香りは誰がために〜氷の王と禁断の調香〜

香りは誰がために〜氷の王と禁断の調香〜

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第一章 氷の契約

「……サインを。それで全てが終わる」

広大な執務室。革張りのソファに深く沈み込んだ男が、低い声で命じた。

黒曜石のような瞳。氷点下の視線。

世界的なラグジュアリーブランド『R-eon』を統べる若き帝王、神宮寺蓮司(じんぐうじ れんじ)だ。

私は震える手で、目の前の書類を見つめた。

『婚姻届』、そして『債務譲渡契約書』。

父が作った莫大な借金は、私の調香師としての腕だけでは一生かかっても返せない。

「躊躇う理由はなんだ? エマ」

名前を呼ばれただけで、背筋に冷たい電流が走る。

「なぜ、私なのですか……。社長なら、相手など選び放題でしょうに」

彼は優雅に脚を組み替え、獲物を甚振るような笑みを浮かべた。

「君の鼻だ。君の持つ『絶対嗅覚』と、そこから生み出される香りが欲しい」

彼は立ち上がり、ゆっくりと私に近づく。

圧倒的な体格差。高価なコロンの奥に、彼自身の鋭いフェロモンが隠れている。

「新作香水の開発コードは『EVE』。原罪を犯させるほどの、究極の香りを作れ。期限は一年。その間、君は私の妻として振る舞い、私の管理下で生活する」

彼の指先が、私の顎を強引に上向かせた。

「……拒否権はないぞ」

逃げ道は塞がれている。

私は観念し、ペンを走らせた。

インクが紙に染み込む黒い軌跡は、私が自由を失う音のようだった。

「いい子だ」

書き終えた瞬間、蓮司の表情が変わった。

冷徹な仮面の下から、灼熱のマグマが覗いたような。

そんな錯覚を覚えた瞬間、私の体は宙に浮いていた。

「きゃっ……!?」

「自宅へ行く。調香には『素材』の徹底的な分析が必要だからな」

私の腰を抱く腕は、鋼鉄のように硬く、そして恐ろしいほど熱かった。

第二章 薫る肌、暴かれる熱

連れてこられたのは、都心を見下ろす高層マンションのペントハウスだった。

生活感のない、モデルルームのような空間。

だが、寝室へと続く扉が開かれた瞬間、甘く重たい空気が漂ってきた。

「ここで、君の体温と香りの変化を記録する」

蓮司はネクタイを緩め、無造作に投げ捨てた。

シャツのボタンを一つ、また一つと外していく。

露わになる鍛え上げられた胸板に、私は息を飲んだ。

「さあ、脱げ」

「え……?」

「聞こえなかったか? 君の肌が興奮した時、どんな香りを放つのか。それを知らずして、究極の香水など作れるはずがない」

あまりにも乱暴な理屈。

けれど、彼の瞳は真剣そのもので、反論を許さない圧力を放っている。

震える指でブラウスのボタンを外すと、衣擦れの音がやけに大きく響いた。

最後の一枚を脱ぎ捨て、私が身を縮こまらせると、蓮司は満足げに喉を鳴らした。

「美しい……」

彼は私をキングサイズのベッドへと押し倒した。

シーツの冷たさに背中が強張る。

しかし、すぐに上から覆いかぶさる彼の体温が、その冷たさを塗り替えていった。

「ひっ……!」

彼の顔が、私の首筋に埋められる。

熱い吐息が皮膚を撫で、鼻先が脈打つ血管を辿る。

吸い込む音が、耳元で生々しく響いた。

「甘いな……。怯えているのに、君の匂いは誘っているようだ」

「そ、そんなこと……あっ」

太い指が、私の鎖骨をなぞり、胸の膨らみへと這い降りる。

まるで貴重な美術品を鑑定するかのような手つき。

けれど、その愛撫は次第に執拗さを増していく。

「声を我慢するな。君の反応すべてが、私のデータになる」

彼の唇が、敏感な突起を食んだ。

電流のような痺れが全身を駆け巡る。

頭の芯が白く弾け、私はシーツをきつく握りしめた。

「んっ、ぁ……! 社長、だめ……」

「社長じゃない。蓮司と呼べ」

命令口調と共に、彼の手が太ももの内側へと滑り込む。

柔らかな皮膚を揉みしだき、さらに奥、秘められた熱源へと指先が侵入した。

「いやっ、そこは……!」

「濡れているじゃないか。体は正直だ」

彼の指が、蜜に濡れた蕾を弄ぶ。

粘つくような水音が、静寂な部屋に響き渡った。

恥ずかしさで顔が沸騰しそうだが、快楽の波は容赦なく私を飲み込んでいく。

「もっと、君の匂いを濃くしろ。理性を捨てて、本能のままに香れ」

彼の手つきは巧みで、私の弱点を的確に攻め立てる。

抗う術など、最初から持たされていなかったのだ。

第三章 理性の崩壊

「……欲しいか?」

焦らされ、限界まで高められた私の耳元で、蓮司が囁いた。

彼の楔は、すでに私の入り口で待ち構えている。

熱く、硬く、張り詰めたその存在感。

「ほしい……蓮司さん、お願い……」

プライドも羞恥心も、熱に溶かされて消え失せた。

ただ、その空虚を埋めてほしいという渇望だけが残る。

「いい子だ。私のすべてを、その身に刻み込んでやる」

ズプッ、という重たい音と共に、彼が侵入を開始した。

「ああっ――!!」

身体が裂けるような感覚と同時に、脳髄を焼き尽くすような快感が押し寄せる。

彼という異物が、私の中の形を変えていく。

