぎる天秤。

ルナリアの身体から立ち上るどす黒い霧。感情の臨界点。魔獣化の兆候だ。

[A:オズワルド卿:興奮]「さあ、見せてごらん! 愛か、記憶か、それとも世界か! 君の紡ぐ物語の結末を!」[/A]

◇◇◇

第四章: 忘却への抵抗

崩れ始める世界。

紫色の亀裂に覆われた王都の空。悲鳴のような地鳴りが地面から響く。

ルナリアの変異は急速に進んでいた。

白銀の甲冑が内側から膨れ上がる肉体に悲鳴を上げ、弾け飛ぶ。美しい銀髪は、夜の闇よりも深い漆黒へと染まっていく。

[A:ルナリア・アイギス:恐怖]『う、あ……あぁぁ……!』[/A]

声にならない絶叫。

背中から突き出す黒い翼のような骨。激痛にのた打ち回る彼女を、湊は必死に抱きしめる。

[Sensual]

熱い。火傷しそうなほどの高熱。

湊の腕の中で、ルナリアの体が人間のものではなくなっていく。

鱗のような硬質な皮膚が、湊の指を傷つける。

それでも湊は離さない。

汗と血と涙が混ざり合い、二人の境界線を曖昧にする。

ルナリアの瞳だけが、まだ理性の光を残して湊を見つめていた。

[/Sensual]

[A:相馬 湊:興奮]「しっかりしろルナリア! 僕を見ろ! 言葉を離すな!」[/A]

湊の背中に食い込むルナリアの爪。

激しく首を振り、口をパクパクと動かす彼女。

音は出ない。だが、痛いほど伝わる。

『殺して』

[A:相馬 湊:悲しみ]「……嫌だ」[/A]

『私を殺して、世界を救って。お願い、湊』

[A:相馬 湊:怒り]「嫌だッ!! 君がいない世界なんて、救う価値がない!」[/A]

泣きじゃくりながら叫ぶ湊。理知的で冷静な翻訳家の仮面は、もう跡形もない。ただの一人の男が、愛する女を失いたくないと駄々をこねているだけ。

だが、ルナリアの意識は確実に消えつつある。

瞳から光が失われ、完全な魔物へと変わるまで、あと数分。

遠くで聞こえるオズワルドの高笑い。

手帳を握りしめる。

『原初の言葉』。システムを書き換える唯一の手段。

それを唱えれば、ルナリアは人間に戻り、世界も救われる。

だが、湊の中から「ルナリア」という存在が消滅する。

彼女と旅した日々。彼女の体温。彼女の不器用な文字。その笑顔。

全てが、最初から無かったことになる。

[Think](耐えられるか? そんな虚無に)[/Think]

[Think](いや、耐えるんじゃない。これは――)[/Think]

ルナリアの額に自分の額を押し当てる。

湊の頬を伝う彼女の涙。

その温かさを、細胞の一つ一つに刻み込むように。

[A:相馬 湊:愛情]「……聴いてくれ、ルナリア。これから僕が紡ぐのは、世界で一番残酷で、美しい翻訳だ」[/A]

立ち上がる湊。

万年筆をへし折る勢いで、空中に光の文字を刻み始めた。

指先から噴き出す血。魂が削れる音。

[Shout]定義する!! 『愛』とは――!![/Shout]

溢れる光。

視界が真っ白に塗りつぶされる中、湊は最後に見たルナリアの笑顔を、瞼の裏に焼き付けようとした。

だが、その記憶さえも、砂のように崩れ落ちていく。

「湊……?」

最期に、彼女の本当の声が聞こえた気がした。

そして、世界はホワイトアウトした。

◇◇◇

第五章: 空白の再会

小鳥のさえずり。朝の光と共にカーテンの隙間から差し込む。

病院のベッドの上で目を覚ます湊。

白い天井。消毒液の匂い。

体中が鉛のように重いが、痛みはない。

サイドテーブルに置かれた、見覚えのある革表紙の手帳。

半身を起こし、その手帳を手に取る。

ページをめくる。びっしりと記された異世界の言語や翻訳のメモ。

だが、最後の数ページだけが、不自然に白紙だった。

まるで、誰かがそこだけを丁寧に切り取ったかのように。

[A:相馬 湊:冷静]「……僕は、何をしていたんだっけ」[/A]

霞む記憶。

世界を救ったらしい。魔獣のシステムを書き換え、平和をもたらした英雄。

人々はそう言って彼を称えた。

だが、湊の胸には、風穴が開いたような巨大な空洞がある。

何かが足りない。

喉が渇くほどに、何かを求めている。けれど、それが何なのか、言葉が出てこない。

言語学者である彼が、「言葉」を見つけられない。

数日後。

退院した湊は、王都の広場を歩いていた。

かつて処刑台があった場所は、今は美しい花壇になっている。

笑い合う人々。駆け回る子供たち。

平和だ。

完璧なハッピーエンド。

湊はベンチに座り、空を見上げた。

「……あの」

鈴を転がすような、澄んだ声。

視線を下ろす。

そこに立っていたのは、一人の女性だった。

陽光を浴びて輝く長い銀髪。吸い込まれそうな蒼い瞳。白いワンピースの裾を風になびかせ、彼女は湊を見つめている。

その瞳から、大粒の涙が溢れ出していた。

[A:ルナリア・アイギス:愛情]「……会いたかった」[/A]

躊躇いながらも、湊に抱きつく彼女。

甘い花の香り。

柔らかい体温。

湊の身体が、理屈を超えて反応する。心臓が痛いほど脈打つ。

知っている。この感触を、この匂いを、魂の奥底が覚えている。

けれど。

[Think](誰だ?)[/Think]

脳のデータベースには、彼女の情報は一切存在しない。

名前も、関係性も、思い出も。エラーコードしか返ってこない。

彼女がなぜ泣いているのか。なぜ自分を抱きしめるのか。

論理的な説明がつかない。

それでも、湊の腕は自然と彼女の背中に回っていた。

彼女の涙を指先で拭う。

その仕草は、かつて誰かにしたことがあるような、熟練した優しさを帯びていた。

空っぽの瞳で、しかし最高に穏やかな微笑みを浮かべる湊。

そして、翻訳家として、目の前の「未知の現象」に名前を付けた。

[A:相馬 湊:冷静]「初めまして。……君の言葉は、とても綺麗だね」[/A]

息を呑み、そして泣き笑いのような表情で頷くルナリア。

言葉は失われた。記憶は消えた。

だが、二人の物語は、ここからまた新しく翻訳され始めるのだ。

白紙のページに、最初の一文字を刻むように。

[System]物語の記述を終了します。[/System]

クライマックスの情景

【物語の考察】

本作は「翻訳」という行為を、単なる言語変換ではなく「他者の感情への深い理解と受容」として描いている。魔獣が「伝えられない感情の爆発」であるという設定は、コミュニケーション不全に陥りやすい現代社会へのメタファーであり、それを「翻訳=言語化」することで救済するというプロセスは、言葉の持つ治癒的な力を象徴している。

【メタファーの解説】

主人公が支払った「記憶」という代償は、「言葉による定義」が完了した瞬間に失われる「未知への神秘性」や「初々しさ」の暗喩とも取れる。しかし、ラストシーンで再びゼロから関係を築き始める二人の姿は、記憶(過去)を失っても、魂に刻まれた感覚(現在)は残り続けるという、人間の根源的な愛の強さを提示している。文法が乱れた世界で、二人は新たな愛の文法を紡ぎ直すのだ。

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