



鉄錆と、焼き焦げた肉の匂い。冷たい雨が、崩落したハイウェイの残骸を無慈悲に叩きつける。アッシュ「……っ、クソが」肋骨の奥で鈍い音が鳴る。アッシュは壁に背を預け、血まみれの指で腹部の傷を強く圧迫した。浅い呼吸のたびに、肺の奥から血の泡がひゅうひゅうと漏れ出す。ルミナ「アッシュ、喋らないで。お願いだから……」ルミナの震える指が、止血材を押し当てようと虚空を掻く。泥に塗れた彼女の髪から、生温かい雨水がポタポタとアッシュの蒼白な頬に落ちた。アッシュ「置いていけ、ルミナ。ガルドの狙いは、俺の『コア』だ。お前なら……一人で逃げきれる」視線を逸らし、小さく息を吐くアッシュ。その諦観の態度が、ルミナの感情に火をつけた。ルミナ「ふざけないで!私を一人にする気!?そんなの、絶対に許さない……ッ!」感情の昂りと共に、彼女の熱い吐息がアッシュの首筋に触れる。恐怖と冷気で痙攣する唇が、彼の皮膚に微かな熱を落とした。網膜の裏で光が明滅し、早鐘を打つ心音が耳朶を打つ。互いの命の鼓動が、否応なく絡み合う。空間の位相が歪む。ノイズ交じりの足音。ガルド「見つけたぞ、ドブネズミ共」瓦礫が吹き飛び、圧倒的な質量がコンクリートを砕いて着地した。ガルド。鋼鉄の義肢から紫煙を上げ、片目を機械化した男は歪んだ笑みを浮かべている。ガルド「さあ、悲劇のお遊戯は終わりだ。そのコア、俺のコレクションに加えてやる」アッシュ「……やれるもんなら、やってみろ」アッシュは痛みを噛み殺し、膝の震えを意志の力でねじ伏せて立ち上がった。視界が明滅し、周囲の輪郭が溶け出す。限界を超えた肉体が警鐘を鳴らしている。それでも彼は、背後にいるルミナを庇うように立ち塞がった。ルミナ「アッシュ。……一緒に生きるの。死ぬ時は、一緒よ」ルミナの手が、アッシュの背中にそっと添えられる。その確かな熱。絶望の淵。血と泥に塗れた暗闇の中で、二つの命が反逆の炎を燃やし始めた。