最奥まで到達した彼が、一度動きを止め、私の瞳を覗き込んだ。

「見てみろ。君の奥深くまで、私が満ちている」

「ふぁ、あ……おっきい、くるし……っ」

「力を抜け。……そうだ、私を受け入れろ」

彼が再び腰を動かし始めると、世界が激しく揺れた。

熱い楔が、敏感な内壁を容赦なく擦り上げる。

突かれるたびに、目の前に火花が散った。

「あっ、あッ、すごい、そこっ……!」

「ここか? ここが一番感じるのか?」

私の反応を楽しむように、彼は執拗に一点を攻め立てる。

激しいピストン運動に合わせて、肌と肌がぶつかり合う音が部屋を満たす。

汗と愛液、そしてお互いの体臭が混ざり合い、濃厚なムスクのような香りが立ち込める。

「いい匂いだ……。君のこの香りだけで、私は狂いそうだ」

いつも冷静沈着な彼の仮面が剥がれ落ちていく。

荒い呼吸、玉のような汗、欲望に染まった瞳。

そのすべてが、私だけに向けられているという事実に、背徳的な喜びがこみ上げた。

「イクッ、もう、だめぇッ!」

「まだだ、逃がさない」

絶頂に達しようとする私の腰を、彼は力強く掴んで逃さない。

さらに激しく、深く、打ち付ける。

私の内側をかき回し、魂ごと溶かそうとするかのような激愛。

「一緒に堕ちよう、エマ……!」

彼の動きが最高速に達し、私の最奥を強く叩いた。

瞬間、私の中で光が弾けた。

痙攣する内壁が彼を締め付け、彼もまた、低く唸り声を上げて私の奥深くに熱い奔流を注ぎ込む。

ドクンドクンと脈打つ彼の分身から、尽きることのない熱が私の中に溢れ出していく。

それはまるで、所有の焼き印を押されているかのようだった。

「はぁ、はぁ……っ」

意識が遠のく中、彼が私を強く抱きしめた。

その腕の強さは、もう二度と私を離さないという意思表示のようだった。

最終章 永遠の檻

翌朝。

目覚めた私は、ベッドサイドに置かれた契約書が破り捨てられているのに気づいた。

隣には、すでに身支度を整えた蓮司が立っている。

「……契約書、どうして」

「必要ないからだ」

彼は私の額に優しく口づけを落とした。

昨夜の獣のような激しさが嘘のように、その瞳は穏やかで、しかし底知れない闇を湛えていた。

「君の父親の借金……あれを買い取ったのは私だ。3年前からな」

「え……?」

思考が停止する。

3年前。私がまだ無名の調香師だった頃。

「君が初めて作った香水を嗅いだ時から、私は決めていた。君を私のものにすると。だが、普通に求婚しても君は逃げるだろう? だから、外堀を埋めさせてもらった」

彼は悪びれもせず、淡々と語る。

父を借金漬けにし、私が頼る場所を奪い、自分に縋るしかない状況を作り上げた。

すべては、この手の中に私を閉じ込めるために。

「酷い……」

「酷くて結構。だが、君も嫌ではなかったはずだ。昨夜、私の腕の中で君は泣いて喜んでいた」

反論できなかった。

彼の腕の中、あの暴力的なまでの愛撫に、私は確かに安らぎと快楽を感じてしまっていたのだ。

孤独だった心が、彼の歪んだ執着によって満たされてしまった。

「『EVE』などという香水は発売しない。君の香りは、私だけのものだ」

蓮司は私の薬指に、重厚な指輪を嵌めた。

冷たい金属の感触が、永遠の束縛を告げる。

「愛しているよ、エマ。君が骨になるまで、この手は離さない」

逃げ場のない檻の中で、私は彼を見つめ返した。

恐怖と、それを上回る甘美な依存。

私はもう、この氷の城から出ることはできない。

そして、それを望んでいる自分がいた。

彼が再び唇を寄せてくる。

その口づけは、毒のように甘く、私の全てを麻痺させていった。

AI物語分析

【主な登場人物】

  • 神宮寺 蓮司 (Jinguji Renji): 巨大コングロマリットの若き総帥。「氷の帝王」と呼ばれる冷徹な男だが、エマに対してのみ異常な執着を見せる。その愛は加虐的で支配的。彼女を得るためなら手段を選ばないマキャベリスト。
  • 神宮寺 エマ (Jinguji Ema): 旧姓・小鳥遊。絶対嗅覚を持つ調香師。気弱だが芯は強い。しかし、蓮司によって開発された身体と心は、彼の与える快楽なしでは生きられないように作り変えられてしまった。

【考察】

  • 「香り」のメタファー: 本作における「香り」は、視覚や聴覚よりも本能に直結する感覚として描かれている。蓮司がエマの「香り」を独占したがるのは、彼女の理性ではなく、動物的な本能そのものを支配したいという欲望の表れである。
  • 契約と束縛の逆転: 当初は「借金返済」というビジネスライクな契約だったが、最終的には「逃げ場のない愛の檻」へと変貌する。蓮司が契約書を破り捨てる行為は、法的拘束力以上の「絶対的な所有」への移行を意味しており、紙切れ一枚の契約よりも重い鎖でエマを縛ったことを示唆している。
  • 痛みと快楽の境界線: 蓮司の愛撫は常に痛みを伴うほど激しいが、それはエマにとって「愛されている実感」と同義になっていく。恐怖と愛、痛みと快楽が不可分となった時、エマの精神は完全なる依存状態へと完成される。
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