第一章 目覚めたらフリル地獄(汗)
「アレェ〜? ここ、どこだっけカナ(汗)」
見知らぬ天井。
豪奢なシャンデリア。
そして、視界の端に映る、自分のものとは思えない白く細い指。
二日酔いかな? 昨日は部下の佐藤くんと新橋で飲んでたはずなんだけど……😅
起き上がろうとして、ズシリと重い感触に気づく。
布団じゃない。
これ、ドレスだ。
それも、娘のリカが昔ハマってたゲームに出てくるような、フリル全開のやつ。
「お早うございます、クラリス様」
部屋に入ってきたのは、メイド服の少女。
クラリス?
誰それ?
鏡を見て、絶句した。
そこにいたのは、金髪縦ロールの、いかにも性格がきつそうな美女。
これってまさか……娘がやってた乙女ゲー『薔薇色ラビリンス』の悪役令嬢、クラリス・フォン・ローゼンバーグちゃん!?
「ウソでしょ〜⁉️ おじさん、転生しちゃった⁉️(冷や汗)」
内心で叫ぶが、口から出たのは、
「……あら、朝ね」
という、妙に艶のあるアルトボイス。
待って待って。
状況整理しよう✋
俺、田中健一(52歳)。
食品メーカーの営業部長。
趣味はゴルフと、娘へのLINE(既読無視されがち😅)。
それが、なんで悪役令嬢に?
記憶を辿ると、帰りの駅の階段で足を滑らせたような……。
「クラリス様、本日は王太子殿下とのお茶会です」
王太子殿下。
エリック王子か。
確か、クラリスを婚約破棄して断罪する冷徹なイケメン。
「ヤバイよヤバイよ💦 断罪されちゃうよ〜😭」
焦る俺。
でも、鏡の中のクラリスは、冷ややかな微笑みを浮かべている。
おじさんの精神と、令嬢の肉体。
このギャップ、どうすればいいの?
とりあえず、深呼吸。
営業スマイルだ。
30年、取引先に頭を下げ続けてきた田中のスキルを見せてやる。
「……分かったわ。支度をするから、少し待っててネ(はーと)」
「は、はい……?(今、語尾が変だったような?)」
メイドが怪訝な顔をした。
いかん、心の声が漏れかけた。
おじさん構文、封印しなきゃ❗
第二章 王子との交換日記が噛み合わない件
王宮の庭園。
薔薇の香りが強すぎて、ちょっと鼻がムズムズする🤧
向かいに座るのは、金髪碧眼のエリック王子。
顔が良い。
でも、目が笑ってない。
「クラリス。君に話がある」
来た。
婚約破棄の前フリか?
ここは先手必勝だ。
俺は、懐から取り出した扇子を優雅に広げた(つもり)。
「エリック殿下✨ 今日のお召し物、とっても素敵ですネ❗ ブルーがよくお似合いで、おじ……私、見惚れちゃいます(照)」
「……は?」
エリックが眉をひそめた。
あれ、滑った?
もっと褒めないとダメか。
若手社員を褒めて伸ばすのは、管理職の基本だからね👍
「最近、お疲れじゃないですか? クマができてますヨ💦 ちゃんとご飯食べてますか?🍚 野菜も摂らないとダメですよ〜🍆」
俺は、テーブルの上のサンドイッチを彼の皿に取り分ける。
世話焼きおじさんの本能が止まらない。
「……君は、何を言っているんだ?」
「心配してるんですヨ(泣) 殿下は国の宝なんですから💎 無理しちゃダメ🙅♂️ たまには肩の力抜いて、美味しいものでも食べに行きましょうヨ🍺 あ、未成年か(笑)」
エリックの表情が、能面のように固まった。
そして、震える声で言った。
「……母上」
「へ?」
「亡き母上も、そうやって僕の食事を気にかけてくれた……。君に、そのような慈愛の心があったとは」
慈愛?
いや、これ、ただの親戚のおっさんのノリなんだけど😅
「君は、僕に関心などないと思っていた。冷徹な仮面の下に、そんな温かい母性を隠していたなんて」
エリックが俺の手を握りしめる。
手が熱い。
「クラリス……いや、クラリスちゃん(?)。僕、勘違いしていたよ」
「エッ⁉️ チャン付け⁉️(ドキドキ)」
どうやら、おじさんの「ウザ絡み」が、王族特有の孤独な心に「母の愛」として刺さったらしい。
これぞ、怪我の功名?
いや、年の功カナ⁉️😤
その日から、エリックとの「交換日記(という名の往復書簡)」が始まった。
俺は、毎晩筆を執る。
『エリック君へ📩
今日はいい天気だったネ☀
部下(近衛兵)への指導、厳しすぎない?💦
たまには飴ちゃん🍬でも配ってあげてネ❗
今度、美味しいケーキ🍰の店見つけたから、一緒に行こうヨ(笑)
クラリスより😘』
これを、達筆なカリグラフィーで書く。
内容は新橋の酔っ払い、文字は貴族の嗜み。
返事はすぐに来た。
『クラリスへ。
君の言葉は、まるで古代の賢者のように含蓄がある(絵文字の解読に三日かかったが、深い意味があるのだろう)。
部下への配慮、確かに欠けていたかもしれない。
君の優しさに、僕は救われている』
……解読されてる⁉️
しかも、いい方向に誤読されてる⁉️
おじさん構文、異世界では「高尚な暗号」扱い説。
第三章 断罪イベント? ああ、接待ゴルフみたいなもんか
そして、運命の舞踏会。
ゲーム通りなら、ここでヒロインのリリィちゃんが現れて、俺を糾弾するはず。
会場は華やか✨
でも、俺の足はガクガク。
ヒール高すぎだって👠
「クラリス様!」
ピンク髪の可愛らしい少女、リリィが前に出た。
周囲がざわつく。
「貴女、私に意地悪しましたよね! 教科書を隠したり、ドレスを破いたり!」
身に覚えがない。
いや、転生前のクラリスがやったのか?
でも、ここで「やってない」と言い訳するのは、男らしくない(中身おっさんだし)。
クレーム対応の極意その一。
『まずは相手の感情を受け止める』。
俺は扇子を閉じ、リリィに歩み寄った。
そして、優しく彼女の肩に手を置く。
「リリィちゃん……辛かったね(涙)」
「え?」
「気づいてあげられなくて、ゴメンネ🙇♂️ 誰かに意地悪されたの? ヨシヨシ、おじ……私が話を聞いてあげるからネ✋」
「は、はい……?」
リリィが毒気を抜かれた顔をする。
周囲の貴族たちも、ポカンとしている。
「教科書がないなら、私のを貸してあげる📚 ドレスが破れたら、新しいのを買ってあげるヨ👗 リリィちゃんは可愛いんだから、笑顔が一番ダヨ✨」
「……な、何を……」
「さあ、涙を拭いて🤧 一緒に美味しいご飯でも食べよう❗ 今日は私が奢るからサ(笑)」
俺はリリィの背中をバンバン叩いた。
スキンシップ過多。
完全に、新入社員を励ます酔っ払い部長の図。
しかし、会場の空気は一変した。
「なんて……なんて器の広い方なんだ!」
「自らの罪を否定せず、被害者を包み込むような慈愛!」
「あれこそ、聖女の姿ではないか?」
エリック王子が進み出て、俺の腰を抱いた。
「見たかい、リリィ。これがクラリスだ。君の虚言(?)さえも、彼女は愛で包み込んだんだ」
「えっ、あ、はい……(私、虚言なんて言ってないのに……)」
リリィが混乱している。
ごめんね、リリィちゃん。
おじさんの「事なかれ主義」が、なんか奇跡を起こしちゃったみたい😅
最終章 おじさん、国を救っちゃったかも(笑)
あれから数年。
俺、クラリスは王妃にはならなかった。
エリックとは「マブダチ」みたいな関係になったからだ。
その代わり、俺は「国母」と呼ばれるようになった。
なぜか?
国の重要会議に出るたびに、
「まあまあ、そんなにカリカリしないでサ🍵」
「みんなで仲良くやろうヨ🤝」
「失敗しても、次頑張ればいいジャン👍」
という、ゆる〜いおじさん精神を発揮していたら、いつの間にか派閥争いが消滅していたのだ。
貴族たちは言う。
「クラリス様の言葉(おじさん構文)には、深遠な哲学がある」と。
赤いビックリマーク❗は「血の警告」ではなく「情熱の証」。
汗マーク💦は「労働への敬意」。
そう解釈された。
今日もお茶会で、若い令嬢たちの恋愛相談に乗っている。
「彼氏が既読スルーするんです……」
「アハハ、男なんてそんなもんだヨ😅 気にしない気にしない❗ 美味しいスイーツでも食べて、自分磨きしよう✨ そのうち向こうから連絡来るって📱」
俺のアドバイスに、令嬢たちが目を輝かせる。
「さすがクラリス様! 余裕が違いますわ!」
窓の外を見る。
青い空。
娘のリカ、元気にしてるかな。
パパは異世界で、なんとかやってるよ。
フリルのドレスを着て、優雅に紅茶を飲みながら。
心の中では、常に焼き鳥とビールを求めているけどネ🍺
「さーて、今日も一日、頑張るゾイ💪(笑)」
心の中で送信ボタンを押して、俺は最高にエレガントな微笑みを浮かべた。
(終)